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9二日目 はじまり 後編2

「よう翔琉(かける)、飲んでるか」

「ああ、っていや飲んではない!いや飲んでるか?」

「まあどっちでもいいけどよ」


誰に話しかけようか思案していたら谷川(やがわ)大郷(だいごう)に話しかけられた。

酒を飲んでるか、みたいに話しかけてくるので思わず叫んでしまう。

楽し気に笑いながら肩を叩いてくる谷川はロングポニテなのもあってホストにしか見えない。


「なら、このシュワシュワを飲め」

「飲んだら気持ちよくなるぜえ」

「ふぅこの一杯がたまらないな、コーラだけどね!」


大郷からスッと差し出された飲み物はただの甘い炭酸ジュースだった。

思わずツッコんでしまう。さきほどから喉が疲れる。


「ふむ、いいツッコミだ」

「これは鋭いニューフェイスの誕生だぜ。守莉(まもり)のツッコミは勢いが足りねえんだよな」

「いや意味わかんないから!」


ダメだ、ツッコみたいわけじゃないのにツッコんでしまう。

むしろこんな風に話す自分に驚いてしまった。俺ってこんな会話?もできたんだな。


「さて、じゃあこっちにこい」と男三人で部屋の隅に移動させられる。

「どうだ、馴染めそうか」

「まあ、ありがたいことに遠慮は消えそうだよ」

「ふっ、ならいい」

「だな」


谷川と大郷は嬉しそうに笑った。


「それで、どうだうちの女どもは」

「えっ、そういう話になるのか?むしろ二人はどうなんだよ」

「まさか、お前、俺たちを…?」

「いや、違うから!分かれよ!?」


まあ分かってるんだけどな、と軽く流された。

じゃあ、両手で自身を抱きしめてポーズ取らないでほしい。


「まあ、あれだ。生まれたころからの付き合いだからなあ。正直、なにも思わねえなあ」

「同じく、だな。やつら、あんなでも学校ではモテているぞ」


あんなでも?遠くでそんな呟きが聞こえた気がしたが二人の耳には入ってないようだ。

それで翔琉はどうだ、と返される。


「そういわれてもなあ。可愛いとは思うけど。それだけだな。まだ、何も分からないし」


その答えに満足したのか二人は深くうなずいた。


「やっぱりお前、真面目でいい奴だな」

「だから、ちょっと気にかけてやってくれ、新人だからこそってやつだ」


本題はそれだったのか二人は自分のスペースに戻っていった。

なにが言いたかったのか分からなかったが、まあ、気に掛けるぐらいなら。


さて、次は誰と会話しよう。


「やっほー、楽しんでるかい?」


と思っていたら入れ替わるように帆風(ほかぜ)海月(くらげ)さんがやってきた。


「む、なんか女の子グループの中、私だけ呼び捨てにされてる気がする」


帆風はやってくるなり妙に鋭いことを言い始める。


「いやだって、帆風に海月さんだろ?」

「えー、敬意が足りないんだよこれは、ね、万花(まか)ちゃん」

「あはは、私の事も呼び捨てでいいですよ。私だけ年下ですし」


初対面でさすらいの美少女と名乗るやつに敬意はちょっとなあ。

海月さんを呼び捨てはこうなんとなくハードルが高い。


「海月さんを呼び捨て、うーん」


下の名前で呼び捨てとか厳しい。

かといって上の名前を呼び捨ても年下に対しては求められていない気がする。


「じゃあ海ってことでウミちゃん?」

「はい、それはアウトでーす。発音が危険だから翔琉も万花ちゃんって呼ぼうね」

「私もそれで大丈夫ですよ」


まあ、そういうことなら。


「帆風、万花ちゃん、夏休みの間よろしく頼む」

「うん、よろしくね~」

「よろしくお願いします」


万花ちゃんのほうが馴れ馴れしいような気がするが、本人が問題ないならそれでいいか。

ただ少し照れ臭い。


「そういえば、お姉さんと一緒じゃなくて大丈夫なのか?」

「はい、そんなずっと一緒ってわけでもないですよ」

「学校でも行きと帰りとお昼を一緒に食べるぐらいだよねえ」

「まあ、それは、はい。お姉ちゃんが心配性だから」


少し恥ずかしそうに俯く万花ちゃん。

でも満更でもなさそうだ。本当に仲のいい姉妹だな。

姓が違うのもなにか複雑な事情があるのかと思ったが、そんなこともなさそうだ。

ただ、出会ったばかりの部外者が聞くことでもない。余計な事を聞くのはやめておこう。


「翔琉はさあ、あの結構つらい水汲み余裕そうだったけど、なんか部活でもしてるの?」

「余裕ではなかったけど、そうだなあ」


俺、なんか部活してたっけ。10年以上前だからな、そうだ陸上部だ。

当時は走るのが好きだったからな。

でも、やめたんだよな。どうしてやめたんだっけ?


