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第5話 平穏と陰謀


月曜日。


依然として首謀者は捕まっておらず、その上怪獣が出現したため厳戒態勢は解除されていない。

 警察の捜査で監視カメラより怪獣や怪人がトラックで何者かによって運ばれてきた事は判明しているが首謀者を突き止める程の情報は手に入らなかったそうだ。


 中将さん曰く今回の怪獣もオリジナル…何処かで眠りについていた物等怪獣として生まれた物では無く、何らかの薬物によって改造された物であるとのことだった。


 このことから先の怪人を造った奴らと原因は同じと判断された。

 二回にわたって品川が襲撃されたため実は俺の身元が全てばれていて、レンジャーを倒す事を狙った説が生まれた。

 

 現在品川地区は物々しいオーラに包まれている。町中では銃を持った警備隊が歩哨に立ち、今やよほどのことが無い限り品川へ行く人はいなくなった。


 迎え撃つ警察隊や国防軍の戦術も変化した。怪人や怪獣がただ暴れるだけの存在で使用する超能力も精々「パワーを上げる」「火を吐く」「凍らせる」程度の物だったこれまでの怪人・怪獣と違い、今回の怪人は「遠距離大規模破壊が可能な衝撃波を放つ」「意思を持って破壊活動を行う」など

可能とし、怪獣も小型な代わりに群れで連携して攻撃を行い、大怪獣の必殺技に比べれば小規模ながら恐るべきブレスを放つなど規格外も良いところだった。


 これでは普通車両(高機動車)と小銃、短機関銃、拳銃しか装備のない警察機動隊では荷が重いため、国防軍の出動がより容易になった。

 強い火力を保有する国防軍による攻撃で被害が拡大する前に倒すと言うのが作戦だ。その代わり警察隊は国防軍の攻撃に民間人が巻き込まれないように避難誘導を徹底して行う事になっている。




当然、学校も寮生は地上に出る事は許されず、それ以外の生徒は臨時で入寮するか自宅待機も許されている状況だ。

 

・・・ 


学校 理事長室


「ダメ」

俺は男子なので除外され、むしろターゲット説のお陰で何処かに隔離されるのかと思いきやそんなことは無く、入寮か自宅待機かを迫られた。

 学校など出来れば行きたくない俺は「待機」の方を選んだのだが、その意見は誰にも認められる事は無く、こうして理事長先生に直接呼び出されて面談を受けている。


「え?でも殆ど女子寮みたいな物じゃないですか。間違いがあったら色々と不味いですし、何しろ…何しろ…」


 問題はむしろ信頼についてだろう。俺はクラスメートと友達ですらないのだから。


「何しろ周りはよく思いませんよ。俺はクラスメートに信頼などされていませんし…やはり自宅待機にしますよ。」


 しかし理事長先生は頑として寮を進めてきた。


「クラスからの許可は貰ってるわ。別に部屋は鍵も掛かる個室だし監視カメラも沢山ついてるし問題無いでしょう。それにあなたはそんなこと出来ないでしょ?と言うのが皆の意見ね。」


…反論出来る手札がない。てかクラスの奴らこんな馬鹿げた事認めたのか…世も末だな。


「それにね、あなたの保護者に聞いたら「寮に入れて下さい」と言っていたわ。だからそこは従いなさい。」

「保護者?誰がそんなことを!」


「桐島さんという人よ。」


 あぁ…じゃあもうどうにもならないな。


「…そうですか。分かりました…」


あーあ…俺も寮生か。


「入寮は明日から。宅急便は手配してるから、今日帰ったら用意しなさい。一時的な物だから荷物は段ボール三箱分よ」

理事長先生は伝票を渡すと話は終わりだとでも言いたげに時計を見た


「そろそろホームルームじゃない?」


…… 

ホームルーム


担任が満足そうな素振りで話す

「そんなわけで城ヶ根は明日から寮生だ。城ヶ根は予定通り今日帰ったら引っ越しの用意をしてくれ。なぁに、どうせ一人暮らしでそんなに物も無いだろうからすぐに終わるだろう。」


