沈黙と終わり
アイゼン「一体どーなってる!?」
時刻は8時半、アンデッド・アンダーテイカーの3人がボス部屋に入って既に1時間が経とうとしていた。
「隊長、落ち着いてください!」
アイゼン「落ち着いていられるか!どうやってあの即死級の攻撃を防いでいるって言うんだ!?」
ベテルの塔では誰かがユニークモンスターに挑んでいる間は扉が開かず、中に入ることができない。
中に入ることができないということは即ち、3人がまだ戦っているということだ。
「きっと逃げ回っているんでしょう」
アイゼン「あれは必中攻撃だ、AGIと機動系スキルに特化したやつがどれだけ動こうが無駄だった。だからこそ今日! 200人ものギルドメンバーを集めたんだ!」
アイゼンはいてもたってもいられず、片手剣でボス部屋へと続く扉を何度も切り付けていた。
アイゼン「ギコとか言ったな、あの男。クソッ!!!」
ミサ「ハァ ハァ……、ギコ、ネクロマンス!ターゲット私!」
ギコ「はいっ!ネクロマンス!」
もう何度目になるかわからない。下級スケルトンを召喚し、ミサに向けられた理不尽な攻撃力を一身に受け止める。
ミサ「ナギ!手に集中砲火! 多分本体はあいつだ、デモンズゲートから召喚される雑魚をいくら倒してもダメだ、即死攻撃を撃ってくるタイミングしかダメージを与えられない」
ナギ「ファイヤーボルトォ!」
ナギのレーザーがデモンズゲートから飛び出した手を穿つ。
ミサ「もう少しだと思うんだけどな、ハァ、ハァ。打掛・炎帝!」
即死攻撃が終わればまた大量の敵が扉から湧いてくる。
ミサは私達に的確な指示を出しながら、より多く、強くなっていく敵を葬っていった。
こんな戦いが一時間近くつづいているのだ。ミサの負担はギコとナギの比じゃない、疲弊しているのは明らかだった。
ミサ「回復役がいればもう少し楽だったかな…。あいつを連れてくるんだった。」
ナギ「私にもっと火力があれば…」
ナギは的確に【手】が出現したタイミングでファイヤーボルトを打ち込み続けているが、押し寄せる敵の数に疲弊していくミサを見て焦りを感じていた。
ミサ「また来るよ!」
ギコ「ネクロマンス!」
ミサ「・・・え?」
下級スケルトンを今まで通り1体召喚するが、何も起こらない。
いままで寸分の狂いもなく30秒毎に放たれていた即死攻撃がこない。
しかし、【手】は出現している。
時間にしてみれば数秒、だがリズムよくルーティーンをこなしていた三人には、その中断が嫌に長く感じられ、そこには不気味な沈黙が広がった。
ミサ「不味い!何かくるッ!」
今まで的確な指示を出していたミサだったが、突然の間に思考が停止し、漠然と注意を促す言葉を絞り出すことしかできなかった。
このまま行けば勝てる、そんな油断が、一時間という戦闘をこなしてきた三人の頭のどこかにあったのだろう。
指ではなく【手】の平に紫色の光が収束し、より一層大きな黒い光が、静かに終わりを告げるように放たれ、右から左へと水平に薙ぎ払う!
ミサ「ぜ、全体攻撃!!?」
ギコ「ね、ネクロ…だめ!間に合わない!」
ネクロマンスは決して発動の早い技ではない。
召喚してあった一体のスケルトンがミサの前に立ちはだかる。
ナギ「キャアア!」
ナギの悲鳴にギコが反応する!
ギコは大盾を構え、ナギと黒い光線の間にその身を投げ出した!
ギコ「ぐうぅぅ!」
決して考えたわけではない、ミサとナギがやられればそこで攻撃の手段がなくなる。
しかしギコだけがやられれば、おそらくはもう一回、30秒の攻撃のチャンスが得られる。
ネクロマンスが遅れた状況下での最適解が、計らずともナギを守るという【反応】によって生まれた。
しかし、結果はそうはならなかった。




