8二日目 はじまり 後編1
俺は今、姉妹に案内されて天海村を歩いている。
自転車はコンビニの前に置いてきた。
そもそも誰も盗らないし天ヶ谷旅館の名前もあるから何があっても大丈夫だろう。
「それにしても暑いわね」
「まあ、夏休みだからな」
本日は雲一つない晴天。セミが相変わらず合唱している。
二人は日傘を相合傘しながら歩いているが、それでも暑そうだ。
歩いている最中に音村さんから村のことを説明された。
この天海村は山と海に囲まれた村。
村の場所は窪みとなっていて昔は隠れ里として利用されていたらしい。
周囲は高い山に囲まれ、地盤のせいでトンネルを掘ることもできない。
ついでに港はあるが船は小さな漁船だけ。人を運ぶ船はない。
なので隣町はそこそこ発展しているのにこの村は陸の孤島のような状態になっている。
だから片道1時間のバスが外へ向かう唯一の交通手段なのだ。
「まあ、それでもこの村がなくなることはないわ」
音村さんはどこか確信を持った声音とともにそう締めくくった。
「え、それって」
「さあ、浜辺に着いたわよ」
気が付けば、目の前には海が広がっていた。
砂浜もあり、数人が泳いだりくつろいだりしている。
綺麗な海だ。水は透き通ってるしゴミも見当たらない。
パラソルさえあれば何時間でも海を眺めていられそうだ。
ただ、まあ。
「たくさん人が泳いでるね、お姉ちゃん」
「そうね、今日は盛況だわ。夏休み効果かしら」
「いや、10人ほどしかいないけど」
これで盛況?と思ったが、そんなことはないようだ。
姉妹は楽し気に会話をしている。
「ここは砂浜。泳ぐのに最適な場所よ。端のほうは岩場になっていて、釣りにも最適ね」
「タコも取れるんですよ!」
「なるほどなあ」
せっかく案内してもらってるんだから余計なツッコミはやめておこう。
隣町の光景は海岸が入り江になっていて、両脇は山なので全く見えない。
本当に隔絶されている。
岩場の向こうは港なのか数隻の船が停泊している。
海岸の端には灯台がたっている、あの上からなら違う光景が見えるのだろうか。
「さて、次に行くわよ」
「お、ああ。頼むよ」
その後、村をゆっくり回った。
診療所兼療養所となっている大き目な建物。
村唯一の学校、小中一貫校。在校生はとても少ない。
谷川、大郷と会った木陰は虫取りスポット。
昨日とは違い途中で住民にも出会った。
誰もが旅館のバイトと認識していて少し怖かった。
「狭い村だから情報の流通もはやいのよ」だそうだ。
そんなこんなでまだ空は明るいが夕方が見えてきた。
今は最後に案内するところがある、と、灯台に向かっているようだ。
「さて、ここが案内の最後、灯台よ」
「翔琉さん!行きましょう!」
灯台は近くで見ても塗装が剥がれたりしていない、しっかり整備されている。
あと、さりげなく下の名前で呼ばれているが、
天ヶ谷だと旅館や叔母さんでしっくりこないということで名前で呼ばれることになった。
女の子から名前で呼ばれるのは少し恥ずかしいなあと言ったら、
村の同世代は基本名前呼びだから恥ずかしくもなんともないと言われた。
それはそれで悲しい。ちなみに大郷は大郷で谷川は谷川だそうだ。
「ほら、何をボーッとしているの行くわよ」
「行くって、どこに?」
「灯台の中に、ですよ」
「いや、こういうところって入っていいのか」
「心配無用よ。さっさと来なさい」
こっちが葛藤している間に姉妹は中に入ってしまった。
慌てて後を追うように入る。
中は想像と全く違った。
壁には海図やよくわからない表などが貼ってありそれっぽい。
ただ壁際の本棚には、漫画や小説が雑多に敷き詰められている。
端に置かれた木箱にはけん玉や浮き輪、ボールなどが詰まれていた。
その他にも掃除用具が放ってあったり、宿題っぽい用紙が机に放置されている。
「なんだか秘密基地っぽい」
「秘密基地、言いえて妙ね」
「役目を終えた灯台を、村の子供たちが管理しているんです」
村の高校生前後の子供たちがこの灯台の保全の役目を担っているらしい。
「さて、少し上の様子を見てくるわ。大丈夫なら名前を呼ぶからあがってきて」
「楽しみに待っていてくださいね」
なんだか展開が全く読めない。俺はいったいどうしてここに連れてこられたんだ。
上ではこそこそと話しているみたいだけど内容が全く聞こえない。
これはまさか、いじめ。そうか、上で村ぐるみでひどいことを………。
な、わけないかこの年頃の子供たちが何を考えているか全くわからない。
逆に考えるのも馬鹿らしくなってきた。
待っている間に室内をもうちょっと観察することにした。
本棚は漫画だけではなく村の紹介本やら歴代の日記帳みたいなものもあった。
木箱にはおもちゃだけでなく無線っぽいのや塗装の道具みたいなのもある。
整理はされているのだが、雑だ。
「翔琉!上がってきなさい!」
「分かった!」
5分ほど観察していたら呼ばれたので階段を上る。
思ったよりも急な階段でちょっと怖い。
「「海山辺村へようこそ!!」」
階段を上るとちょっとしたスペースがあり、
そこで見覚えのある少年少女が出迎えてくれた。
料理まで用意してある。まるでパーティーみたいだ。
「いや、せっかく同年代で話の分かるやつが夏休みいるってわけだから歓迎会を開こうと思ってよ」
「暇だしな」
「ってわけで、改めて谷川結だ。よろしくな」
「大郷益伸だ」
昨日出会ったロングポニテと筋肉眼鏡、どうやら二人が企画してくれたみたいだ。
「ありがとう、天ヶ谷翔琉だ。改めてよろしく」
思わず二人とガッツリ握手を交わす。
「男の友情だねえ。次は私かな」
「あなたはさすらいの美少女さん!」
「そうだよ、私がさすらいの美少女さんです」
「自分で言っていて恥ずかしくないのかしら」
「本当だからいーの」
いたのは分かったいたが、この子もやはり同年代だったようだ。
音村さんに突っ込まれてもどこ吹く風だ。
「じゃ、改めまして私は帆風七咲。よろしくね」
「ああ、よろしくな」
イェーイと掛け声とともにハイタッチをした。謎だ。
「さて、最後は私たちね。さっき自己紹介もしたし改めることもないけど、姉の音村守莉よ」
「妹の海月万花です。姉ともどもよろしくお願いします」
音村さんは軽く片手をあげてよろしくね、と言われ、海月さんには深く頭を下げられた。
反応が真逆の姉妹だ。
お互い、自己紹介も終わり料理を食べることにした。
「おいしい!でも、どこかで食べたことあるような」
「お、分かるのか、さすがだな」
「ああ、つい最近食べたような」
「なにがさすがよ。この料理は天ヶ谷旅館の料理よ。歓迎会をしたいと言ったら協力してくれたの」
谷川の言葉に突っ込む音村さん。音村さんがこのメンバーのツッコミ役を担当しているようだ。
「歓迎会は大郷の案だけどねぇー」
「そうなのか、ありがとう大郷!」
「ふっ」(無言のサイドチェストポーズ)
まさか旅館に連絡までしてくれていたとは、本当にありがたい。
それにしてもこういうの初めてだな。
さて折角だし誰かに話しかけてみよう。
こんだけ書いて3000文字かあ
結局、全員に話しかけるけどこんな選択肢がゲーム上に出てますという妄想
⇒帆風、海月さん
音村さん
谷川、大郷




