九夜
教会で桜木神父が別れ際に行った。
「このロザリオは神のお導きであなたに辿り着いたのです。きっと、持ち主とあなたを結びつけることでしょう」
ロザリオの鎖が壊れていたが、マリの知り合いのシルバージュエリーショップで直してもらった。
首にかけてみる。
今までアクセサリーなど付けたことのない私には少し抵抗もあったが、金属独特の冷たい感触というよりは誰かの手が触れているような錯覚を感じていた。
マンションに戻るといつもの生活が戻ってきた。
ベランダに出て、半分にかけてしまった月にロザリオをかざしてみる。あの白い煙が出てくるかと期待してみたが、それは何の変化もなくそこにあった。
そんなロザリオが私の一部になり始めた頃、マリから電話があった。
「出たよ~」
第一声がそれだった。
詳しいことは店で話すといって、勝手に電話は切れてしまった。仕方がないのでマリの店へと出向くことにした。
店の着くとマリが目をきらめかせて待っていた。
「来た、来た。こっちだよ~」
手招きで店の裏の倉庫へと連れて行かれた。そこには例のドカのバイクがある。
マリが被せてあったカバーを取り去ると、真っ白に衣替えしたあのバイクが現れた。
「どうしたの」
私が訪ねるとマリは言った。
「この前、久々にハルの走りを見たら、やっぱりこの色にしなきゃと思って、速攻で塗り替えたんだ」
ここで言うハルとは私のことである。マリが話を続ける。
「実はこのバイクがちょっとおかしいことになったらしいんだ」
「おかしいこと?」
何のことだかわからない私にマリは順を追って説明した。
昨夜のことだという。店の従業員が自分のバイクを夜中までいじっていた。すると倉庫から突然、エンジン音が聞こえ始めたというのだ。




