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ガールズラブ注意です。
そして、いつもより長いです。
前世の高校生の頃、私は生涯で最初で最後の恋をした。
人との関わりや自分の人生でさえ興味は持てなかった私が、その人のお陰で世界は色付いた。
思い出すだけで涙が出るような恋を思い出す。
深々と雪が降り積もり、骨や内臓まで震えるような寒い冬の日に出会った。
朝の早い時間、バイト先の事務所にいつもは点いてない明かりに首を傾げながらも中に入ると彼女は居た。
小柄で華奢な体、人懐っこい雰囲気。
高くも不愉快にならない、私のやっていた接客業には適切であろう声。
なにより、彼女は可愛らしい少女だった。
まるで私と正反対だった。
挨拶を交わし、聞けば同系列の他店から派遣された子だった。
同い年でも誕生日は数ヶ月彼女の方が早いことが分かり、なぜかお姉さん扱いを強制された。
人付き合いが苦手な私が、仕事を開始するまで不思議と会話が出来た。
それから、仲良くなるのに時間はかからなかった。
初対面でも仲良く出来、仕事熱心で誰とでも別け隔てなく接し、常に笑顔を絶やさない。
彼女の周りには常に人がいて、笑い声が聞こえてくる。
ことごとく私とは正反対だった。
腫れ物扱いされていたことや接客業がわりに合わないと感じていたもあり、辞めようか悩んでいたが彼女が私を引き留めた。
「鞠はね、自己評価が低いのよ」
誰かに評価してもらったことも、褒めれたこともなかった。
「黙々と仕事をこなしながら誰かのフォローもしてるでしょ。真面目で仕事にちゃんと向き合ってる。私は鞠を尊敬してるよ」
尊敬しているのは私の方だ。
私にない魅了を持った、今まで出会った中で一番近くまで歩み寄ってくれた、私を見てくれている人。
「それからね、鞠は私よりも身長が高くてスタイルも良いんだから、自信持ちなよ」
私と彼女では確かに体格は違うが、小柄で女の子らしい彼女の方が私は羨ましく思った。
「女は女優なの。演じるのよ、なりたい自分を」
私も、彼女のようになれるだろうか。
この頃から私の心に、恋の片鱗をうかがわせ始めたんだと思う。
彼女の助言を受けてから、私はなりたい自分を演じた。
彼女同様とは言えないが、周りの目も変わり、全てがうまく周り始めた。
友達と呼べるものもできた。
そして、より彼女とも親密になれた。
色んな表情を見せる彼女が眩しかった。
私にだけ弱音を吐く彼女を支えたかった。
姿を見るだけで、演じるんじゃない心から笑顔になれた。
彼女の為なら何でも出来る気がした。
彼女の剣となり、盾となれるのならば、この命でさえ捧げたかった。
彼女の為に死ねるのなら、悔いはないと断言出来るだろう程に。
それでも、彼女と私は親友で、彼女曰く姉妹だった。
彼女は美少年が好きだった。
なんとなく、彼女と恋が出来たらと思ったが、恋なんて、夢のまた夢。
好きだという自覚もないまま、醜い私は醜く嫉妬した。
私が美しければ、私が男ならば、私が美少年ならば。
ならば、ならばともしもを思い浮かべては現実との差が悲しかった。
美少年に固執し始めたのはこの時からだ。
それから月日が経ち、私は短期大学、彼女は国立大学に合格した。
別々の高校ではあるが、同じ日に卒業式がある前日、私達はバイト帰りに約束をした。
卒業式が終わったら、桜を見に行こうと。
会う約束をしたその時、なぜか私は「好きだ」と言ってしまった。
今言わなければならない気がしたのだ。
そして、恋心を確実に確信した時だった。
彼女は驚きながらも「私も」と言ってくれた。
彼女は以前から私に好きだと言ってくれてはいたが、友達や妹としての好きだとは知っていた。
それでも、彼女への思いを自覚していなかったとはいえ、軽々しく言えなかった私はその都度流していた。
この時の返事も妹としてだとは分かっていた。
だけど、明日、もう一度告白しようと思っていた。
一人の人として好きだと。
だから、笑顔で彼女と笑いあった。
泣きたくなるのを押し殺した、私の笑顔は演じきれていただろうか。
…これが、彼女と会った最後の日だった。
翌日、彼女は失踪した。
正確には私と別れたあと、帰宅した後に自室から居なくなった。
私は、この春から変わらなくなった。
色褪せた世界は私を置いていった。
どんな人も彼女には敵わない。
心に居るのは彼女だけ。
あの時、告白しなければ、私が美少年だったならば。
後悔と切なさが心を締め付ける。
そして、私は死んでしまった。
また彼女に出会うことなく。
彼女の笑顔を見ることもなく。
今の私も、捕らわれているのだろうか。
思い出した時には、一筋の涙が流れた。




