2つ目「物欲センサー」
アリーナはイベント一覧を開いた。
「魔王との出会い (Clear)/達成済み
はじめてのクラス選択 (New!)/報酬:なし
はじめてのゴブリン討伐(New!)/報酬;経験点1point
はじめてのゴーレム討伐(Clear)/達成済み
はじめてのスライム討伐(New!)/報酬:経験点100point
はじめてのギルド登録(New!)/報酬:ギルドカード
パーティを作ろう(New!)/報酬:なし
派閥を作ろう!(New!)/報酬:リング名/エンブレム決定権
派閥に参加しよう(New!)/報酬:リングチャット発言権
……
…………
………………」
意外と普通だった。
佐藤はイベントの内容を見つつ拍子抜けした。
どんどんアリーナは下に一覧を移動させる。
目指すは報酬がスキルポイントが得られるイベントだ。
ところでアリーナさん。いつゴーレム倒したんだい?
「………………
…………
……
はじめての肉体労働(New!)/報酬:ギルドポイント
はじめてのPK(New!)/報酬:ネームが真っ赤
はじめてのxx (New!)/報酬:子宝
はじめてのドラゴン討伐(New!)/報酬:経験点1,000point
あなたも私も配管工(New!)/報酬:デュアルジョブ『配管工』Level.1
だんな様をゲットだぜ! 必殺婚活イベント!(New!)/報酬:だんな様orお嬢様
要人接触/報酬:スキルポイント+1
魔王討伐:魔王ロロ・アスター・イェンヘー(New!)/報酬:空中庭園(残45庭)
要人暗殺:妖精皇女リカーニャ・キルデワルド四世(New!)
要人誘拐:ジア・スルターナ・アフタースクール(New!)/報酬:スキルポイント+1
要人暗殺:ジア・スルターナ・アフタースクール(New!)/報酬:スキルポイント+1」
※同一のイベントで得られる報酬は1つまでです。
※イベントによるスキルポイントの配布は2ポイントまでです」
意外と普通ではなかった。
砂糖大好「やっぱりネタに走ってやがる……」
そうはいってもスキルポイントは欲しい。
欲に駆られた佐藤とアリーナは詳細を調べてみることにした。
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●イベント『要人接触』の場合
まずは一番簡単そうなイベントを見てみようと佐藤はアリーナに指示して要人接触のイベントの詳細を確認させる。
ウィンドウの操作も基本はアリーナに行わせた方が案外楽だ。
というか、画像の伝達で処理をしているせいか、会話以外はやたらとインタフェースが重い。
画像については伝送容量を増やせばなんとかなるだろうが、インターフェースが重いのはどうにもならない。ここは改善の余地があるだろう。佐藤は後で要望でも出しておくかと考える。
しばらくすると正面に金髪巨乳でいかにも『姫サマー』という感じの少女があらわれた。
それは3Dのホログラム映像のようで身体全体が透けている。その映像はノイズのようなものがときどき走り乱れていた。おそらくこれは演出だろう。
流れるBGMが変わる。清楚で荘厳な感じといったら良いだろうか。少女の性格は優しそう。しかし薄緑色のドレスになにやら重そうな剣を帯刀しており、そこだけ違和感がある。
「こんにちは」
その少女が虚空に向かって喋り始めた。
アリーナ「あ、これはジア様ですね」
砂糖大好「ジア様?」
誰だろうか? と思うまもなく映像が答えてくれた。
『私の名前はジア・スルターナ・アフタースクール。
対外的にはスルターナ公爵家の第一公女。
この映像を見られている方に対しては『魔王になろう』の公式勇者といった方が分かりやすいでしょうか――』
でたよ公式勇者。
MMO-RPGではシナリオを進めるための舞台装置であり、冒険者に何かをさせて自分は結果だけを得るという素晴らしい存在だ。
その性質上、プレーヤーが扱うキャラより活躍してはいけないという制約があるのだから当然といえば当然か。
『イベントでは私に会って話しをするだけで1スキルポイントを進呈することになっています。だから下の方の誘拐とか、暗殺とか絶対に選ばないでくださいね? 暗殺されたら私、死んでしまいますから』
それはそうだろう。人は殺されれば死ぬ。ジアは必死だった。
砂糖大好「でも結構必死すぎね? ゲームなのに」
