帆風七咲5 七咲ちゃんに任せない!
「花火?」
「時期と言えば時期ね。いいんじゃないかしら」
「楽しそうだねお姉ちゃん!」
「夏だねー。って夏休みだったかー」
「いいじゃん花火!私、蛇玉やりたい」
いつものように灯台に行くと、そこには結と大郷を除いたフルメンバーが思い思いの時間を過ごしていた。そこに嵐のようにやってきた男二人組がカバンから花火のセットを取り出したのだ。
「そう、夏と言えば花火!こんびにの店主に密かに仕入れてもらったのさ!守莉も知らなかっただろ!」
「花火は短い間だが筋肉と同じような煌めきを放つ」
花火、か、動画で見る分には良いんだけどな。火を見ると動けなくなって震えがはしるぐらい苦手なんだが大丈夫だろうか。正直試したことがないから何とも言えない。ただ、コンロの火すらダメだったから花火もダメなんじゃないかな…。周りは意外に乗り気だし断りづらいな。
守莉、万花ちゃん姉妹も七咲も八重も楽しそうに花火を物色している。しかし蛇玉は渋いな。
「翔琉!今夜やろうと思うんだが大丈夫かよ!?」
「お、おう、まあ、大丈夫です」
「よっしゃ!じゃあ夜の7時半に灯台に集合な!」
結のキラキラした顔の圧力に負けて思わず頷いてしまった。ああ、俺って本当に断れない…。
女子グループはなにやら準備があるからと帰っていった。なんかあるのだろうか。
男二人組は「爺さんの倉庫に打ち上げ花火が…」「なら俺の筋肉で運ぼう…」
二人でこそこそ話しながら飛び出していく。灯台にはポツンと俺だけが残ってしまった。
「―――真千子叔母さんに言わないといけないし、帰るか」
俺もとりあえず帰ることにした。そして灯台を出たところで声をかけられる。
「翔琉ー、何かしょんぼりしてない?まさか花火苦手なのかなー?なーんて…苦手なの?」
どうやら俺の様子がおかしかったことに気が付いたのか七咲が待ち伏せしていた。
最初は揶揄おうとしていた様子だったが、俺の顔を見て本当に苦手だと見抜いたようだ。
「えー花火だよー?怖くないってー」
「いや、まあ、花火は苦手じゃないんだ。多分。ただ火が苦手なんだ」
「火?火って燃えてる火?」
「そう燃えてる火。コンロの火でもマッチの火でも見たら体が硬直して震える」
「なるほどねー。でも来るんでしょ?」
「まあ、もう何年も火を直に見てないしもしかしたら大丈夫かなって」
「よし分かった!さすらいの美少女七咲ちゃんに任せない!だからしっかり来ること!後でねー!」
隠しても仕方ないので本当のことを言うと七咲は大きく頷いて、自信ありげに言い放ち去っていった。
たまにでるさすらいの美少女アピールはなんなんだろうか。ではなく一体どうするつもりなんだろうか。
俺は急いで帰る気にもならずにとぼとぼ歩いて旅館まで帰った。
旅館に帰り、叔母さんに許可を貰って時刻はあっという間にたつ。
時刻は7時過ぎ。日没はしているがまだうっすら明るい。でもすぐに真っ暗になるだろう。
灯台にたどり着くと男二人組が待ち構えていた。
「よう翔琉!一番乗りだな!」
「ふっ、どうやら、ふっ、待ちきれなかったようだな、ふっ」
「ああまあうん、てか浴衣か」
「夏って感じがしていいだろ?」
結は浴衣を着て団扇を扇いでいる。その姿がなんか様になっていた。
大郷はトレーニングウェアを着てスクワットをしている。
むしろ浴衣なんて着ていたら汗でびしょびしょになっていただろう。
灯台前の広場には金だらい、その中央に蝋燭。脇には水バケツがあり準備はばっちりだ。
幸いまだ蝋燭には火がついていない。
しばらくだべりながら待っていると女メンバーが全員でやってきた。
「やっほー!お待たせー!どう似合ってるでしょ」
「あら、全員揃ったようね」
「こんびにでみんなで浴衣に着替えてきたんですよ!」
「いや、こんびにに浴衣が置いてあるってすごい。助かったけど」
七咲が緑。守莉が赤。万花ちゃんはピンク。八重は青。とそれぞれ色とりどりの浴衣を着ている。
「おー、馬子にも衣裳ってやつだな!」
「ふっ、筋肉の次に夏を感じるな」
「結、そんなあなたは豚に真珠ね」
「まじか!ありがとよ!」
馬子にも衣装って誉め言葉じゃないような。皮肉ったのかと思ったら守莉の返事にも嬉しそうに答えているし、これはツッコむべきなんだろうか。守莉はやれやれと首を横に振っている。
「で、どうー?翔琉?」
「ああ、色もぴったりだし七咲によく似合っていると思う」
「そ、そうかなー。ま、当然だよねー!」
いつの間にか横に来ていた七咲がアピールしてくるので正直に答えておく。
こういうのは変にごまかしたら後が怖いからな。
七咲はとても自慢げに笑っている。
そんなこんなで辺りはいつの間にか暗くなっていた。
「よっしゃ!会場も盛り上がってきたし!良い感じに暗くなってきたし」
結がライターを片手に掲げ、火を―――。
あ、やばい。咄嗟に目を閉じる。
「これよりスーパーウルトラ花火大会を開催するぜ!」
「「おー!!」」
火を見る勇気が湧かない。どうするべきか。見てないから何ともないが、見たらどうなるんだろう。
考えていたらそこで隣にいた七咲がささやいてくる。
「とりあえずちょっと見てみようよーダメそうなら私が目を閉じてあげるから気楽に行こうよー」
「七咲、ありがとう。とりあえず見てみるか」
俺はのんびりした七咲の口調で肩の力が抜けているのに気が付いた。
意を決して目を開く。
翔琉君たちは楽しそうですね^^
やっとキャラが固まってきた気がする。はやく完結させて改稿したい。




