彼女なら俺の隣で寝ているよ
午後1時――
「ここは……、どこ? 私は確か自室で寝ていたはずなのに――」
見慣れない寝室。
狭い部屋。
ジアは何故か焦点の合わない目をなんとか元に戻そうとする。
気だるい。
頭が重い感じがする。
しばらくすると頭がはっきりし始めた。
そしてジア姫はその場所について気づく。
その小さな部屋に、ジアは見覚えがあった。
(!? まさか、ここは私を勇者として召喚した――)
そこは柔らかなベットの上だ。
隣にどことなくみたことがあるような男が寝ていた。
そしてジアは自分が全裸であることに気づく。
「ん。なに、ようこ……。ん?」
「――」
その男が寝返りを打ち、ジアの身体にがっつり触れる。
寝ぼけた男は、その反動で気づいたのか目を覚ました。
「なんじゃこりゃぁぁ――――――」
タッキーの叫びが響き渡った。
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ジアは裸の身体をタッキーから隠すため、手近の毛布を引っ張った。
毛布は引き寄せらる。
それはさきほどまでタッキーが使っていた毛布だ。
反動でタッキーはベットからジアと反対側に落ちた。タッキーがジアの全裸にびびり逃げたこともあるが……。
ジアはその毛布から少し温かみが感じた。
「いててー」
タッキーは苦痛を声にする。
何か言わないと――。ジアは焦る。
このままだといろいろ大変な目に会うことは目に見えている。
そう、大変な目だ。
そんなとき、GM3が言っていたタッキーを動揺させるセリフを思い出した。
「め、めりーくります?」
「なんでやねん! まだ3ヶ月も先だ」
確かにタッキーは動揺していた。ジアはたたみ掛ける。
「クリスマスプレゼントぉ!?」
「直球すぎるわ! だいたいジアちゃんなんでここに来たの?」
「え、えーと……。分からない……。私の方が知りたいわ」
記憶を思い出すように頭を振りながらジアは答えた。
タッキーから見るとその動作はジアがとぼけているようも見える。
ちなみにスラッシュ公国では≪鶯≫の助言によりクリスマス用に恋人たち専用のホテルを建築中だ。
なんでもクリスマスらしくイルミネーションやら回転するベットやらいろいろな趣向が凝らしてあるらしい。残り3ヶ月で施工間に合うんだろうか。
「まさか、異世界でHP0になったからここに来たとか言わないよね?
そういう小ネタはいらないからさぁ」
ちらりとタッキーは自分のノートPCを見る。
電源が入っていないので現在の状況は確認できない。
「私……、死んだ??」
「とりあえず来るのはいいけど全裸はやめて。だいたいどこで脱いだんだよ。ジアちゃん可愛すぎて俺すげー目のやり場に困るんだからさー。これでも穿いて!」
タッキーはジアに手近にあった自分のジャージを投げ手渡すと、ジアの方は見ないようしてノートPCを起動、そして「魔王になろう」を立ち上げる。
「あー。やっぱジアちゃん死んでるねー」
ジアはノートPC――ジアには得たいの知れない魔導器に見える――を見る。
ディスプレイの中のさらに小さなウィンドウには自室の映像と、死んで転移したことを示す黄色いメッセージが表示されていた。
「これは――」
さらにはいつもの見慣れたスキル使い用のウィンドウも見える。
魔法使いはこの魔導器を通じて私たちの世界を見れているのか――
ジアは確かにここが天上の異世界であることを思い知らされた。
「だいだいジアちゃんどこから入ってきたのよ。
どうせどっかで誰か待機してたりするんじゃない?
まったく、前回の魔法陣のときといい今回といい――
あ。そうか! 前回といえばジアちゃんはようこの知り合いなんだから、まずはようこのスマートフォンにTELして助けを求めりゃいいじゃないか?!」
タッキーは机からスマートフォンを拾い上げさっそくようこにTELした。
ジアにはこれもナゾの魔導器にしか見えない。
どこかに連絡しようとしているのか。ようこというのは確かチャットウィンドウ上のGM3だったはずだ。
確か、仮面を被っていた狐の亜人。
「もしもしー。ようこ?」
「はいはいー。七日野ですが。って、うわー。タッキーだー。なにげにタッキーからTELって始めてじゃない? うれしーのです」
ようこへのTELはすぐに繋がった。
「なぁ、ようこ」
「なぁに、タッキー」
「ジアちゃん今この部屋にいるんだが、どうすれば?」
「は? へ? なんでまた?」
「いやぁ、どうもジアちゃんゲーム上で死んだみたいでさ-。きっと魔法陣の関係でセーブがここになってるからとかいって来ちゃったんじゃない? まったく一発ネタで驚かそうってだけで、なんでそこまで魔王になろうにのめりこんで捨て身になれるのか――、ってようことジアちゃん、今回グルじゃないんだね?」
タッキーは横目でジアを見ると、ジアは何が面白いのか、ノートPC上のゲーム画面を真剣に見ていた。画面に手を触れてボタンを押そうとしている。
ジアちゃん、そこはマウスでクリックしないと押せませんよ。
と、タッキーは突っ込みを入れたくなったが今はようことTEL中だ。
「それなら。『魔王になろう』を立ち上げて≪瞬間転移≫を押せば、あの世界に戻れるのです?」
「――そんなゲームじゃあるまいし」
「――本人はそう思ってないかもよ?
この娘。ゲームの世界に引きこもってこっちの世界に来ない可愛そうな娘、って設定だから。勇気を持ってめずらしくこっちに来たんだからやさしくしてあげないとー」
「いや、だからっていきなり全裸で男の前とか勇気ありすぎるは!
さっさと家に帰って貰うにはどうすれば良い?」
「じゃぁ、ジアちゃんに画面見せながら≪瞬間転移≫すればいいじゃない。
そうすればジアちゃんも納得して帰ってもらえるじゃん。って設定だけど」
「設定かよ。とかいっている間にポチっとな」
タッキーはマウスで≪瞬間転移≫のアイコンを無慈悲にクリックした。
その瞬間、目の前にいたジアの姿が搔き消えた。
「あれ? どうやって」
ジャージの服だけが落ちている。あたかも消え落ちたみたいに。
「なぁようこ、あ、ありのまま今起こった事を話すぜ。なんか今すげー早業をみた」
「ん? どったのタッキー」
「いや、ボタンクリックした瞬間にジアちゃん消えたんだが」
「へー。信じられなーぃ(棒 で、さっきの続きなんだけど、」
何かの夢だったのか、しかしジャージには温かみがある。
証拠を探せば彼女の髪の毛の1、2本くらいは出てくるかもしれない。
「ジアちゃんさっきは死んじゃったからこっちに来たんだよね?
今の状態で帰したら――、また殺されない?」




