沈黙の瓦礫、透明な石
カイは、倒壊したアパートの最奥、
コンクリートの梁に押し潰されたまま、
一週間もの間、誰にも見つからずに
生きていた。
彼を殺したのは地震ではなく、
彼を見つけられなかった
「世界からの隔絶」だった。
私が彼の元に辿り着いた時、
少年は既に泣くことをやめていた。
彼の肉体は、
周囲の瓦礫と境界を失い始めていた。
コンクリートの粉塵を吸い込み、
皮膚は灰色のセメントのように硬化し、
彼の涙は、絶望のあまり透明な
「石」へと変わっていた。
「……誰も、こない。
……みんな、いなくなった」
カイの掠れた声が、私の脳内に直接響く。
それは、全国から集まってきた
「あ、まだこの子見つかってないんだ。
可哀想(=自分じゃなくて良かった)」
という、無意識の悪意が結晶化した声だった。
「カイ。
お前は、この国の『忘却の速度』を
引き受けるためにここにいる。
人々がお前を忘れれば忘れるほど、
お前の肉体は強固な石となり、
この国の地盤を支える楔となるのだ」
私は彼の額に触れた。
その瞬間、彼の肉体はパキパキと音を立て、
完全に灰色の石像へと化した。
彼は「孤独死」という
概念の最初のご神体となったのである___。




