表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

叫ぶサラダ

《深淵の鍋》の厨房で、ガルドが新鮮な緑の蔓を大きなボウルに山盛りにしながら声を上げた。


「今日の新メニューはこれだ! ダンジョン深層で採れた『叫ぶ蔓草』の生サラダ!

シャキシャキしてて、独特の苦味と後味の爽やかさが最高なんだよ!」


エレナは無表情で蔓草を一本取り上げ、淡々と観察した。


「叫ぶ蔓草ですね。

特徴は、切ったり噛んだりすると大声で叫ぶことです。味は悪くありませんが、音量が問題です」


「音なんか気にするなよ。冒険者なんて毎日叫んでる連中だ。慣れてるさ!」


ガルドは自信満々に蔓草を細かく刻み、レモン風のダンジョン果実と一緒に盛り付けて客に出した。


メニュー名は『深淵のシャウトサラダ』。


最初に食べた大柄な斧使いが、フォークで一口運んだ瞬間――


「ぎゃあああああ!!!」


サラダの中から、耳をつんざくような女性の悲鳴が響き渡った。


客が固まる。


次の瞬間、別の客が蔓を噛むと、今度は男の怒鳴り声が爆発した。


「うおおおおお!! 殺すぞ!!!」


店内が一瞬で騒然となった。


「なんだこれ!? サラダが叫んでる!」


「うるせえ! でも……味はうまいんだよな!」


客たちは困惑しながらも、味が気に入ったのか次々とサラダを食べ続けた。

すると店内は様々な叫び声で埋め尽くされた。


「助けてくれえええ!!」

「もっと食えよこの野郎!!」

「痛い痛い痛い痛い!!」


叫び声はどんどんエスカレートし、悲鳴、怒号、喘ぎ声、意味不明の絶叫が入り混じって、居酒屋というより魔物の巣窟のような状態になった。


ガルドは耳を塞ぎながら叫んだ。


「エレナ! これどうにかならねえのか!?」


エレナは無表情のまま、耳栓を自ら装着しながら答えた。


「叫ぶ蔓草は、切断面が多いほど叫び声の種類と音量が増します。

現在、店内は約87種類の叫び声が同時発生しています」


「87種類って……!」


ある客がテーブルに突っ伏しながら言った。


「うるさいけど……なんか癖になる……もう一皿!」


エレナは冷静に提案した。


「解決策は二つです。一つは完全に火を通して叫びを止めること。

もう一つは、この騒音を楽しみたい客向けに『叫び放題コース』を設けることです。

コース料金は通常の二倍。英雄の証保持者は三倍です。耳栓は別売りで五十ゴールド」


すると意外にも、騒音を楽しむ客が続出した。


「この店、最高じゃねえか! 毎日こんなに叫べる場所他にねえぞ!」


「俺のストレスが全部出てるわ!」


その結果、その日は「叫び放題コース」が飛ぶように売れ、店は過去最高の売上を記録した。ただし、近隣住民から苦情が殺到し、翌日には衛兵が様子を見に来る事態となった。


閉店後、ガルドは耳を押さえながらぐったりと座った。


「……耳がキーンとする。もう叫ぶ植物は二度と出すまい」


エレナは床を掃除しながら、いつもの平坦な声で言った。


「利益は優秀でした。客単価が92%上昇です。

次は叫び声を抑えた『静かな叫ぶ蔓草』を開発し、通常価格の1.8倍で出します」


ガルドは天井を仰いでため息をついた。


翌朝、看板に新しい注意書きが追加された。

看板には、エレナの綺麗な字でこう書かれていた。

『叫ぶ蔓草のサラダは大声で叫びます。

静かに食べたい方は追加料金で火を通したものをお出しします。

叫びたい方は大歓迎です。』

最後に一言。


勘定は、必ずお支払いください。


――エレナより

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