決戦の時(前編)
両軍が両極に合いまみれる国境地帯。
空に暗雲が立ちこみ始める。
薄暗い空。
小さく雷の音が聞こえる。
そして響き渡る獣声。
天を見上げる兵士。
そこには1体のドラゴンがいた。
動揺するエンパイヤ帝国の兵士たち。
ドラゴンの背には一人の女性の姿。
その女性の頭には輝ける、大きな呪術文字のエンブレム。
呪術文字は赤、白、青のトリコロール。散髪屋のように回転していた。
『呼々、愚かなるエンパイヤ帝国のものどもよ。
我と手を組む王国を攻めるとは……
唯では殺さん。
魔王たるこのロロ・アスター・イェンヘーが厄災をその身に受けて、
苦しみ抜いて死ぬといい…』
メッセージウィンドウに流れる紫のメッセージ。
ロロ・アスターが放つそれはマップ全体に流れる強制発言。
それは、エンパイヤ帝国軍全兵士の脳に直接声が響くのだ。
エンパイヤ帝国兵士は一気に動揺した。
GM3 :「あ。ロロたんだ。ロロたんキター、なのです!」
タッキー:「こぉらぁぁ。うんえーぃ! お前らなにやってんだよ! 遊びすぎだろうが」
GM3 :「ちなみにロロたんはエアリちゃんの魔王なのですよ」
タッキー:「うわぁ。どうでもいい情報キター」
GM3 :「えー。どうでもよくないよー」
そして流れ出す、シューベルト管弦楽『魔王』。
それを根こそぎ書き換えたメタル調の死刑執行用BGM。
タッキー:「あかん。これあかんやつや。ジアちゃん死ぬ、絶対死ぬぜこれ」
ワイバーンに乗る魔王たるロロ・アスター・イェンヘー。
左手を振り上げると禍々しいほどの赤い光が生み出され、国境マップ一円が赤に染め上がる。
空間にびっしりと埋まる呪術文字。
エンパイヤ帝国の兵士の混乱は一気にピークに達する。
誰もが生きて帰れない。魔王の妖気に圧倒され、皆がそう感じた。
「静まれ! 静まらんか!」
将軍ソラ・ウェイバーはエンパイヤ帝国軍の中央で叫ぶ。
動揺は止まらない。
そこへ、一人の少女が現れた。
『我が名は! 公式を唄う勇者! ジア・スルターナ・アフタースクール!』
その声はフシギと周囲に響きわたる。
その声も、メッセージウィンドウに流れる紫のメッセージ。
いま、新たなる強制発言が発せられようとしていた。
(いま、この少女は自分のことを勇者と名乗ったのか…)
兵士たちにかすかな希望が見えた。
「お主、いつのまに…」
混乱に乗じて現れたジアに将軍ソラ・ウェイバーが声を掛ける。
ジアはその声を無視。
「 (お主、何をする気だ――)」
軍中央に飛んだのは≪瞬間転移≫。
そのカラクリを伝えず左手で魔王に対し鉄器のツルギを抜き高く掲げる。
ジアの持つ鉄器のツルギには不安なのか震えが見えた。
だが、ジアは役割を演じようと必死にその震えを押さえ込む。
長き戦争のため、戦費の支払いに追われた貴族達がオリハルコンや金銀の装飾品を売り、見返りにわずかな鉄の装飾品を貰い受けたことから始まり、しかしそれを誇りとして鉄器を掲げ、いつしかその価値が、数多の人の想いがつのりツルギと成す。
なまくらの、ろくに人も殺せぬ儀式剣――
それが、スルターナ公国の国旗章――
『妖精帝国の皇女リカーニャの名において!
太古より受け継がれし対魔王の詠唱をここに唄う――
今よりこの全地域を聖戦モードへと移行させん!
今から三時間。我ら死を知らぬ不滅の軍隊!
何人なりと、何を用いたとしても、倒れることはありえない!
覚悟せよ!
魔王ロロ・アスター・イェンヘー!』
ジアの右手が世界の何かに触れた。
ツルギからは青白い光があふれ、赤に染め上がった世界が洗われていく。
「おぉぉぉー」
その光景に兵士達はどよめく。
だが、魔王ロロ・アスターは――
『どんな小細工をしようと無駄だ!
喰らえ!
世界を破滅へと導く焼き尽くす炎!
≪熱核爆撃弾≫!!』
上空から圧倒的な妖気と共に強大な力が大地を砕く力が轟いた。




