妖精帝国の攫われ姫(後編)
二週前――
ジアはエアリに攫われ、妖精帝国の皇女がいる謁見の間に向かう。
その周りは妖精だらけであったが、一人だけニンゲンの剣士の姿があった。
そのことをフシギに思うジア。
その剣士の肩に止まる妖精族のエアリ。
その剣士にはステータスウィンドウが見えた。
そのウィンドウの情報を詳しく見ようとしたとき、エアリとは別の妖精族から声を掛けられる。
蝶の羽を持つ、他の妖精族とは異なる黒のドレスの妖精族。
ひときわ存在感を放つ妖気。
「ようこそ。我が妖精帝国へ。ニンゲンの国の姫よ」
妖精帝国の皇女、リカーニャ・キルデワルド。
「それで、どうして私を攫ったりしたのでしょうか?」
問いかけるジア。
皇女は頷いた。
「姫はスキルというものは知っているかな?」
「詳しくは知りません。でも使うことはできます。
私は空間という魔法体系の――」
「あぁ、そちらには要はない」
「?」
「我々が欲しているのは、勇者のスキルさな。
アカウントを付与するスキルがあるという、
それを私たちに掛けてはくれないか?
そうすれ姫を問題なくもとの場所に返してあげるし、
相当の見返りを……」
「見返りなら……。近く発生する私の隣国のスラッシュ王国との戦争に、一緒に戦いに行くことはできませんか?」
ジアのその言葉にエアリの傍らにいた剣士が反応する。
「ほう、妖精帝国の力を使ってスラッシュ王国を滅ぼそうというわけか?」
「いいえ。妖精帝国と私たちエンパイヤ帝国をあわせてもスラッシュ王国には勝てないでしょう」
「……。つまり姫。キミは妖精族達に死ねと?」
「はい。スラッシュ王国には私と同じスキル持ちが最低一人はいます。
魔物と争い攻撃の力をつけたニンゲンが――」
周囲がざわめく。
ジアの周囲を囲むのは妖精族の中でも精鋭と呼ばれる妖精帝国近衛兵団。
視線が圧力となってジアを襲うが、ジアは耐え、そのまま続けた。
「おそらくエンパイヤ帝国軍は全滅します。みんな死んでしまうのです。それを私は避けたいんです。だけど私が軍の中央に行き、聖戦モードを宣言すれば、全滅したとしても各人が故郷とする場所に飛ばされるだけになる。たとえ中央でなくても、近くで場所が分かりさえすれば魔術で中央に飛ぶことも可能です。そうすれば――」
「ははは。何を言うか。そんなことをしなくても、いままさに俺らが姫に使わせようとしているアカウントを付与するスキルを貴様らエンパイヤ帝国の民に使わせれば済むだけだろう? スキル持ちの力は強大だ。3ヶ月も訓練させればスラッシュ王国など簡単に滅ぼせ――」
「それじゃダメなんです!」
「ほう?」
「それじゃ、今度はスラッシュ王国の人がみんな死んじゃうじゃないですか。それじゃ、変わらないんです」
ジアとその剣士はにらみ合う。
しかし、剣士は不意に笑い出した。
「何がおかしいのですの?」
「あぁ、おかしいね。
こんなに愉快なのはエアリと始めてダンジョンに行ったとき依頼だよ。
相分かった。
お膳立ては全てこちらでしてやろうじゃないか。
場所は国境地帯でいいか。
時間は――、姫、日時だけでもなんとか調整できるか?
妖精帝国への報酬は戦争前まで出来る限り妖精族達へスキル持ち化の呪文付与。
それから聖戦だろ?
せっかくなんだし、姫とスラッシュ王国に組みするスキル持ち同士戦おうぜ。
スラッシュ王国側が勝てばそうだな、姫は以後ニンゲンにスキル持ち化を行わないことを誓え。
姫さんが勝つならスラッシュ王国ごとき姫にくれてやろう。
こちらには奥の手もあるしな」
「そ、そんなこと、貴方が勝手に決められる分けないじゃない!」
「いや決められるね。俺がスラッシュ王国なんだから。
エアリ! どーせ、付与の呪文なんざMP最大消費系なんだからエアリのMP/SP回復呪文で常時回復させてやれ。
きびきび働かせんぞー」
「はーぃ(にっこり」
剣士であり、スラッシュ王国であり、そしてエアリの彼氏であるケインの依頼に、エアリは人の悪そうな顔をしてジアに近づいく。
「え。え!?? イヤ――」
ブラックな労働環境というものをジアは知った。




