エピローグという名の次回予告
「それでねー。あのー」
妖精族が、3匹いれば姦しい。
エンパイヤ帝国の新しい格言として世界に広めようと思うほどうるさい声を聞きながら、コーリン・ウェイバーは公爵家に属する兵士たちと軍事演習を進めている。
妖精族が使役する大地のゴーレムや炎の魔法の威力はすさまじく、演習の内容は従来よりも非常に過激になっている。
今回帝国に来た妖精族の中には一般に知られる四属性魔法以外にもいろいろな特殊な能力を有する者が多く、特に癒し系魔術は怪我しても比較的簡単に治癒ができる、という特徴のため怪我に頓着しない過激な演習を出現させる要因になっていた。
「で、アリーナ。キミのクラスは決まったのかね」
コーリン・ウェイバーはその妖精族の中の1匹であるアリーナに声をかけた。
なんでもまだ自身の能力を決める『クラス』なるものを決めかねているらしく、強力な魔術が使えないことに悩んでいる乙女だ。
剣士/騎士としては実力の弱いコーリン・ウェイバーはなんとなく同じ仲間のようなものを感じて気にいっている。
「いえ……、まだですが……」
とはいえ、彼女は悩む必要は何もない。
別に魔術がなくても彼女には利点があるのだ。
それは知識。
主戦場がダメなら別の手で。
そんなところもコーリン・ウェイバーは気に入っていた。
今日の昼食もそんな彼女が発明した日式即席麺だ。
正確には彼女が発明したのではなく、何でも退魔師出身者が発明したらしいが。だがそんなものは関係ない。妖精帝国ならいざ知らず、少なくともエンパイヤ帝国に限れば始めてのシロモノに違いなかった。
「まぁ、そのうちに決めればいいさ。アリーナには知識があるからね。そこいらの妖精族などに比べても働きとしては遜色ないだろ?」
「――」
そんなコーリン・ウェイバーの言葉に、なぜかアリーナは悲しそうな表情を浮かべていた――
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「よくも我が孫娘を殺してくれましたね。アカハ・アーカード」
ヴァリエール公爵家の頭首は年老いていたがいまだ健全だった。
頭首は女暴漢を迫力をもって睨みつける。
しかし、女暴漢はそれを意に介してはいない。
「先に殺しておけば疑われないだろう。陰謀を司る公爵家なんだからそれくらい分からないのか?」
「……」
「それからあたいらはこれから北に行く。せいぜい政治的に利用すれば良いさ」
「こちらでは犯罪者でも向こうでは英雄――。返還請求すれば脅しにでもなるのかな?」
「どうだか。スキにすればいい」
その先に広がる王国で勇者の帝国と戦うのも良いかもしれない。
そんなことを考えつつ、北の風景に思いを馳せる女暴漢であった。
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「いやー。それにしても妖精皇女様。
イベント一覧にあんなプレーヤー殺しの項目入れるとかハンパないですねー」
拘束して並べられた魔物を前にして、剣士ケインは妖精皇女ニカーニャに微笑みかける。
「よいではないか。よいではないか。おかげで帝国一帯の魔物の経験点は私のもの」
その魔物の首を手刀でつぎつぎ刎ねつつ、妖精皇女は答えた。
イベントに自身の暗殺について追加し、妖精族がイベント説明を見たら国外退去処分を映像で言い渡す。
初見ハメと言わざるを得ないが、効果は高かった。
スラッシュ公国は妖精帝国の属国となったため、ハメられた妖精族たちはこの地にはいない。その妖精族達も国外退去処分は1年なので、それを過ぎれば戻ってはくるだろうが。たっぷり苦労して経験点を稼いでから。
ともかく、今スラッシュ公国にいるプレーヤーの妖精族は妖精皇女と、要人暗殺で妖精皇女を選ばなかった一部の賢い妖精族のみ。
そして一応形式上、スラッシュ公国は妖精帝国の属国なので、ケインを含むスラッシュ公国の人間は彼女ら妖精族の魔族退治というレベルあげのサポートをしているのだ。
「俺と妻はレベルカンストしてますから、殺さずに集める程度、造作はありません」
見返りとしては魔族の駆逐と妖精族からの庇護。
魔族の駆逐はスラッシュ公国の命題であったし、妖精族の容姿に人々は癒されていたため、国民からはおおむね好評であった。
属国とはいえ、妖精帝国はエンパイヤ帝国のような税の徴収はしておらず、サポートといってもその程度で、スラッシュ公国民の生活は悪化するどころか向上していた。そもそも、人間と比較して妖精族達はそれほど食料等を必要としていないのだから。
