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爆発河豚の刺身

《深淵の鍋》の厨房で、ガルドが分厚い氷の塊に埋められた丸々とした魚を慎重に取り出していた。


「今日の自信作はこれだ! 地下大河で獲れた『爆発河豚』の刺身!

毒を抜けば絶品の甘みとコリコリした食感が楽しめる高級食材なんだぞ!」


エレナは無表情で魚を観察し、淡々と言った。


「爆発河豚ですね。

毒囊を完全に除去しないと、食べた者の体内で魔力が急激に反応し、小規模な爆発を起こします。

特に新鮮な個体は危険です」


「だから丁寧に毒抜きしてるだろ。心配しすぎだよ、エレナ」


ガルドは自信満々に毒囊を慎重に取り除き、薄く美しい刺身に仕上げて客に出した。


メニュー名は『深淵の爆弾刺身』。珍しい名前に惹かれて、店内はすぐに冒険者で埋まった。


最初に食べた冒険者たちが目を輝かせた。


「うおっ! この甘みと歯ごたえ……今まで食べた河豚の中で一番うまい!」


「体がポカポカしてくるな。魔力も少し回復する気がするぞ」


しかし、食べ始めてから約二十五分後――


最初に異変が起きたのは、屈強な戦士だった。


「ん……? お腹が……なんか熱い……?」


次の瞬間――


**ドンッ!**


彼のお腹から小さな爆発音が響き、シャツの前が少し焦げた。幸い火傷は軽かったが、本人は目を白黒させている。


「うわっ!? 俺のお腹が爆発した!?」


それがきっかけで、次々と客から爆発音が上がり始めた。


**ポンッ! バンッ! ドカッ!**


お腹や口の中から小さな爆発が連発し、客たちは椅子から飛び上がりながら叫んだ。


「熱っ! 口の中で爆発した!」


「俺の胃が……胃が花火大会になってるぞ!」


店内は小さな爆発音と悲鳴と笑い声で大混乱に陥った。ある者は「面白い!」と大笑いしながら追加注文し、ある者は青ざめて水をがぶ飲みしていた。


ガルドは慌ててエレナに振り向いた。


「エレナ! 毒抜きが不十分だったのか!?」


エレナは無表情のまま、冷静に説明した。


「毒囊は除去しましたが、微量の残存魔力が体内で蓄積し、食べた者の魔力と反応して小爆発を起こしています。

爆発の規模は個人の魔力量に比例します」


「つまり魔力の強い奴ほど派手に爆発するってことかよ!」


エレナは淡々と提案した。


「対処法は二つです。一つは即効性の中和剤を飲ませること。

もう一つは……この爆発を楽しみたいお客様向けに『爆発観戦席』を設けることです。

料金は通常の三倍。英雄の証保持者は五倍です。

耐火マントのレンタルは別料金となります」


すると、危険を好む冒険者たちが意外と食いついた。


「この爆発、癖になるな……もう一皿!」


「俺の腹の爆発、結構派手だっただろ? 自慢できる!」


その結果、その日は「爆発刺身」が大ヒットし、店は爆発音が響き渡る中、過去最高クラスの売上を記録した。ただし、店内のテーブルが焦げたり、客の服に穴が開いたりする被害も多発した。


閉店後、ガルドは耳を押さえながら疲れ果てて言った。


「……もう水生生物は本当にやめよう。心臓に悪い」


エレナは床に落ちた焦げた布切れを掃除しながら、平坦な声で答えた。


「利益は優秀でした。客単価が88%上昇です。

次は爆発を抑えた『安全処理済み爆発河豚』を、通常価格の2倍で出しましょう」


ガルドは天井を仰いで長いため息をついた。


翌朝、看板に新しい注意書きが追加された。

看板には、エレナの綺麗な字でこう書かれていた。

『爆発河豚の刺身は体内で小爆発を起こす可能性があります。

静かに食べたい方は追加料金で中和処理をしたものをお出しします。

派手に爆発したい方は大歓迎です。』

最後に一言。


勘定は、必ずお支払いください。


――エレナより

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