八夜
桜木神父は部屋の奥のほうから古い一冊の本を持ってきた。
「まずは縦に書かれた文字からですね」
本を開くと指をさした。
「これのことだと思いますよ」
意味は皆さんも聞いたことのある言葉です。
「光あれ」
桜木神父によるとこの文字はヘブライ語で旧約聖書の最初の創世記に書かれた言葉だという。
次に手書きの書類をまとめてあるセピア色の封筒から一枚の紙を取り出した。
「そのロザリオはたぶんこれをモデルにした複製か、あるいはオリジナルかもしれませんね」
そこには私の拾ったロザリオと同じ言葉の書かれた銅版画のような絵が描かれている。
「何か特別なロザリオなんですか?」
私が神父に尋ねると頷きながら自分の持っているロザリオを取り出した。
「これは先々代の橘神父が生涯を費やして調べていた天草四郎のロザリオを復元したものだといわれています。しかし、正確な資料はないに等しく、同時代に日本に入ってきたロザリオを基に作ったものなんです」
私は歴史には興味がないが、天草四郎の名前ぐらいはわかる。
しかし、私は疑問に思った。モデルになったロザリオにある縦の文字は何で再現しなかったのだろう?
桜木神父に私の疑問をぶつけた。
「それはある特別な使命を持ったものだけに授けられるロザリオだからです」
「特別?」
「生涯をかけて信仰を広めることです」
今ではもう作られることもなくなり、存在しているのは数本ぐらいだという。桜木神父もバチカンに出向いたときに一度だけ本物を見たことがあるという。
「これはコピー?それともオリジナル?」
私は桜木神父に訪ねる。
「マリさんから聞いた話ではこのロザリオの近くで奇怪な現象を目撃したと聞きました。たぶん、本物ではないかと」
「本物には不思議な力があるということですか?」
神父は「はい」と答えた。
不思議な力の宿るロザリオ。
次は持ち主を探すこと。このロザリオは人間が所有しなければ奇怪現象が出ることがないとバチカンでも証明されているから。
さて、どうやって探そうか?