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そこは確かに≪秘境≫だった。
熱帯雨林を思わせる原生林。
深い谷に川。
生い茂るナゾの植物。
田畑を耕し安定的に食料が得られるようになるには数年かかるだろうか。
ネーム・ゲイードが最初にその≪秘境≫グンマーを見たときの感想だ。
だが、ネームには最近友達になった妖精さんがたくさんいる。
そして、ネームは≪生産者≫クラスのプレーヤーだ。
≪庄屋≫スキルを使えばどのようにすることが一番農業的に良いかを知っている。
「ファイヤー」「アイスストーム!」
妖精さんが炎や氷の魔法を放ち原生林を焼く。
それは焼畑農業という少なくとも1回は肥料がなくても良質の作物が得られる開墾方式。
そこで得られた土地と金で、更なる開墾を図ることができるだろう。
「しかし、リングマスター、ジア姫はどこにいったのか……」
ネーム・ゲイードは自分のフレンド・ウィンドウで自分の派閥の一覧を見るとジアの名前は通常の白文字から黒ずんだ灰色文字になっており、この世界にいないことをあらわしている。
「しばらくすれば戻ってくるのだろうが」
ネームはため息をついた。
土地を改良し、利益が得られるようにしておけば、ゲイード旧王家とスルターナ公爵家に大いなる利益をもたらすに違いない。
そしてそれはジアとの関係強化にも繋がるのだ。
「帰ってきたらまず何て言おうかな?」
帰ってこないことは想定していない。
ネームの魔王からは生きているとの情報を貰っているからだ。
アイテムボックスには興味を持ってもらえるためのアイテムも幾つか取り揃えている。
「とりあえず、いまの現状を見てなんていうか、楽しみだな……」
ネームは、いままでにない充実を感じていた。
その横で、資材調達担当のロージス公爵家嫡子である『猫の』は容器になぞの白い液体を抱え、小さくほくそえんだ。
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さすがは領事館の2階。
立食パーティができるフロアではまるで学校の教室のように正面にはプレゼン用のホワイトボードが設置されており、ロロはその正面壇上に立ってポーズを取りながらタッキーに定番のセリフを言った。
「「乾杯ー」」
定番すぎた。
ちなみに手に持っているのはロロを除きジュースだ。法律は守ろう。
ロロ、ようこ、ジア、タッキーの4人は立食パーティの形式でご飯を取ることになった。中央にはお好みで取れる食べものが並べられ、いかにも食べ放題という雰囲気だ。
「あ、そういえばアレやってなかったな。アレ。
いっぺん言ってみたかったんだよ。
さぁ、我のものとなれ勇者よぉぉ!」
「いや、俺勇者じゃねーし! 悪の魔法使いだし。って、さっそく飲んでるんじゃねーよ」
「ははーん? 妖怪狐の中二美少女と自称異世界の姫、そして、私たる異国の傾国の姫。これだけ侍らせておいてこれのどこが勇者でないと? 特にようこなんて彼女なんだろ?」
「彼女じゃないよ。使い魔だよ?」
「より酷いよ! よーこってばタッキーん家毎週通っているんだって? 毎週毎週酷いことしているんだろ?」
「してねーよ! ジアちゃんには酷いことしてるかもだけど。この前も死んだし」
「私をなるべく殺さないようにしてください、ね? タッキー」
「お、おぅ」
「ということで勇者よ。我のものとなったアカツキには我の氏名の半分をくれてやろう」
「それ、結婚してくれって言ってね? しかも婿養子なのかよ」
「では我のものとなったアカツキには勇者に我が国土の半分をくれてやろう」
「いやだからそれ、しゃれになっていなから」
「ならば我のものとなったアカツキには勇者の息子か娘に遺伝子の半分をくれてやろう?」
「シモネタやめい」
「じゃぁ、今度はジアちゃんね。我のものとなれ、公式勇者よ!」
「分かりました」
「ジアちゃん素直すぎ! そのまま魔王ロロに食われるぞ」
「ジアちゃん素直でいいねぇ。よいこよいこ……」
そして夜は更けていく――
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「なぁ、ようこ」
「なぁに、タッキー」
「打算じゃなく、女の娘を俺にスキになってもらうにはどうすればいいのかな?」
「それを、僕に聞く?
ねぇタッキー。僕じゃダメ、なの?」
つづく




