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「基本、魔法というのは魔力の流れを体で覚えてから行うものなんですの」
私は今、アリエルに魔法を教えてもらっている。
淡い水色のワンピースに身を包んだ彼女は、中身はアレだが外見は儚げな美女である。
私も半袖のシャツにハーフパンツで夏仕様だ。
「ですが、生活魔法というのはあくまで補助の為の魔法ですの。“マナ”と呼ばれる空気中の僅かな魔力で行うので威力も小さければ、攻撃をするまでの魔力もありませんわ。ですので、魔力の流れを体で覚える必要もありませんの」
「人に攻撃しようとするとキャンセルされるのはそれが理由なのですね」
「えぇ、そうですわ」
「ですが、マナが濃い場所だと生活魔法でも人に攻撃出来るのでは?」
「……」
アリエルが怪訝な顔をして私を見下ろす。
ん?変なこと言ったかな?
「…そういうところでも生活魔法の威力というのは限りがありますわ。悪くても、ちょっとした火傷や打撲程度ですわ」
「なるほど。そういうものなんですね」
「そういうものなんですのよ」
その後は生活魔法を出して、私こんなの初めて~というのリアクションをしたりした。
そこでもアリエルは再び怪訝な表情を見せた。
なんかまずったのかな。
演技には自信あったのにな。
「ウィル君。あなた、攻撃魔法まで使えますわね?」
「え…?」
「無理して喜んでいるように見えますし、何より魔法が安定していますわ。生活魔法を使おうとすると最初は威力が大きいか小さいんですの。マナが濃いという表現も、マナが濃い場所があると知っているのも知らなければ分からないことですわ」
「えっと…ひ、秘密にしてもらえますか?」
私は攻撃魔法を使えるのを言ってしまった。
また、隠れて本を読んでいたのも言ってしまった。
マリちゃんや干渉魔法のことは言わなかったが。
「前から努力出来る才能があったのですのね。もう!最初は私が魔法を教えたかったんですのよっ?」
アリエルは左手を腰に当て、右手でデコピンをして「めっ!」と言うとぷりぷりと怒る。
ちょっとデコピン痛いです。アリエルさんや。
しかし、分かる人には分かるもんなんだねぇ。
と考えていると、前にもそういう子供がいたんだとか。
だったら良いじゃない。
「そういう問題じゃありませんわ。まだ魔法を使うことの恐ろしさを知らない内に使えてしまうと攻撃的な性格になってしまうのですわ。それに、魔法を使用して火事になってしまったり、その子供自身が死んでしまうことがあるんですわ」
アリエルは真面目な顔をしてくる。
うーん、そっか。
「ごめんなさい」
「ウィル君には今日から魔法を使うことがどんなことか教えますから、覚悟してくださいまし」
気持ちの面で最初から学べる良い機会だしね。
よろしくお願いします、アリエルさん。