アリーナ「この世界はホンモノですよ?」
映像からの音声の邪魔にならないよう、小声で話す佐藤とアリーナ。佐藤はキーボード入力だからそもそも声はでないのだが。
ホンモノの世界か……。やっぱりさすがにそれはないよな、佐藤は思いかえす。
『ところで、私は公爵家の令嬢、つまり貴族ですから、一般の方ではなかなか会う機会がないと思います。なので私の持つスキル『イベントホライズン』により、他の方にスキルポイントを進呈するプレーヤーさんを募集します。すでに妖精帝国の皇女様とか、複数の方に配っていますので、探してそちらからポイントを得るというのも良いと思います。ほかにも街で固定的なアイテム販売を行う方も募集しますので、特に商人クラスの方はよろしくお願いしますね。それでは、次の機会にはリアルで会うことを楽しみにしています。だから暗殺とか絶対ダメですからね。納得して殺されない限りポイントあげませんよ。ではごきげんよう――』
映像はそこで途切れた。自動的に消滅するとかはなかった。
砂糖大好「ん? 妖精帝国の皇女様(?)なら妖精族ならすぐに逢えるんじゃないのか?」
アリーナ「むりむりむり。さすがに身分が違いすぎるよ。こっちは単なる妖精帝国民の下っ端なのに。そりゃー儀式とかで中央にいるのを眺めるとかはできるけど、声なんて掛けようものなら飛びますよ。首が」
砂糖大好「じゃぁこの公式勇者に逢いにいくのが手っ取り速いな。イベントホライズン? とかで量産された要人とやらに逢うのは大変そうだ」
アリーナ「そうだね。ジア様ならこの前のニンゲンさんとの戦争のときに逢いましたしね。でも、ジア様はそのとき何もくれなかったよ?」
砂糖大好「このイベントというシステムが始まったのが最近だからじゃないのか?」
アリーナ「そうかもしれないねー。じゃぁ今度行くってことで、では次いってみよう――」
なにか戦争とか不穏なセリフがあったが大丈夫なんだろうか。
会ったって戦争でだろう? それもニンゲンさんとの戦争って、どうみても敵対的な関係としか思えない。もしかすると、いやかなりかなりダメかもしれない。次のものに期待しよう。
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●イベント『魔王討伐:ロロ・アスター・イェンヘー』の場合
そこに現れたのは一人の女性の映像。
いかにも強そうな魔法少女――というにはとうが立っているので魔女――がそこにいた。
先ほどの少女、ジアの清楚な美しさとは違い、美女ではあるのだが強い女性、怖い雰囲気といった方が先にでているような感じだ。
赤黒く染め上げたローブ。大きな宝石を散りばめた杖。どこをどうみても攻撃的魔法職だ。
だが、それ以上に佐藤は映し出された魔女の頭上に目が点になる。
そこにあまりにも特徴的なものがあったからだ。
頭上にぐるぐると回転する赤、白、青のトリコロール。GMというでかい文字。
鬼畜だ。魔王だ。いや、どうみても運営だ。そこは隠せよ。
『ついに魔王討伐をすることになったのかね。愚かなる小さき者よ。
我は来るものは拒まぬ。全力でお迎えしてあげようではないか。
我は魔王城にいる。いつでも来るが良い。
あぁ、『そっち』の住人とは違い、『こっち』の住人なのでリアルで仕事が場合はいないがな。そのときは諦めてくれ。代わりにガーディアンとともにいろいろなものを置いておこう。盗賊系ならそちらを攻略するのも良いのではないかな。
しかし、適正レベルは最低でも110オーバ。気をつけるがいい。
あぁ、特典は自分で言うのもなんだがすごいぞ。
我ら雷精霊群の技術基盤機構の技術部が総力を挙げて創りだしたからな。
名を総称して空中庭園という。
土地名を叫びながら特定アイテムを掲げると空中に庭園が出現してそこに行けるという優れものだ。
アイテムは所属する派閥のメンバーや、リングマスターが自由に作って配布できる。
すでに≪秘境≫グンマーと、≪砂丘≫トトリーは配布住みだ。
残り45とどうふ……おっと、45庭だな」
砂糖大好「あれ? これスキルポイント取得イベントじゃないんじゃね?」
アリーナ「あれほんとだ。順番に見ていったら間違えちゃった」
砂糖大好「まぁいいか。しかしなるほど。俺は庭園の名前付けの法則が分かってしまったぜ。きっと≪こんに≫チバーとか、≪黒い悪魔≫クマモー○とかあるに違いない」