全く無茶ぶりにも程があるよな。でも状況的に大急ぎなのは仕方がないけど。


「先生!城ヶ根君の部屋は何処になるんですか?」

誰かが質問する。


「本人から聞くといい。位置的には西の5ブロックだな。フロアは皆と同じだが不用意に行かない方が良いだろう。あそこは幽霊が出るともっぱらの噂だ。」


「西寮とかハズレじゃん…」

「可愛そう…」

「城ヶ根君は独房行きかぁ…」


先生の説明を聞いて他の生徒が上の言葉を漏らす

 西ブロックと呼ばれる西側に造られた寮は一人部屋だ。ユニットバスがあり小さなキッチンもある。部屋の大きさは四畳半程度。

 この部屋が外れと言われる理由は「窓が無いから」だそうだ。

 他の部屋には時間感覚を整えてくれる人工窓がついているそうだがこの部屋は窓と言ったら入り口の扉に付いている廊下を見渡す窓しかないらしい。そしてついた呼び名は「独房」。部屋は休むためだけの場所でその他はラウンジやカフェテリアでと言うことらしい。


 幽霊の噂の方は完全にガセだろう。あの辺りはいずれの男子寮になるそうだが現在殆ど誰も居ないため変な噂が広まったらしい。


「話は以上、先生は心配事が一つ減って嬉しいよ全く。」


 ホームルームが終わって一時間目が始まった。いずれにせよこの状況は不味いな…俺の自由がない。何から何まで理事長先生や中将さんに握られてしまっているのは不味いだろう。少し考える必要があり、だ。


昼休み


俺はここ最近食堂へは行っていない。最も明日からまた食堂で食べる事になるだろうが、怖い先輩たちがいるので行きたくない。


 そこで昼飯は最近自分で作るようにしていた。お手製とはいっても食べたいと思った物のレシピをインターネットで調べて適当に作っただけの代物だ。


「あれ?城ヶ根君…そのお弁当どうしたの?」

 

 前の席。出席番号順で一つ前の篠原さんと言う人だ。基本的に距離を取るようにはしていてもこのひと月半の間に友達かは謎だが知り合い程度になったクラスメートも多い。篠原さんもその一人だ。


「自作だよ。簡単な物だからそっちには負けるけどね」

 

 篠原さんは料理好きを公言しているだけ有って自炊しているそうで、お弁当も自作の物を持ってきている。お弁当の中身もこちらに比べると豪華に見えた。


「城ヶ根君のも凄いと思うよ?それって一品一品作ってるでしょ?」


「分かるか。」


「うん。男子ってそういうお弁当なんだ…」


「これは多分俺だけだよ。」


肉や魚がメインのがっつりとしたお弁当になる。



「城ヶ根君って料理とか結構興味ある?」

「あるよ。始めたのは最近だけど」


 料理はもっとしてみたい。俺がもう少し普通の生活を送れていたら今頃はまた少し違っただろう。

 

 

「だったらさ、料理部とかどうかな?ほら、まだ部活動決めてないでしょ?」

そう言えばそうだった。ついこの前言われたばかりなのに部活動の事をもう忘れていた。

料理部か。案外良いかもしれない。


「先輩たちも優しい人ばかりだし、スキル手に入るしおやつも食べれるし良い部活だよ?」

 

 料理部はこの学校においてかなり人気の部類に入る部活動だ。一年生は20人。先輩達は2年生3年生合わせて50人近くにもなる。総勢70名程が所属する大所帯である。

 料理という性質上生きて行く上で無駄にならないスキルでもあり友達に紹介するのにも誘いやすい部活と言えた。

 

「…取り敢えず見学してみようかな。案外あってるかも知れない」


「本当!?じゃあ待ってるよ!」

そうだよなぁ。俺がやる気がなさ過ぎて未だに決めていないだけでやる気のある生徒はこうしてもう部活動もバリバリやってるんだもんなぁ。 

 俺もこの学校にいる以上人並みにやる気を出さねば…。取り敢えず部活動は料理部は見学だ。


 満面の笑みを浮かべる篠原さんを見て、勇輝は密かに心の中で“リアルを楽しんでいる奴はちがうなぁ…”と感想を漏らす。

 


「そういえば…城ヶ根君はどんな食べ物が好きなの?」

「俺は…ともかく甘い物が好きだね。」

  

