7二日目 はじまり 中編2
そうだな、とりあえず村を一周してみよう。
昼ご飯を食べて、叔母さんに一言告げてから外に出る。
すると倉庫にある自転車を使っていいと言われたのでお言葉に甘えることにした。
自転車はたまに使われているのかしっかり整備されている。
最後に乗ったのはいつだ?きっと体が覚えているだろう。
それよりもだ。
「暑い…」
分かっていたけどこれはかなりのものだ。
蝉は相変わらずうるさいし、気のせいか陽炎が立っているような気もする。
いや、気のせいだろう。さっさと行こう。とりあえず海辺を目指そう。
旅館は山沿いで海辺とは正反対の場所にある。地理を把握するには最適だ。
決意して俺は自転車を漕ぎだした。
それからしばらく漕いでいると、お店ののぼりのようなものが見えてきた。
こんな辺鄙な村でも商店ぐらいはあるようだ。
【こんびに】【食パン屋】と書かれたのぼりが揺らめいている。
一応覗いてみるかと自転車を止める。
なんか商店っぽい建物の入り口には小学生ぐらいの子供たちが数名たむろしていた。
「おーい、君たちちょっといいかな」
お店に入りたいので話しかけると、
楽し気に何やら話していた子供たちは真顔になり顔を寄せ合ってなにかささやきあっている。
その反応は、この村の特徴なのだろうか。昨日の男二人とそっくりだ。
誘拐、借金、身代金と何やら物騒な単語が飛び交っているような気がする。
俺たちが時間を稼ぐからお前は、うん分かったわ。と子供たちのひとりは商店に入っていき。
残りの子供たちはこちらに向いた。
「それで、借金まみれの誘拐犯の兄ちゃんは何の用だよ」
「私たちは屈しませんわよ!」
「いや、第一声がそれかよ!」
思わず叫んでしまった。どっから出てきたんだその設定は。
ほんと天海村にきてから叫んでばっかだな。
「いや、子供たち、私は怪しいものではない。
ちょっとこのお店に興味があってどいてほしいだけなんだ」
「怪しい奴は怪しくないっていうんだ!テレビで見たぞ」
「油断させて背後から襲う気ですのよ!」
うん、これは埒が明かない。暑さでうまい言い方が思いつかない。
大人としてのクールな言い方はないだろうか…?
そうだ逆に考えよう、認めてしまって襲い掛かるふりでもしたら逃げていくのでは?
いいアイデアだ、そうしよう。
「ふん、ばれてしまっては仕方ない。
そうだ、お前たちも借金まみれにして灼熱の温泉に沈めてやる!」
「えっ…?子供たちのいたずらじゃなくて、まさか本当に?お、お姉ちゃーん!!」
まさにその口上を言い切ったタイミングで店の奥から高校生ぐらいの少女がでてきた。
しかし、そのままとんぼ返りしてしまう。
「あーあ、これは真に受けちゃったな」
「長くなりそうですわ。いきましょう」
「兄ちゃん、旅館のバイトだろがんばれよー」
「えっ?」
子供たちは何かを察したのかどこかに消えていく。
しかも、普通に旅館のバイトって、もしかして遊ばれていた?
タイミング悪く、店内から少女が戻ってきた。
「お、お姉ちゃん。あの人が子供たちを借金漬けにするって!」
「そう。子供たちを借金漬けにして意味あるの?」
少女はもう一人、同年代っぽい女性、たぶん姉を連れてきたようだ。
姉(仮)はどこか気だるげな雰囲気を纏っている。
「それで、あなたが子供たちを借金まみれにしてこの村で裏家業をするつもりの男ね」
「いや、あの、旅館の手伝いできた天ヶ谷です。午後は暇だったので村を探索してます」
「あら、話が違うじゃない。―――暑い。とにかく中に入りなさい」
「え、お姉ちゃん?大丈夫なの?え?え?」
姉のほうはさっさと中に戻ってしまった。妹もそれに追随する?容疑ははれたんだよな?
入っていいと言われたし、興味もあったし素直に入ることにする。
店内はよく冷えていたがそれよりも目を引くのが陳列だった。
狭い店内にとにかく多種多様な商品が乱雑に高く積まれている。値札もない。
ぶっちゃけ倉庫といわれてもおかしくない。こんな店、どっかにあったな。
子供たちがよく買うであろう、駄菓子、飲料だけは入口にしっかりまとまっている。
「よく来たわね。ここはこんびによ。そして私は音村守莉、この子は万花よ」
「天ヶ谷翔琉です。天ヶ谷旅館のバイトです」
「知ってるわ。子供たちに遊ばれたわね」
「えっ、そうなのお姉ちゃん!?」
まあ、何となくそんな気はしてた。
しかし、妹さんのほうはいまだに姉の陰に隠れている。気まずい。
うん、店内も見れたし、誤解も解くことができた。
そろそろいくか。
「それじゃ、誤解も解けたようだしそろそろ行くよ」
「待ちなさい」
気まずくなりさっさと退散しようとすると声をかけられた。
「私たちも一緒に行くわ。少し待っていなさい」
そう言って姉のほうがバックドアに入っていく。
妹さんと二人、ポツンと残される。
「あ、音村妹さん。先ほどは誤解させて申し訳ない」
とりあえず、謝罪することにした。
気まずいときは特に意味がなくても謝罪。
これが社会で学んだ処世術だ。
「大丈夫です。それと私は海月万花です。よろしくお願いします」
苗字が違うのか。そこを聞いていいのかどうかわからない。
「そうか、海月さん、よろしくお願いします」
「はい」
ぽつぽつとだがお互い情報を交換する。
どうやら海月さんたちも海山辺村の高校生で、
暇なときはここで店番のバイトをしているようだ。
こちらのことは、今朝がた谷川と大郷から聞いていたようだ。
ここの村に住む同年代は5人だけでちょくちょく集まっているらしい。
「あら、もう万花と楽しげに話しているなんてなかなかやるわね」
5分ほど話しただろうか、奥から音村さんが戻ってきた。
店番を切り上げることを伝えてきたようだ。
「実は筋肉眼鏡たちに今日紹介される予定だったのよ。あなた」
「筋肉眼鏡、大郷か」
よく特徴をとらえたあだ名だ。
「あいつらに紹介されるのも癪だから、私たちが村を案内してあげるわ」
「いや、有難いけど、いいのか?」
「有難いならさっさと行くわよ」
「お姉ちゃん、待ってよう」
音村さんはさっさと店の外に出てしまう。それに追随する海月さん。
海月さんのほうも異論はないようだ。
「なんか、本当に前とは違うな」
思わず呟いてしまう。
前の俺は、こんないろんな人たちの出会いのすべてを部屋に籠ることによって無にしてたのか。
もったいないな。だからこそ楽しい夏休みをやり直そう。
「ほら、何してるの早くいくわよ」
「天ヶ谷さん?早くいきましょう」
外から姉妹の催促が聞こえてくる。
「ああ、すぐに行くよ!」
俺は決意を新たに外への一歩を踏み出した。
その先にあるのはきっと楽しい夏休みのはずだから。
ここでオープニングっぽいのをTAKE2
もっとテンポの良い文章を書きたい




