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ジアはいつも寝てた

 土曜日。場所はいつものタッキーの部屋。

 そこには4人の男女。

 こんなにいるとさすがに手狭に感じるため、ベットは立て掛けて片付けられた。

 もちろん動画として後で流せるようにカメラも前回よろしくばっちり廻している。

「えー。れでぃーすあんどじぇんとるめぇーん。今日このたびはうんえいの皆様にお集まりいただきありがとうございます。

ということで、今からこの魔王になろうというゲームの問題点を発表したいと思う。

第一回、うんえいに対する駄目だしコーナーぁぁ! ぱふぱふいぇぇぇーい!」


 一人はもちろんタッキー。

 のりのりである。


「うわぁ、やめて。既に僕のライフはゼロなのです」


 当然のように来ているようこ。

 ようこはここ数週間以上、毎週欠かさずタッキーの家に来ており、完全に通い妻状態になっている。


 しかし、今日はそこに新たなる人物がさらに2人。


「なんだぉ。ようこ様に言われて来たらなにこの部屋。ネット環境最悪じゃん」


「えー。ジア様におかれましてはご機嫌麗しく――。私、キルファ候国領にて農家を営んでおりましたドナーターンと申しまして――」


 追加で登場したのはGM1こと、うんえいのプログラム担当、キモたんとドナたんだ。

 キモたんのかなりふくよかで包容力のありそうな男性。ぶっちゃけるとデブである。

 本名は知らない。名前バレは良くないからだそうだが、そんなあだ名で大丈夫か?

 もう片方はそれなりの美人さんなのだが、さっきから魔王になろうの画面にいるジアちゃんに対してしどろもどろになりながら話しかけており、かなり残念な人と化していた。


「で、ロロ? さんは?」


 あの魔王は呼んで来るような人ではないな、と思いつつタッキーは念のため聞いた。


「タッキー。ロロたんはねー。こっちの世界だとホンモノのお姫様だからねぇ。いま自衛隊と自国の軍とのかいじょーえんしゅーとかでシンガぽー? シンガー?」


 シンガ○ールくらいはいえるだろ普通。

 てか、国相手になにしてるんだよ。ロロたん。


「なんだってそんなのが運営にいるんだよ」


「いやー。だって、それなりに金持っているパトロンいないと無理でしょこれー」


「そうそう。本当の異世界にRPGツクールなんてネタ、魔術師(ウィザード)たる俺様のテクニックと、ロロ様の多大な投資がなきゃむりっしょー。さぁようこ、タッキー、敬うがよい」


「ねー」


 デブと幼女が意気投合してハイタッチを決める。

 てか俺様デブであだ名がキモたんってシュールすぎじゃね?


「ということで、タッキーとやら。俺様の作ったシステムの何に不満なのか、いってみたまえ」


「なにその上から目線。まぁいいけど。それでは1ユーザーとしてシステムのダメなところをどんどんダメだしてしてやろうではないか。ふははー」


「お前の方がよほど上から目線だぜ」


「タッキーすてきッ」


「いや、ようこ様そこでそれはないだろう。イケメンならなんでも赦されるのか?」


「なに、キモたん踏まれたい?」


「我々の業界ではご褒美です」


 そして格闘が始まる。

 ようこがジャンピングハイキック!

 避けようともしないキモたんの頭に炸裂。

 そのまま蹴り倒した。


 ぐりぐりぐり……

 ハァハァ……


「こぉらー。おまえら、俺の話を聞けー」


「なに、タッキーも僕に踏まれたい?」


 踏みつけながらタッキーをにらみ付けるようこ。

 小悪魔的なかわいさがそこにあった。


「何かに目覚めそうなのでやめておきます」


「ふふ。俺は既に開眼澄みだぜぇ。かわいい女の娘が、しかも中二のロリが蔑みの視線を浴びせながら俺を踏む! 俺を見ながら! あぁ!」


 恍惚とした表情を浮かべるキモたん。キモい。キモすぎる。


「やめろ!」


「で、タッキー。今日は運営を集めてなにするん?」


「だからさっき言ったでしょ。なろうのダメだしするって」


「なになにー? ジアたんに不満でも?」


「おうよ。だいたいさー。この前もそうだけど驚かそうとして夜中に突然くるとかどうよ。手引きしたのようこ。お前だろ? そのネタがやりたいがためにイベント起こすとか本当にやめて。とても嬉しいけど突発的すぎて心臓に悪すぎるから。その証拠に本来なら本命となる執事長討伐イベントとか知らないあいだに片付けてるし」


「へ? なぜ僕が全裸のジアちゃんをタッキーにデリバリーするのです?」


 するなら私をデリ……といいかけたところでタッキーは無理やり手で黙らせた。


「この家の鍵持ってるの、俺と、親と、ようこ、君だけだ。鍵もっていなければ簡単にはこの家に入れない。どうだ名推理だろう」


「おぃ、なぜようこ様がなぜタッキーの家の鍵持ってるんだよ? 俺様にもクレ」


「やらん。ちなみにようこに渡したのはずいぶん前からだな。俺が不在のときにようこが来たとき無碍に返すのもなんだし」


「ちなみにキモたんちの鍵も持ってるからねッ」


「まてぃ、それ俺様初耳だぜ」


 キモたんがびびる。


「ロロたんも持ってるよ」


「まてぃ、それ俺様初耳だぜ。パート2」


「そりゃキモたんちって、ロロたんが大家でロロたん名義で貸しているんだからさー」


「し、知らなかった……」


「でも考えてみてよ、つまりロロたんのヒモだよヒモ。いい身分じゃね?」


「そ、そうかな……」


「だまされてる。キモたんぜったいだまされてる」


 実は結局、ジアのことをごまかすためにようこはキモたんに無理やり話を振っており、だまされているのはタッキーの方なのだが、そのことにタッキーはまったく気づいていなかった。