アリーナ「へぇ。さすがです。魔王さま」
『ちなみにこれが≪秘境≫グンマーを配布したときの戦争の様子だ。参考になればいいがな』
魔王ロロの姿が消え、スクリーンの中にさらにスクリーンが開かれる。
魔王に挑むのは人間の軍隊。
遠巻きから近づくにあたり、その規模が明らかになっていく。
人、人、人。1万はいるのではないだろうか。
空が怪しい曇天に遷移する。
現われる1体のドラゴン。
ドラゴンに跨る魔王ロロ。
魔王ロロが何かを叫ぶ、しかしカットされているのか声は聞こえない。
代わりに始まるクラッシックなのかメタルなのか分からない曲調のBGM。
それは処刑執行用としか思えないような音楽だ。燃える系のアニメの主人公が必殺技を出す前に流される音楽といっても良いだろう。いまにも蹂躙せよ。とか聞こえそうだ。
対抗して画面が転移しアップで写しだされる公式勇者、ジア。
何かを叫んで返す。やはり声は聞こえない。
やがて強大な魔力が魔王からあふれ出し詠唱が始まる。
動揺する人々。そのとき、映像上の世界が赤く染め上がった。
ドーン。
たったの魔法一撃で吹き飛ぶ兵士達。
大地を砕き、天を揺るがす強大な力。
砂糖大好「あー。だめだこれは……。妖精族でこれをどうしろと?」
アリーナ「私もこれで1回吹き飛ばされたんだよねー」
砂糖大好「飛ばされたのかよ」
アリーナはしみじみと語った。
アリーナ「だって魔王だよ殺らないと! 私だってレベルが上がったら……」
砂糖大好「ムリダトオモウナー」
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●イベント『要人暗殺:妖精皇女リカーニャ・キルデワルド四世』の場合
難易度の高いイベントの攻略は相当難しそうだ。
佐藤は思い知らされたが、まずは全部見てみようと次のイベントをアリーナに選択させようとする。
アリーナ「こ、これはちょっと」
佐藤は自キャラであるアリーナが選択に躊躇するのを見て驚く。
このゲーム、自キャラが反抗までするのか。
どうせ見るのはタダだからとアリーナをなだめつつ佐藤は要人暗殺の項目を自分で選択した。
『まさかとは思うが、我が帝国の民である妖精族がこの選択肢を選ぶことはないよな』
選択して現われたのは憮然とした表情の妖精族。
姿は大きめでアリーナの4倍。120cmはあるんじゃないだろうか。
人間からしてみればロリだが。
蝶の羽と光るエフェクトが美しい。
アリーナ「皇女様――。ごめんなさい」
アリーナがつぶやき膝をつく。
『さて、この選択肢は地雷である!』
言い放つ妖精帝国の皇女。
今度は悲しみ系のBGMが流れ始める。
放置しておくと出刃包丁で刺されナイスなボートに飲まれていきそうな勢いだ。
『わらわはジアから≪イベントホライズン≫を配布されている。妖精族であれば会っただけでポイント配布をしようと思っているのだが、この選択肢を選んでしまったのであれば仕方がない。どうせお主の魔王に騙されて選んでしまったのであろう。そう、仕方がないのだ』
雰囲気がかなりやばかった。
砂糖大好「これ、何かまずくない?」
アリーナ「私もそんな気が――」
何か嫌な予感が佐藤はしたが時すでに遅かった。
『まず要人暗殺などというハートフルでない選択肢を選んだキミにはバットなステータスを3日間てんこもりで配ってあげよう』
アリーナ「魔王さま。私なんだか、とってもねむいんだ……」
砂糖大好「お前はパトラッ〇ュかッ」
『それから、まさか我が帝国の民であるフェアリーがこの選択肢を選ぶことはないよな? もし選んだのであれば選択時点の3日後から1年間、妖精帝国から追放の処分を科すものである!』
アリーナ「えー」
さらにがくがくと震えだすアリーナ。
それはバットステータスを受けた影響か、それとも追放処分を受けたショックか。
『さぁ、さっさとどこへなりとも好きに行くが良い――というのは建前でな。妖精帝国内ではまともなモンスターがいないから経験点を稼げないのだろう。十分な経験を詰むまで外国で修行するのがよかろう。ということだ。その間こまごまとした妖精帝国内の職は解いておいてやる。ではさらばだ』
映像が消える。
静まり返る音。
さてどうしようか?
意外と皇女も思いやりがあるのかな、と思いつつ佐藤は次の選択に悩んだ。




