第伍乃鳥居:忘却の砂
被災地の瓦礫が、
復興の名の下に次々と片付けられていく中。
私は、カイの石化した遺体と、
彼を押し潰していたコンクリートの破片を、
秘密裏に九地無の里へと運び込んだ。
今回の鳥居は、
過去のどれよりも色彩に乏しかった。
金成の黄金の鳥居の隣に、
五本目の鳥居が建立された。
それは、ひび割れたコンクリートと
少年の遺骨を練り合わせた、
無機質な「灰色の朱」を纏っていた。
「この鳥居に、
彼を忘れ去った者たちの
『薄情な吐息』を定着させなさい」
五本目の鳥居。
この門をくぐる者は、
背筋に奇妙な寒気を覚える。
それは、人生で最も大切だったはずの
誰かの名前や、恩師の顔、
恋人と交わした約束が、
一瞬だけ指の隙間からこぼれ落ちる
「砂」のように、サラサラと消えていく感覚。
人々は、この門をくぐり抜けることで、
己の罪悪感を「忘却」という
報酬に変えて清算するのだ。
私は、カイの喉から摘出した、
五枚目の「石化した舌」を拾い上げる。
その舌は、砂を噛むような
ザラザラとした感触があり、
音もなく「……忘れて」と囁き続けていた。
ハク、伊織、美空、金成。
そこに、カイの「孤独な沈黙」が加わる。
「……不調和が、
さらに深みを増していく」
私は、灰色の鳥居を背に、闇へと沈む。
やがて、忘却された者たちの怨念は、
情報の海――
「インターネット」という
新しい領域に居場所を見出すだろう。
匿名という仮面を被り、
顔も名もなき人々が互いを食らい合う。
その毒々しい祝祭が、
六本目の鳥居を呼び寄せる予感がしていた___。
【平成初期編:完】




