1騎見つけたら30騎はいると思おう妖精さん
「どうしよう……」
結局ゴブリン討伐の報告はフランツ他の剣士にお願いし (冒険者ポイントはフランツ達に入るだろう)、そのまま屋敷に瞬間転移して帰るジアとリナ。
ジアはそのままベットに倒れこんだ。
直ぐに睡魔が襲ってくる。
しかし眠った時間帯は夜にはまだ早い頃であり、夜中に目が覚めてしまった。
そして気づく。
ジアの周りに10騎を超える妖精族が飛び回っていることを。
「く――」
体が驚きで硬直する。
妖精族とは北の大森林を住処とする知能を持った体長約30cm前後の亜人のことを言う。
縄張り意識が強く、妖精帝国に入りしニンゲンは精霊魔法使いなどの一部を除き速やかに排除するのが彼女らの心情だ。
非常に好戦的な種族であることが知られていたが、逆に言えば大森林以外の縄張りでない部分にはほとんど干渉しない。
それが今までの妖精族の基本スタイルだったのだが。
それが、なぜ?
ジアは目を凝らすと1騎の妖精族にあるものを見つけた。
それは、ジアとリナ以外で始めて見るステータスバーであった。
『名前:エアリ
HP:982/982
MP:820/1240
SP:223/300
種族:妖精族
性別:♀
職業:精霊の巫女 (Script Healer) Base.Level.150 Job.Level.50
ジョイント:妖精族 Level.1
称号:妖精帝国南部第744歩哨部所属』『桃好きの浚われ姫』
「キミは……」
「こんばんわ」
そのステータスバーを持つ妖精族の体が一瞬消えたかと思うと次の瞬間、妖精族は麗しきエルフの姿に変身した。
エルフの特徴的な耳の長さが妖精族の時から同じであったことを考えれば、単に人並みに大きくなり、変わりに羽が消えたらエルフの姿に見えたというのが正しいのかもしれないが。
「貴方が、ジアさん? 勇者の――」
ごまかすことはできない。
ジアからエアリのステータスバーが見えるのであれば、当然エアリからもステータスバーが見えているはずだ。
ジアは頷いた。
「今日はお願いがあってやってきました。
ちょっと――
攫われて頂けませんか?」
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スルターナ公国の王、ワリィ・スルターナ・アフタースクールは頭を悩ませる。
確かにエンパイア帝国にとっては領土が広がるかもしれない。
しかしスルターナ公国としてはなんのメリットもないのだ。
戦場が自国の隣国であればエンパイア帝国軍に自国としても補給の協力をしなければならない。ほぼ無償で。
防衛費と称してエンパイア帝国に支払うべき費用も増大する。
戦費の代わりに軍を出せばその費用もお目こぼしを貰えるだろうが、スルターナ公国は基本的に軍を持たない。
本来軍にかけるべき費用をエンパイア帝国への貢ぎ品として勢力拡大に使っているのだ。
軍以外で貢献するにはスルターナ王国に間者を潜り込ませて情報を得るなどすることだが、平和ボケした公国が放つ間者はことごとく露見してしまっている。
そんなとき、突如して兵士からの緊急連絡があがった。
「申し上げます! 妖精手国の手の者と思われる地のゴーレムの大隊軍およそ200。スルターナの街で暴れております!」
「な、なんだと! いままでそんなことなかったのに! だいたい、いつ沸いたのだ!」
「分かりません。冒険者ギルドの手のものを借りて交戦をしておりますが、ゴーレムはほとんど冒険者を意に解しておりません。冒険者3人でゴーレム1体をなんとか足止めできるところ。現状3倍差では到底――」
縄張り意識の強い妖精族は、その領土たる大森林に手を出さない限り人畜無害。
それがいままでの常識だったのだ。
「誰か手を出したものがいるのか? やつらの目的はなんだ!」
「それが……」
「なんだ? 言え!」
「申し上げます! ジア公女の邸宅崩壊。応戦し何体かゴーレムを倒したものジア姫が攫われました!」
そこに新たな兵士が報告にやってくる。
「な、なんだと――」
ワリィ・スルターナ・アフタースクールは思わず立ち上がった。
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妖精帝国の大森林を駆ける地のゴーレム。
そのゴーレムにお姫様ダッコされるジア姫。
「ちょっと! やりすぎよ!」
姫は怒鳴る。声の大半は疾走することによって生じた風音でかき消されている。
「派手にって言ったのは姫さまでしょう!」
姫の肩に掴まるのは元の姿に戻った妖精族のエアリ。
地のゴーレムは単身1騎。土くれから作り出すゴーレムは必要なときに生成すればよい。
街を暴れまわったゴーレムは既に廃棄され、元の土くれに戻っている。
地のゴーレムと併走し、飛び回るのはエアリ以外の妖精族達。
飛んだ軌跡には金色の光の筋が走り、幻想的な光景を作り出している。
確かに攫われるにあたり、事を大きくしようといったのはジアだ。
攫われて、たとえ何かあったとしてもジアには≪瞬間転移≫のスキルがある。
いつだって逃げられる。身の危険はない。
そう判断すると今度は攫うといったこの妖精族に興味が沸く。
今は深夜で魔法使いの反応はないが。
もしかしたら、拉致と叫んでいたGMや魔法使いの陰謀かもしれない。
であれば。
特に何もなく突如して失踪して家出等と間違えられお父様に怒られる。
といった自体よりも事件とはっきり分かった方が……
などと思ったのが間違いだったのだ。
「しかしあのリナってメイド、どうなってるのよ。地のゴーレム30体が瞬殺って」
「そりゃ……」
「確かに、スキル持ちだものね! あのトリッキーな動きは盗賊スキル?」
さらに追跡して地を走るのはメイドのリナ。
あの時点でジアが止めなければあれだけゴーレムがいたとしても問題とならず処置していたことだろう。
そのリナは現在姿を完全に隠蔽しており、妖精族達からも見えない。ジアからはステータスバーが見ていたが。
「それで、一体私を攫って何をしようというの?」
「それは……、我が国の帝女様に合ってから話をするよ」
「妖精帝国――」
「えぇ、そうよ」




