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変化
美里は、感情を上手く表現出来ないような娘であった。それは、申し上げているが、小学1年生の時に、道路に飛び出した自分を庇って車に撥ねられて亡くなった母親に対する、激しい自己嫌悪と、それに対する自己逃避のトラウマであった。しかし、子犬のロンが堅く閉ざした心を開き、愛くるしい鳩の姿が自分を慰め、父親哲茂の深い愛情が救ってくれた。優しく、温かく伯父夫婦が見守ってくれた。そして、3歳の時から母親から習っていたピアノが、生きる指標を与えてくれた。美里がその才能を認められてもそこから羽ばたかず、この地に留まり居る事は、なお深い心の傷が次のステップを拒み、警戒するからだ。
今・・美里は香月博士と言う指標に向かって、何かは自分では分からないが突き進んでいる。そして分からぬままの競翔から一歩進んだ、階段を知らずの内に昇り始めようとしている。そこには多くの助言者や協力者が存在し、競翔を通じて何かを美里の心に与えようとしている。
伯父が言う、お前は香月博士になるつもりなのか?父親と同じ思いをしようと思っているのか?今の美里にはそれが何なのかは分からなかった。ただ、おぼろげながらに目指すべき道の光明がそこにある・・ような気がしていた。美里にとっての競翔とは、生きる道標を探る事なのかも知れない。




