犯人は執事長
画面上できょろきょろしているジア。
まるでここにいたジアが「魔王になろう」の世界に瞬間転移したかのよう。
タッキーその艶かしい生姿を見るだけでドキまぎしてきたのだが、画面越しでは少し安心できた。
こう、自身のジャージを着た女の娘とか、いろいろ来るものがある。
タッキー「えーっと…。なんか凄い勢いで消えたねぇ」
タッキーはジアに向かって鍵盤を叩いた。
ジア 「それはもう、≪瞬間転移≫ですから」
タッキー「――。とりあえず、ジアちゃん今度やったらおしおきね」
ジア 「……。なにするんですの?」
タッキー「とりえず押し倒して、それからいろいろとてもえっちぃなことを……」
ジア 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
タッキー「さて、ジアちゃんの了解は得られたことだし」
ジア 「了解した覚えはないのですが」
タッキー「というわけでジアちゃん。俺はジアちゃん殺した犯人は分かってしまったんだが、ジアちゃんどうするよ、殺っとく?」
ジア 「どうしてでしょう。私も分かりましたわ」
メッセージウィンドウには白色のオープンメッセージで、
「執事長『ふははー。ついに殺った。殺ったぞ。俺が。この俺が、新世界の神になる!』」
などといった供述が書かれていた。
タッキー「問題は証拠がないことだな。なにしろジアちゃんを殺したときに生じる死体がない。なるほど。これが、完全犯罪か」
ジア 「確かに死体はありませんね」
タッキー「ま、その辺はなんとかなるでしょ。ジアちゃんは貴族って設定なんだから、貴族の女性の寝室に男が侵入したとか言っただけで普通は重罪なんじゃね?」
ジア 「重罪なのかしら?」
タッキー「ジアちゃん……、君はそのガードの甘さをなんとかするところからはじめようね」
ジア 「え、えーっと。教育して頂けるなら?」
確かにガードが甘いのは認めますわ。何しろ殺されていますし。
普通ならこれで終わっていますし、と付け加えるジア。
タッキー「お、おぅ」
<<GM3がログインしました――>>
GM3 「タッキーこんばんわー。ねむいよぉ。こんな時間に2人で何やってるのです? あ、ジアたん無事に戻ってきたんだね。こんばんわー」
いつもならタッキーの家からログインしているようこだが、今日は自宅からログインしているようだ。
タッキー「おう、ようこたんおはー」
ジア 「おはようございます? あ、GMさんにお願いがあります」
GM3 「およ? なんでしょう? 頼まれたよ?」
ジア 「各人が故郷とする場所をこの場所に替えられませんか?」
指を下に向け、ジアの自室を示す。
タッキー「ジアちゃん俺のものになるの嫌なの?」
ジア 「嫌です」
タッキー「えー」
GM3 「できるけど課金だよ? タッキーにお願いしたら変えてくれるかも、なのです」
ジア 「おいくらでしょうか?」
GM3 「こっちのお金で10百万円だね」
タッキー「なにその単位。それって1000万円だよね。ぼりすぎじゃね?」
ジア 「それってどのくらいなの?」
タッキー「1日の食費の10万倍くらい? 俺なら10年は過ごせるね。遊んで暮らすんなら無理だけど」
ジア 「うわ……」
GM3 「システムとマーケティングはキモたんの担当なのです。僕にはどうにもならないのです。なんでも後で人増えたら値段下げて割安感を演出するために今は高くーとか言っていたような? ニッチャーのミニリーダーなんたら? 威光なんたら?」
ようこも詳しいことは分かっていないようだ。
タッキー「ま、確かにようこがこんな魔王になろうのシステム作れるわけないか。しかし誰よキモたんって。まさか気持ち悪いからとかキモたんってあだ名じゃないだろうな?」
GM3 「正解! キモたんは地元の大学の院生で、僕が踏んだり蔑んだりすると喜ぶからみんなキモたんって呼ぶのです。」
タッキー「うへ。なんだかそれ大丈夫なのか。それ」
GM3 「昔は酷かったけど、最近はロロたんから女の娘を召喚してもらってリア充しているのです。あ、ちなみに運営のリーダークラスは僕が発起人で、ロロたんが新鮮な鯖の購入とか政治活動とかの3人体制なのですよ」
ジア 「女の娘召喚って……、こちらの世界の住人が酷い目になっているんじゃないでしょうね?」
GM3 「この前行ったら、キモちん踏まれてはぁはぁ言いながらプログラミングとかしてたから大丈夫なんじゃないかなー(棒」
タッキー「召喚で踏むって……。派遣たいがいやなぁ」
実のところ、この召喚は本当に召喚なのだが、タッキーはロロからの派遣社員とうまく勘違いしたようだった。
GM3 「んー。(ざっとログを見ながら)ともかく犯人は殺っとくのです? ジアちゃんにセクハラいことしようとするタッキーも後で〆ておくとして」
ジア 「さすがに殺すのは…」
タッキー「そうだよ、さすが殺したり〆たりするのはどうかな。だいたいこんなイベントすぐ終わらせたら駄目だよねぇ。俺も覚悟できたし、また間違ってジアちゃん殺されたら、今度はぐふふ――」
GM3 「さすが鬼畜タッキー。その発想はなかった」
ジア 「殺りましょう! でも一人だと不安ですわね」
GM3 「あー、リナちゃんまだスラッシュ王国なの?」
侍女のリナは調整という名目でスラッシュ王国――いまは妖精帝国の属国となってスラッシュ公国――に出されていた。ごく一部の人は実はリナはスラッシュ公国の間者だと知っており、泳がされているというという設定でリナがスラッシュ王国にいっている。と思っているのが実態だった。実に分かりづらい。
ジア 「えぇ」
タッキー「そんなの、≪瞬間転移≫で一発じゃん?」
ジア 「――それも、そうですわね」
気づかなかったのか、ジアはいい発想だとポンと手を叩いた。
タッキー「とりあえず、その服をどうにかしてからだね」
ジアの右胸はまるで剣に刺されたかのように裂けており。胸は半分以上はだけていた。
ジア 「き、きゃー」
慌てて身体を手で隠すジア。
タッキー「だからさぁ、まずそのガードの甘さはなんとかしようよ……。ジアちゃん」
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その後の動きは素早かった。
スラッシュ公国に≪瞬間転移≫で飛んだジアはリナを引きつれトンボ帰りし、朝が訪れる前に執事長に垢BANを仕掛けてプレーヤーになれないようにした上で、ジアの屋敷から放逐した。その間およそ1時間。すぐに城の手の者に連絡して捕まえさせる。後は父である公王の仕事だ。
だが、タッキーとようこは眠いので寝たため何がどうなってたのか結果を知るのは明日以降であった。




