変化
「まだ幼いお前には、過酷な現実だった筈だ。だからわし等は守ろうと思った」
「パパ、泣いちゃ駄目って、私が泣いた時、やっと目が覚めた気がしたの」
「美里・・わしが何を言いたいのか分かるか?今・・お前が目指そうとしている事は、香月博士が苦しみ抜いて使翔した、紫竜号の歴史を辿ろうと言う事なんだぞ?お前は哲茂や、香月博士の辛さを自ら背負うと言うのか?」
「分からないの。でも、私は競翔をする事で、きっとそこから何かを見出す事が出来るような気がする」
「美佐江・・・どうする?美里はこう言ってる」
伯父が伯母に言う。
「・・私には分からないわ。貴方や美里ちゃんが言う事は。でも、美里ちゃんが今から一歩進みたいと思うのなら、好きにさせてあげたい」
「あの時・・あの講演会に伯父さんや伯母さんが来てくれたわよね、香月博士はその時こう言われたの。花川さんのピアノからは、大空を飛ぶ鳩が見えるようでした。優しい気持ちが見えるようでした・・素晴らしかったと」
「素晴らしい演奏だとわし等も思った。美里の才能は誰よりも知っているさ」
「私ね、伯父さんの家で毎日眺めていた鳩達を思い出して演奏したのよ。その気持ちを香月博士は見抜いて下さった。私は、そんな大それた事は考えて無いけど、せめて同じ世界を見てみたかった、香月博士と、一緒の」
「分かった・・もう何も言うまい。思うがままやって見たら良い」