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オークのステーキと筋肉自慢

《深淵の鍋》の厨房では、今日も異様な熱気が立ち込めていた。


ガルドが巨大な肉塊をまな板にドンと置いて、髭を震わせながら笑った。


「今日の目玉はこれだ! ダンジョンから捕獲したばかりの『岩オーク』の肩ロースステーキ!

筋肉質で旨味が強くて、食った後の満足感が半端ねえぞ!」


エレナは無表情でその巨大な赤黒い肉をじっと見つめ、淡々と言った。


「岩オークは魔力の影響で筋肉が異常発達しています。

ただし、肉質が硬すぎるだけでなく、食べた者の体にも影響を及ぼす可能性があります」


「またそんな心配かよ。男ならこのガッツリした肉がいいんだよ!」


ガルドは豪快に肉を叩き、特製の香辛料を擦り込んで鉄板で焼き始めた。

店内に広がるのは、食欲をそそる肉の焼ける香りだった。


メニュー名は『剛力オークステーキ』。

これを見た冒険者たちが目を輝かせて注文を連発した。


「すげえ! この肉、噛むと力が湧いてくる気がする!」


「うおっ、筋肉が熱い……! 体の中からパワーアップしてるぞ!」


最初は大好評だった。しかし、ステーキを食べ始めて三十分ほど経った頃から、異変が起きた。


一人の屈強な戦士が突然立ち上がり、自分の腕を見て興奮した。


「うおおお! 俺の腕……めっちゃ太くなった!?」


実際、彼の上腕二頭筋が異常に膨張し、シャツの袖がパツパツになっていた。

隣の男も胸板が厚くなり、首が太くなって声が変わり始めている。


店内では、次々と客たちの体が「オーク化」し始めた。


筋肉が異常発達し、体が一回り大きくなり、肩幅が広がり、顔つきまで少し獰猛になってきた者もいる。

ある者は嬉しそうに筋肉をポーズしながら叫んだ。


「俺、強くなった! これなら魔王でも倒せそうだ!」


別の者は困った顔で自分のズボンを見ながら言った。


「……ズボンが破れそうなんだけど」


中には「もっと食いたい!」と追加注文する者まで現れ、店内は筋肉だらけの男たちで溢れかえった。

女性客は少し引いた表情で隅に追いやられていた。


ガルドは慌ててエレナに聞いた。


「エレナ! これどうなってんだ!?」


エレナは冷静に答えた。


「岩オークの肉にはテストステロン類似の魔力成分が大量に含まれています。

過剰摂取すると一時的に筋肉増強と雄性化が進みます。効果は約六時間持続します」


「六時間!? 俺の店が筋肉バーみたいになってんじゃねえか!」


エレナは無表情のまま、淡々と提案した。


「対処法は二つです。一つは中和剤を飲ませること。

もう一つは……この状態を楽しみたいという需要に応じて、追加で『筋肉自慢タイム』を設けることです。

参加費は一人三百ゴールド。英雄の証保持者は五百ゴールドです」


すると、筋肉隆々の客たちから意外な声が上がった。


「待てよ……この体、悪くないぞ!」


「俺、こんなに胸板厚くなったの初めてだ! 自慢したい!」


結局その日は、「筋肉自慢大会」が即席で開催され、追加料金で店は大盛況となった。

ただし、店内のテーブルや椅子が筋肉でぶつかって壊れる被害も続出した。


閉店後、ガルドはぐったりとしながら言った。


「……もうオークは二度と出すまい。店が壊れる」


エレナは床を掃除しながら、平坦な声で答えた。


「利益は非常に良好でした。客単価が79%上昇です。

次は筋肉増強効果を抑えた『ライトオークステーキ』を、通常の1.7倍の価格で出す予定です」


ガルドは天井を仰いで深いため息をついた。


翌朝、看板に新しい注意書きが追加された。

看板には、エレナの綺麗な字でこう書かれていた。

『岩オークステーキは筋肉を増強させる可能性があります。

短時間でマッチョになりたい方は追加料金にて対応いたします。

おすすめしません。』

最後に一言。


勘定は、必ずお支払いください。


――エレナより

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