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海月万花1 ちょっと待ってくださーい!

私は何のために存在しているのだろう。

ふとそんなことを考えてしまう。

私は空っぽだ。何もない。

でも仕方ないこと。だって私は。



タコ焼きパーティーから一夜明け、今日も朝から水汲み。

それもさっさと済ませて朝食を食べた。この日は真千子叔母さんから頼みごとをされる。


「掃除はいいから、こんびにへ荷物を受け取ってきてくれるかしら」

「分かりました。行ってきます」


俺は一も二もなく引き受けた。叔母さんからの頼みごとを断る理由はない。

前はこんな頼み事されなかったような気がするが、前より社交的になったからかもしれないな。

そんなどうでも良いことを考えながらこんびにに向かった。


「失礼します」


こんびに前に到着する。普段たむろしている子供たちはまだいないようだ。

それに少し安堵しながら扉をあける。道中は暑かったので、冷房の効いた店内はとても快適だった。

中は相変わらず雑然としている。背の高い棚にこれでもかというほど商品が詰め込まれているので圧迫感を感じるぐらいだ。それにしても人の気配がないな。

レジまでたどり着いたがそこには誰もいなかった。いつもなら音村海月姉妹か婆さんがいるんだけどな。


「あのー誰かいませんかー?」

「はーい、ちょっと待ってくださーい!」


とりあえず店内に呼びかけると返事があった。この声は万花ちゃんだ。

棚が高すぎて分からなかったが店内で作業していたようだ。声の聞こえた方向に行ってみる。

するとそこには脚立に乗って商品を整理している万花ちゃんがいた。こちらに気が付いたのか慌てて降りようとするので制止する。


「あ、翔琉さん!天ヶ谷旅館の荷物ですね、ちょっと待ってください」

「時間はあるから大丈夫。それよりゆっくり落ち着いて脚立から降りよう」

「はい!お気遣いありがとうございま――――きゃあ!!?」

「危ない!!」


ガラガラガッシャーン!!


万花ちゃんが脚立を降りようとしてバランスを崩してしまう。脚立は倒れ、万花ちゃんも不安定な体勢で崩れていく。俺は咄嗟にカバーに入ってそのまま巻き込まれてしまった。


「いてて、ケガはない?」

「だ、大丈夫です!ありがとうございます」


なんとか万花ちゃんの下に滑り込むことができたおかげで万花ちゃんはケガ一つなかったようだ。

ただ、恥ずかしかったのか慌てて立ち上がってあわあわとしている。

幸い商品が少し落下したぐらいで被害もなさそうだ。


「よし、じゃあ荷物を受け取りに…っ」


立ち上がろうとしたとき、左腕に鈍い痛みが走った。どうやら手首を捻挫してしまったようだ。


「翔琉さん…、もしかしてどこか痛いんですか?」

「いや、ちょっと痛かったけど気のせいだよ」


万花ちゃんが心配そうに見てくるので思わずごまかす。両手をあげて平気だとアピールしようとしたのだが痛みを感じて少し顔をしかめてしまった。

それを目ざとく万花ちゃんに指摘される。しかも痛む場所まで当てられてしまった。


「左手…痛いんですか?」

「まあちょっと捻ったかも」

「そんな、私のせいで…ごめんなさい!ちょっと待っていてください!!」

「え、あ…」


万花ちゃんは目に涙をためながら頭を下げると店の奥に引っ込んでいってしまった。

まさかそんなリアクションをとられると思ってなかったので見送ってしまう。

少しすると氷嚢を持って戻ってきた。


「これで患部を冷やしてください!そのまま病院に行きましょう!」

「いや、そんな病院に行くほどでもないというか…」

「ダメです!私も行きますから一緒に行ってください!」


普段と違い、押しが強くそのまま病院に連れていかれそうになってしまう。

正直、俺が勝手に飛び出してかばっただけだし、そんなに責任を感じないでほしい。

どうしたものかと思っているとこんびにの入口から万花ちゃんの姉の音村守莉が入ってきた。

まさに天の助けだ。


「あら、こんな時間に来るなんて珍しいわね」

「お姉ちゃん!翔琉さんと病院に行ってくる!」

「?」

「とりあえず事情を聞いてほしい」


という感じで先ほどの出来事を説明する。


「病院に行ってきなさい。荷物は大郷にでも持って行ってもらうから気にしなくていいわ」

「うん!行ってきます」

「え…?」


守莉からも許可が出てそのまま病院に向かうことになった。

万花ちゃんから

「翔琉さん、私のせいで本当にごめんなさい」

と謝られ、天海村唯一の病院に向かった。

道中も心配そうに痛いところはないかなど聞かれて申し訳ない気持ちになる。

徒歩10分ほどで到着した。田舎にある小さい病院という感じだ。

特に待ち時間もなく中老の男性医師に診察してもらった。


「左手首の捻挫だね。これぐらいなら大丈夫。骨に異常もないから全治10日ってところだ」

「そうですか。ありがとうございます」

「はい、湿布と痛み止め。もし長引くようならまた来なさい」

「ありがとうございました!」


手際よく診断され、薬をもらって病院を出た。


「万花ちゃん、ありがとう。もう大丈夫…万花ちゃん?」


ずっと付き添って貰った万花ちゃんにお礼を言うが、万花ちゃんは何か考え込んでいるようだった。

こっちの気配に気が付いたのか再び頭を下げた。


「翔琉さん。私のせいで捻挫してしまって改めてごめんなさい!」

「いいよ、気にしないで。じゃあ、コンビニまで送るよ」

「大丈夫です!それでは明日からよろしくお願いします!!」

「うん?」

「それでは失礼します!」


そしてあっという間に万花ちゃんは去っていった。というか明日からよろしく、とは?

少し疑問に思ったが、手首のじんわりとした痛みもあり、さっさと旅館に戻ることにした。


その日は安静にしなさいと真千子叔母さんにも言われ、湿布を貼りサポーターを装着し旅館の部屋でゴロゴロと過ごした。ただ、そんなにひどい捻挫でもないし、片手でもペースは遅くなるが水汲み、掃除などもできます!と叔母さんに宣言したので明日からまた働く予定だ。

一応許可は貰ったが無理はしないようにときつく言われてしまった。

多分、平気だと思うがどうなるかは明日次第かな、なんて思いながら眠りにつく。


そして翌日。


「翔琉さん!水汲み頑張りましょう!!」

「??」


早朝。いつも通り水汲みのために旅館を出ると入口にジャージ姿の万花ちゃんがいた。ついでにとても眠そうにしている守莉もいた。


「これは一体どういう…?」

「捻挫は私の責任なので、10日間お手伝いします!許可は貰ってますのでよろしくお願いします!」


万花ちゃんは本当に申し訳なさそうにそう言って頭を下げた。

いや、ありがたいんだけど、大丈夫か。思わず守莉に目を向けると、知らないわよという感じで肩をすくめられた。


「うん。まあ、よろしく」

「はい!」


まあ、どうにかなるか。とりあえずリアカーを引っ張って水汲みに向かうのだった。


こんびにの名前を変えたい。

一日に一行ペースでしか書けなくなってしまった。週一投稿を目指したい。

エタらないように投稿します。

海月万花ちゃんは翔琉君の一つ下で丁寧な口調の女の子です

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