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匿名という仮面、正義という毒
時代は物理的な「場所」を捨て、
光ファイバーの網目の中に新たな地獄を構築した。
平成、中期。
人々は「匿名」という無敵の仮面を手に入れ、
安全な部屋から指先一つで
他人を処刑する娯楽に耽った。
私は、秋葉原の雑居ビルにある、
無数のサーバーが唸りを上げる
データセンターの奥底に立っていた。
空気を震わせるのは、
冷却ファンの音だけではない。
掲示板の「祭り」によって生成された、
数百万件の罵詈雑言。
それらがデジタル信号となり、
電気的な「毒」として大気を汚染していた。
「……目に見えぬ分、
過去のどれよりも性質が悪い。
これは『言葉』ではなく、
対象を物理的に削り取る『情報の礫』だ」
六代目の器、中学教師の
**佐山**
は、その礫に全身を粉砕されようとしていた___。




