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第6話 部活動を見学

怪獣や怪人は一切出てこない話です。


翌日には入寮が終わった。

その後は平和な日が数日続いた。


「で?部活動はどうするんだ?」


 篠原さんに料理部に誘われて以降、ここ数日色々な部活に誘われ続けた。しかし運動部のマネージャーなど俺には無理だと判断したので最初に誘われた料理部と他の文化部を少し見学することにした。 


「こんな感じにしようと思います。取り敢えず見学の申し込みですが、まあ余程想像とかけ離れていない限りはそのまま決まると思いますよ」


先生に申込書を渡す。


「料理部と…映画研究部か…やっぱり運動部は嫌か」


「嫌じゃあ無いですけど。多分ついて行けないと思います」


正直興味のある運動部もあるがこればっかりはどうにもならない

 この学校は体育系が厳しい。それは普通の体育の授業から部活動にも及ぶ。とても俺に務まるとは思えない。


「全くどの口が言うか。まあいい、顧問には通しておくから」


「お願いします。」


 そしてその日の昼頃には見学が決まった。…仕事が早すぎる。


放課後 


「じゃあ行こうか。調理室」


 篠原さんについて行く。料理部は当然というか調理室で活動している。但しただ調理をするわけではなく活動の約半分が基礎知識の勉強と練習、そして作戦会議になる。

 調理方法の研究まで行うため料理部と言うよりかは研究会と言える。


「おはようございます中原先生。」

「おはよう篠原さん。ようこそ城ヶ根君。」


顧問の先生は中原先生と言う人で、授業は家庭科を担当している。うちのクラスの家庭科もなので面識はあった。

 

「よろしくお願いします」


「そろそろ皆も来ると思うからゆっくりしてて。今日は準備もそんなに無いし」


やがて先輩や他のクラスの同級生が来て活動か始まった。


「今日は実習の二回目よ。って事でクッキーを焼きます。」

 

 早々に準備を済ませる。

 正式な部員ではない俺も参加していいとの事で一緒に作業をする。


「よろしくお願いします。」

「よろしく。まあそう緊張しないでもいいよ。」

班には先輩達が4人と一年生が二人。


薄力粉をふるって、バターと卵をそれぞれほぐしてゆく。


「卵は確りと混ぜてね。」


「こんな物ですかね?。」


「うん。卵白がちゃんと切れてれば大丈夫。」

 卵は調理箸を使ってといてゆく。

 バターは室温になっていたためすぐにほぐれたようだ。

 バターがほぐれた所で砂糖を混ぜる。


 続いてといた卵を入れる。もちもちとした塊になるので、薄力粉を入れる。


 出来た生地をさらに混ぜ合わせる。ここで半分に分けて片方にはココアパウダーを入れた。

 混ぜた後ひとまとめにして冷やす。

 冷蔵庫で2,30分程度。


分担作業なのでここまでとても早く進んだ。


「後は型を作って焼くだけね。」


「じゃあ先に片付けを済ませますね」


ボウルなどを洗ってしまった。その後鉄板にオーブンシートを敷く。

 

「さてと…そろそろ良いんじゃない?」


生地は十分に冷えたようだ。

冷蔵庫から取り出して形を作ってゆく。

 時間がまだあるため型抜きを使った。


丸や四角や星型に抜かれた生地を鉄板に並べて170度程に熱したオーブンで15分程度焼くとクッキーが完成する。

 俺はお菓子を作ったことなど無かったので手際は悪かったが周りのメンバーは流石は女子と思わせる程に手際が良かった。



「皆終わった?じゃあおやつにしましょう」


完成したクッキーを皿にのせて、用意していた紅茶をティーカップに入れておやつタイム


「皆お母さんのお手伝いとかしてたの?」


先輩達が一年生に何気なく話す。


「家はお母さんが料理しない家でしたから、逆にお父さんと私の手伝いをお母さんがしてましたね」


 他のクラスの一年生…有村さんと言う人が答える。


「専業主夫じゃん。まあ今時だね~。」


専業主夫か…俺には縁の無い話だな。


「城ヶ根君は?」


「俺は…“孤児”だったんで、手伝いって言う訳じゃ無いですけど施設の先生から色々と習いましたよ。」


 料理を…少なくともレシピを見れば作れる程度には出来るのは、東京の戦いで全てを失った後にしばらくの間引き取ってくれた孤児院での経験が大きい。そこの先生たちは基本的に食事は配給品(缶詰など)になり必要ないとまで言われていた調理方法を色々教えてくれた。

