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朱色のゲートウェイ ー 御神体 ー  作者: 此花 陽
平成初期編

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15/28

沈黙の瓦礫、透明な石


 カイは、倒壊したアパートの最奥、

 コンクリートの梁に押し潰されたまま、

 一週間もの間、誰にも見つからずに

 生きていた。  


 彼を殺したのは地震ではなく、

 彼を見つけられなかった


「世界からの隔絶」だった。


 私が彼の元に辿り着いた時、

 少年は既に泣くことをやめていた。  


 彼の肉体は、

 周囲の瓦礫と境界を失い始めていた。


 コンクリートの粉塵を吸い込み、


 皮膚は灰色のセメントのように硬化し、

 彼の涙は、絶望のあまり透明な

「石」へと変わっていた。



「……誰も、こない。

 ……みんな、いなくなった」

 


 カイの掠れた声が、私の脳内に直接響く。  


 それは、全国から集まってきた



「あ、まだこの子見つかってないんだ。

 可哀想(=自分じゃなくて良かった)」


 という、無意識の悪意が結晶化した声だった。



「カイ。 

 お前は、この国の『忘却の速度』を

 引き受けるためにここにいる。


 人々がお前を忘れれば忘れるほど、

 お前の肉体は強固な石となり、

 この国の地盤を支えるくさびとなるのだ」

 


 私は彼の額に触れた。  


 その瞬間、彼の肉体はパキパキと音を立て、

 完全に灰色の石像へと化した。  


 彼は「孤独死」という

 概念の最初のご神体となったのである___。




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