爆裂ベリーのパフェと赤い牙
《深淵の鍋》の厨房では、ガルドが珍しくワクワクした顔で作業をしていた。
「今日の新デザートはこれだ! ダンジョン深層『紅晶の谷』で採れた『爆裂ベリー』を使った特製パフェ!
甘くてプチプチした食感で、口の中で軽く爆ぜるのが特徴だぞ!」
エレナが無表情で即座に警告した。
「爆裂ベリーは魔力で殻が強化されており、食べた瞬間に小さな爆発を起こします。
味は良いですが、危険性が高いです。特に子供や興奮しやすい客にはおすすめしません」
そこへ、裏口から明るい声が飛び込んできた。
「ルル、来たよー!」
銀髪の幼女・ルルが大きなリボンを揺らして元気よく登場した。
ルルはすぐに厨房に入り、ガルドの隣に立った。
「ガルドおじちゃん! ルルも手伝うね! もちろんいいよね?」
ガルドはすでに抵抗を諦め、ため息混じりに頷いた。
「……好きにしろ」
ちょうどその時、常連の「赤い牙」パーティの4人が店に入ってきた。
リーダーのレオンがカウンターに座りながら声を上げた。
「おっ、今日はなんか派手な匂いがするな! 新メニューか?」
ミアがルルを見て目を輝かせた。
「ルルちゃん! 今日もいるんだね!」
ルルはパフェグラスを並べながら、にこにこ笑って答えた。
「うん! ルル、今日は爆裂ベリーのパフェを作るの手伝ってるよ!
お兄ちゃんお姉ちゃんたちにも食べさせてあげる!」
ダンが興味津々で聞いた。
「爆裂ベリー? なんか危なそうな名前だな」
シーラが冷静に言った。
「本当に大丈夫なの? 爆発するって本当?」
ルルは胸を張って答えた。
「大丈夫だよ! ルルがちゃんと魔法で調整したから、爆発は小さくて可愛い感じになるもん!」
エレナが冷たく割り込んだ。
「ルル。あなたの『調整』は信用できません。
爆発の規模をコントロールできていない可能性が高いです」
ルルは笑顔のままエレナを振り返り、わずかに目を細めた。
「エレナお姉ちゃん、またルルのこと邪魔するの?
……ルル、悲しいな」
その一言で、エレナはわずかに口を閉ざした。
ルルはすぐに明るい笑顔に戻り、赤い牙の面々に向き直った。
「ねえねえ! みんなで食べ比べしようよ!
ルルが作ったバージョンと、エレナお姉ちゃんが作ったバージョンの両方!」
レオンが笑いながら頷いた。
「面白そうだな。じゃあ両方頼むぜ!」
出来上がったパフェは二種類だった。
- エレナ風:丁寧に爆発を抑えた上品で安定したパフェ
- ルル風:キラキラ光るベリーが多めで、食べると小さく「パチパチ!」と音を立てながら爆ぜる派手なパフェ
4人が同時にスプーンを入れた瞬間——
**パチッ! パチパチッ! パンッ!**
ミアが目を丸くして叫んだ。
「きゃあ! 口の中でベリーが爆発した! でも痛くない! 面白い!」
レオンが大笑いしながら言った。
「はははっ! 俺の鼻の中で一つ爆発したぞ! くすぐったい!」
ダンは口を押さえながらも笑っていた。
「味はめちゃくちゃ美味いのに、食ってる最中に花火大会だなこれ!」
シーラはクールな顔を少し崩して言った。
「……意外と楽しいわ。ルルちゃんのバージョン、派手だけど面白い」
ルルはカウンターに乗り出して、目をキラキラさせながら聞いた。
「どう? どう? ルルが作った方が楽しいでしょ?」
ミアがルルに向かって笑顔で言った。
「うん! ルルちゃんのほうが断然楽しい!
エレナさんのは上品で美味しいけど、ルルちゃんのは『冒険』って感じがする!」
レオンがルルの頭を軽く撫でながら言った。
「ルルちゃん、センスあるな。次は俺たちのリクエストも聞いてくれるか?」
ルルは大喜びで飛び跳ねた。
「やったー! 約束だよ!
お兄ちゃんお姉ちゃんのリクエストなら、ルル、なんでも作っちゃう!」
エレナは無表情のまま、静かにパフェグラスを片付けながら呟いた。
「……このパーティ、完全にルルに染まっています」
ダンがルルにからかいながら言った。
「ルルちゃん、俺たちと一緒にダンジョン行かないか?
お前がいると絶対に楽しいパーティになりそうだぜ」
ルルは一瞬だけ目を細めて笑った。
「ふふっ……それはまだ秘密!
でも、みんなが好きなら……いつか行ってもいいかもね?」
その笑顔を見て、赤い牙の4人はなぜか少し背筋を震わせた。
ガルドは厨房の奥からその様子を見て、深いため息をついた。
「……この組み合わせ、危険すぎるな」