「で、ようこ様のヒモのタッキーは我々集めて何をしたいんだい?」


「うむ。今日はこの『魔王になろう』のダメだしをしようとさっきから言ってるじゃないか」


 さらにキモたんから本題の話をされ、完全にジアが家に来たことをはぐらかされるタッキーである。


「ヒモは無視なんですね。タッキー。さすが鬼畜かわいい」


 ここまで話題をすげ替えればもうジアのことは誤魔化せだろうと内心では安堵するようこ。


「(無視して)つまりだな、なろうにMMO-RPGとして致命的な弱点がある」


「たとえば、どんななのです?」


「これ、なにかこう、『俺MMO-RPGやっている!』みたいな充実感がまずない。例えばレベル上げの充実感とか、そんなのがないんだよね」


「あー。わかるわかる。わかるわー。経験点という欲望に釣られ、くそよわっちー弱いモンスターを『暇だー』とかいいながら、ぷちぷち作業的に殺るというあの感覚。いいよねー」


「さすが、キモたんマゾいのです」


「うむ。マゾければマゾいほど燃え上がるよね。でも残念でした。ジアちゃんは俺様たちGMのキャラだから最初からレベルMAXです。さぁタッキー、泣き叫ぶがよい」


 誰が泣き叫ぶか。

 タッキーは心の中で誓った。


「……。キモたんがマゾなのはよく分かったんだが、他にものめりこめる要素があってもいいんじゃね? ほら、例えばキャラクター用の服とか。可愛いペットの女の娘とか」


「あー。欲望にまみれ、かわいい服をドロップするまで、くそっ弱いモンスターをぷちぷちするわけだねー。でも残念でした。モンスターなんぞ倒しても服などでませーん」


「ばかやろう。そんな衣食住の一つを奪ってどうする」


 カメラに向かってドヤ顔を決めるキモたん。そういえばまだカメラが回っていたんだな、と思いタッキーがようこをふと見るとようこが狐のお面をしていないのに気づいた。

 あー。ようこは顔出しNGだからこの動画使えないジャン、とため息を付くタッキー。

 いや、がんばって編集すればなんとかなるか?


「そのために生産職を用意してあるから、生産職のキャラ見つけてくださーぃ。うんえーの俺様からのお知らせでしたー」


「そ、そんな職業が……。始めからそれを知っていれば……」


 それを聞いてタッキーの妄想は膨らむ一方だった。

 ジアちゃんに女子こーせーのブレザーとか、バニーガールとか、バドワイザーとか、ナースとか、水着とか、それから公女だからこれぞプリセンスーって感じのバルキリー服とか、いやまてよメイドさんとかも――、いやいや、メイドさんはリナちゃんと被るからダメかな。


「だいたい、タッキーが悪いんだよ。このMMO-RPGの特徴は『魔王となってホンモノの異世界の住人で楽しむMMO-RPG』なんだから、それを魔王にならず魔法使いからといって、≪さいてーの魔王≫たるようこ様を使い魔なんかにするから成長要素がなくて始めからレベルマックスとか、職業選べないとかになるんだよ。ぶっちゃけタッキー、きみも半分以上運営(こっち)側なんだから、『楽しもう』というモチベーションじゃくて、『楽しませよう』ってモチベーションでないと困るんだがな? そして本音を言うとようこたんNTRしやがって赦せねぇ俺様ハーレムを返せ」


「ねーキモたん。僕がいつキモたんの彼女になったのかなー。踏まれたい? もしかしてもっと踏まれたいの? だいたいキモたんいまドナたんという彼女がいるんだから彼女に踏んでもらいなさい」


 キモたんをふみふみするようこ。恍惚とするキモたんがマジでキモい。

 しかし言ってきたことは比較的まともだった。


「確かにそう言われればそうだね。ようこは完全に運営側だし」


「理解していただければよろしい。ノメりこむ要素が足りないのは確かだと俺様も思うけどな。幾つか言ってみるがよい。そうすればようこ様が俺様をさらになじるから」


「よし、タッキーが幾つか言っている間、僕がキモたんを蔑みながら踏んであげるね。あぁ汚らわしい」


 なお、キモたんはずっと上から目線の発言だが、ようこに情け容赦なく踏みにじられており、限りなくリアルの目線は下だ。こんどは腰辺りをお願いします、とかいっているキモたんにだんだんむかついてきたタッキーは、ようこの錯綜したふみふみ地獄からキモたんを救うべく4つの要素を挙げた。


「楽しめる、のめり込む要素というと――


1つ目。運営イベントがぜんぜんない。せめて分かりやすいクエストとか作ろうぜ。

2つ目。魔王達を欲望にまみれの行動を起こさせる原動力となるものがない。いわゆる『物欲センサー』だね。さっきも言った服とか、かわいい女の子のペットキャラとかか、びっくりするような性能の武器とか。

3つ目。遊べない。俺が学校から帰ってログインするとジアちゃんいつも寝てる。

4つ目。まともな帝国内の設定がない。ジアちゃんち、策謀を身上とする策略一家で戦略シミュレーションとかもできそうな雰囲気なのに、帝国内の状況すらてきとーで設定がいいかげん。


とかかなー」


「うわタッキー出しすぎ。べとべとになっちゃうのです」


「ま、俺様が一つづつ解決していくとしますか」


 キモたんの目があやしく光るが、やっぱりキモかった……。




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「えー、ジア様におかれましてはいよいよご機嫌麗しく――」


 みんなから忘れさられたドナたんは、相変わらず画面上のジアと意味のない会話を続けていた。


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