 このお陰で未曽有の大怪獣に襲われ壊滅した首都圏でもひもじい思いする事は無かった。魚を釣ってさばけるだけでも大分違う。


「うーん…苦労してきたんだね。」


「いえいえ。そこまで苦労もしてないですし今時珍しい話じゃ無いですよ」


 勇輝はまるで「もう終わったことですから」とでも言いたげに済ませた。

 怪獣や怪人、侵略宇宙人との戦争は市街地が戦場になる事も多く戦火で両親を失った子供も多い。


「そこまで割り切った言い方が出来るのも凄いけどね。」


勇輝が失われた家族について割り切っているのは自らの手で復讐を果たしたからに他ならない。怪獣を相手に特に恐怖無く戦い、幾ら怪人とは言え元々人間だった物を何ら戸惑うこと無く倒せるのはそれだけ憎しみと恨みが強いためだ。


「俺はこれからに期待しますよ」


「そうだね、これからに期待しな。この学校に居ればすぐに彼女も出来るだろうしそれなりに楽しい日々を送れる筈だよ」


「彼女は…どうだか分かりませんけど」


「って言うか未だに付き合ってる子居ないの?」

別の先輩が突っ込む。俺は黙って頷いた

「だったら部活を頑張りなさい。」


「え?それでモテるんですか。」


「料理上手な女の子ってどう思う?」

「ただお嫁さんに欲しいですね。」

「それは女子も同じだよ。」

「なるほど…」

確かに何処かの…中将さんのような女性には料理出来る男子はぴったりかも知れない。

なんにせよ入部は確定だな。モテるモテない以前にこうしておやつが食べれてスキルが手に入るのは強い。


その後は後片付けをして、道具の手入れをして部活動は終わった。

 

……

「どうだった?」


食堂。部活動が終わるともう5時なので、寮に帰る前に夕食を食べる。今回知り合いになった有村さんと篠原さんが部活の感想について尋ねてきた。


「入部しようと思うよ。あそこにいればもっと色々勉強出来ると思うし。」


知識と技能は手に入る筈だ。それに美味しい物にもありつけるだろう。入部しない理由も無かった。


「じゃあこれから宜しくね。」

「宜しく。男子一人だけだから肩身が狭いかも知れないけど頑張って。」

「宜しく。」

こうして部活動の方は一歩前進した。


「それにしても、先輩達は将来はそう言う仕事に就きたいのかな」

 

 俺は今日感じた疑問について聞いてみた。


「うーん…ざっと三年生の3分の1位はそうみたいだよ?料理系の専門学校に行くって。調理師の資格とか取ればもう料理人だよね」

 

 部活動でも先輩達からは本気が感じられた。文化部で、特に試合があって他校と競い合ったりする部活動では無いにしろ熱は凄いと思った。

 やはり先輩達には料理人の道を目指す者もいる。


「中原先生が、そもそも元シェフだからね。先生が顧問になってからそう言うのも変わった見たいよ。」


あの先生元シェフなのか…すげえな


将来の夢があったとして、中々好きなことを仕事にするのは大変だと思う。ただ、悩んでいる時にもしも夢を仕事にした人に出会ったら変わるだろう。後押しになる


「さてと。城ヶ根君も、次の活動は来週だから忘れないでね。」

 

 料理部は大所帯なので3つのグループに分かれてそれぞれ活動している。


 いつの間にか二人とも食事を終えていた。


「ああ。分かってるよ。じゃあおやすみ」

「「おやすみ~」」


二人が寮に帰った後、こちらも食事を終えて寮に戻る。




将来か。…あんまりのめり込まない方が良いなこれは。俺がシェフになりたいと言ってなれる物でも無いだろうし。

 

 レンジャーの仕事は自分に合っていると思う。とある理由から俺は、制限付きではある物の武器や兵器を召喚してその力を振るう事が出来るようになった。兵器では破壊する事しか出来ないが、レンジャーとしてその力は生かされると思った。現に怪獣や怪人を倒した訳だし…


 でも、本当にそれを仕事としてやりたいか、と言われると少しばかり違った。

 

(まあなんだ、金は稼げるしいいけど。)


レンジャーになってからはまだそんなに活躍もしていないのに、既に俺の元には普通の高校生が持つものでは無い規模の報酬が振り込まれていた。これから先も怪獣や怪人は出てくるだろうから失業の心配も無い。不満は何処にも無いだろう


 それでも…

(他のクラスメートが羨ましい…なんて言ったらダメか。やめにしようこんなのは)


 普通の青春を送っているクラスメートが羨ましく感じる。

 勇輝はそんなことは言ってはならないと考えを振り払ったが、このことはやがて大問題になって表面化する事になる。


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