 食が進まないときでも甘い物なら不思議と食べれた。

 俺の経験では不味い不味いと評価されるレーション“MRE”も合成着色料と砂糖がたっぷり溶けた甘いジュースとやたらと甘いデザートがある分他のレーションより遥に美味かった。甘い物は兵士を救う…アメリカ軍が第二次世界大戦で勝てたのはコーラとアイスクリームとチョコレートのお陰だとすら思う。


「甘い物…好きなんだ。駅前のカフェとかもう行った?」


 駅前のカフェは高校生にも普通に払える程度の価格でパフェやケーキが食べれる名店らしい。但しお店の中をのぞくと男性客はリア充以外見当たらないため俺には入れない。

 

 「スペシャルパフェは食べたいけど入るに入れないんだよね。あのお店は」

 

 「だったら今度放課後にでも一緒に行かない?まあ暫くは無理かもだけど」


 「行こう。」

 

 勇輝は返事をすると共にやる気が出るのを感じた。嘗て戦場で兵士達のモチベーションを底上げした甘味は今も変わらずその力を誇っていた。

 そう言えば食堂のメニューにもデザートが並ぶ金曜日は結構楽しみだったりしたな、と思った。

 「それじゃあ…「ちょっとまって。それって私たちも一緒に良いかな?」」

 カフェへ行くことが決定しようとしたところで、周りで聞いていた数人が話に入る。

 「俺は構わないよ。」

この後5人余りが参加することが決定した。流石に話題がスイーツとだけあって皆熱意がすごかった。

 

 「最近は食べてなかったから楽しみだな…」

 本人は全く呑気だが、実際はかなり違った事情があることはいうまでも無いだろう。


5時間は体育。こうして午後ののんびりとした時間は過ぎて行く…






………


……


この世界の何処か。



「一つ、仕事を頼みたい。」


 そこでは数人の人物が話をしていた。


「内容と報酬に寄りますね。こちらは本業でして。」


 一人は商人。相変わらず全身にパワードスーツを着込み顔はヘルメットのバイザーで覆われて見えない。

 そしてもう一人は全体が靄に覆われたようになっていて姿が見えない。


「“こいつ”の捕獲だ。」


 写真を渡される。怪獣、それもかなり大型の怪獣が映されていた。


 これを嘗て地球を襲った大怪獣「ダイヤモンス」と言う。日本名では「金剛石の竜」もしくはそのまま「金剛竜」とも呼ばれていた。


 ダイヤモンドの化身と言われ、背中や腕に生えた突起物や、牙や鉤爪などは鉱石を思わせる、そのダイヤモンドのような皮膚は巡航ミサイルの一斉攻撃にも難なく耐えうる程に硬く丈夫。


 攻撃力も最強クラスで周囲殲滅型の必殺技「シンチレーション」は背中の突起を数秒間点滅させるだけで町一つを滅ぼせる破壊力を誇り、一点突破型の必殺ブレス「ディスパーション」は海を切り裂く程の貫通力とその周囲を吹き飛ばず程の衝撃を備える。


「これは。“本体”を狙わずに?」


 本体とは何を意味するのだろうか。


「俺達は“上澄み”で十分だ。今時あんな石ころに肝心がある奴などいないだろう。」


「まぁそうですねぇ。適所適材と言う物ですか。地球は資源が沢山ある。」


「頼めるか?死骸でも構わない。」


 怪獣の死骸。そんな物を一体何に使うというのか


「死骸ならば100%可能ですね。但し“こいつ”を目覚めさせるのにはそれ相応の対価が必要です。それと倒す手段はこちらに丸投げして頂きたい。」


「構わん。報酬はいくらでも出そう。」


「それではお引き受けいたします。」


「…しかし、流石は“策略星人”と呼ばれるだけはあるな。利益のためならってやつか、人のことを言えた義理では無いが。」


「お互い様でしょう?そっちだって、怪獣を捕まえて生物兵器を作るだなんてどうかしてますよ。人のことを言えた義理ではないですが。」


こうしてとある場所では恐ろしい計画が交わされていた。

 

 

 主人公たちが日常を過ごす反面裏側では恐るべき陰謀が進んでいます。

地球に突然怪獣が出現するようになり相次いで侵略者が襲来したのには根本的な原因が存在するようです。 

 商人に地球侵略の意思は無いようですが敵なのか味方なのかはっきりしません。

 

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