「翔琉さん?」


万花ちゃんの声で我に返る。


「ええと、言いたくないなら言わなくてもいいよ?」

「いや、そういうわけじゃない。陸上部だよ。あの頃は毎日走ってたなあ」

「あの頃って、今はもうやってないんだ」

「まあな。だから水汲みも少しは余裕があったかも」

「なるほど~」


そう、確か夏休み前に辞めたんだよな。よく覚えてないけど。


「翔琉ってやっぱ駆けるから?走るのって気持ちいいからねえ」

「名前は正直よく言われるよ。言われたおかげで走るのが好きになったんだ。帆風も走る楽しさ分かるか」

「ま、多少はね」


自分で話していて納得した。

体が出来上がっていたのは若いからだけじゃなく、陸上部で練習していたからだ。

明日から午後の暇な時間、ゆっくりジョギングしてもいいかもな。

帆風も走ることが好きならジョギングに誘ってみてもいいかもしれない。

そんな感じでしばらく3人で談笑した。


さて、誰と会話しよう。

というか、最後の一人に話しかけに行こう。


窓際でポツンと食事をしていた音村(おとむら)さんに話しかけようと近づいた。


「ここからの眺めが好きなの、だからボッチというわけじゃないわ」

「いや、まだ何も言ってないんだけど」

「そういう雰囲気を出していたわ」


妙に鋭いな。音村さんはどこか茫洋とした顔で外の景色を眺めている。

万花ちゃんが一緒だと気にならなかったが、今は話しかけにくい。

それでも歓迎会の道のりを案内してくれたわけだし優しい子なんだろう。


「なあ」

「なにかしら」

「明日って晴れだよな」

「多分そうね」

「明後日はどうだろうか」

「多分晴れよ、ふう、わかった少し話しましょう」


必殺の天気の話がうまくいったようだ。社会人のスキルが役に立ったな。

音村さんは溜息を吐くとこちらに向き直った。


「というか、万花ちゃんと一緒じゃなくていいのか」

「まあ、こいつらは信頼できるから平気よ。

心配なのは出歩くとき。あの子、少しそそっかしいから」

「なるほど」


なんか納得できた。

それにほかのメンバーと話していても思ったが、

村の同世代メンバーはお互いの信頼感がすごいな。


「それにしてもあなたが羨ましいわ」

「羨ましい、何が?」

「この料理よ。栄養バランスも考えられていておいしい料理、これから毎日食べられるんでしょう」

「ああ、確かに」


冷めてもサクサクのから揚げ、野菜たっぷりのオムレツ、ホクホクのポテトフライ。

言われてみたら種類も豊富で、食べやすい料理ばかりだ。

叔母さんにはあとで、改めてお礼を言おう。


「詳しそうだけど、音村さんは料理できるの」

「ま、少しね。だから天ヶ谷旅館の料理も興味があったの」


大人たちは宴会場として利用しているようだが、子供には縁がなかったようだ。


「料理の手伝いぐらいさせてもらえると思うけど」

「気を使わせてしまうわ。それに、まあいろいろあるのよ」

「そうか、まあ、夏休み中なら橋渡しできるから」

「ありがとう。その時は頼むわね」


いろいろ、の部分で万花ちゃんに視線がいっていたような気もするが、ツッコむのも野暮だろう。

その後、窓からの景色を二人で眺めつつ雑談をした。

高いところから見る海の景色は綺麗だったが、やはり隣町の風景は見えなかった。



夕食も終え、あたりに夕日が差し込もうとしている。

美しい夕焼け雲が空を流れていて眩しい。

そんな中、全員で灯台の踊り場にいた。

太陽が海に沈んでいく。その光景はとても幻想的だった。


「ほら、綺麗な夕日だろ」

「そうだな」


三方が山に囲まれた土地で今の時期だけ夕日が海に沈んでいくらしい。

眺めていると不思議と胸が締め付けられるような、せつない気持ちが湧き上がってくる。

神秘的な光景に感動したのだろうか。一滴の涙が頬を伝っていることに気が付いた。


陽が沈み切った、気が付けば辺りは真っ暗だ。


「みんな、今日はありがとう!」

「いいってことよ、じゃあな」

「さらばだ」

「まあ、楽しかったよーじゃあねえ」

「恩に感じたのなら今度返しなさい。万花帰るわよ」

「はい、私たちも楽しかったです。おやすみなさい」


コンビニの前までみなで歩き、そこで解散となった。

自転車を回収して旅館へ歩く。

まだ宵の口だがあたりに人の気配はなく真っ暗だ。

コンビニも当たり前のようにしまっていた。

道中、今日の出来事を振り返る。


「楽しかったなあ」


友達に村を案内されて、夕食を食べて帰った。

たったこれだけの事がとても楽しかった。

人生、無駄にしてたなあ。

こんな楽しい夏休みを経験していたら、前向きに人生歩めていたのかも。

もう元の時間に戻りたくない。

せっかく逆行してきたんだ、もっと楽しもう。夏休みはまだ二日目なんだ。


「そういえば神社の娘さんはやっぱり大学生なのかな」


すっかり忘れていた。明日聞いてみるか。

あれこれ考えていると、旅館に到着していた。

受付にいた真千子叔母さんに心からの感謝を述べる。


「別に、対した手間じゃなかったしね。歓迎会楽しめたみたいでよかった」


少し恥ずかし気にそういう叔母さんに再度頭をさげて部屋に戻る。

明日も早い。温泉でサッと汗を流し、寝るとしよう。

今日から宿泊客がいると言われていたが、誰ともすれ違うことはなかった。


布団に入って目をつむる。

明日からも頑張ろう、おやすみなさい。


夏休み二日目が終わった。

思い付きで書いているのでつらくなってきました。矛盾はしてないはず。

ギャルゲー風小説を書いているのでしばらく共通ルート。

もう少しで目標の10話。

1人でも見てくれている方がいるみたいで感謝です。ありがとうございます。

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