十夜
ハーレー専門店だからハーレー以外のバイク音がするのは気になった。
もしかしたら、泥棒?などと思って倉庫を点検しに行ったらしい。
ときどき、バイクを盗もうとする輩がいるらしく、セキュリティーも万全にしている。
警報が鳴った痕跡もない。
すこし、おびえながら倉庫のドアを開くと音は突然消えてしまったという。
この倉庫の中でハーレー以外のバイクはこのドカしかない。
「というわけで、このドカ、ハルが引き取ってよ」
「えっ」
私は言葉を失った。
「だから、従業員が気味悪がっちゃってどうしょうもないのよ。どうせ、ハルにあげるつもりだったし、持ってって」
マリが私に対して太っ腹な理由は初めての出会いにある。そこそこ身長の高いマリだが、ネジの抜けた野郎ども7~8人に囲まれれば、どうしようもない。そんな場面に偶然、居合わせたのが私だった。それがマリとの始めての出会いだった。
マリはその頃はまだやんちゃをしていて、何人かと一緒にチームを組んでいた。
しかし、いつの世も女だけのチームはいちゃもんを付けられるものだ。
地元のヤバイ暴走族から嫌がらせを受けて挙句の果てマリ自身が標的となったのであった。
気丈なマリに男たちは切れて、ボコボコにされそうになった。
いや少しだけボコボコになったときに運悪く私が通りかかった。
その頃私は力に憧れて空手や柔道などなどいろいろと身に付けていた。ただ単に、力というものに憧れていただけだ。
誰かをやっつけようなどとは思ってもいなかった、つもりだった。
だが、致命的な欠点が私にはあった。情けというものが欠如していた。
マリを取り囲んでいた男共は人数×3ほどの骨が折れて地面に転がっていた。マリがとめなければ、その二倍は骨が折れていたかもしれない。
まあ、そんなこんなでマリと友達になり、チームに入ってバイクを乗り回して遊びだした。
敵対するやんちゃ坊主はことごとく病院送りになり、当時私が好んで白いコートを着ていたことから「ホワイトゴースト」の二つ名をもらってしまった。
まあ、遠い過去の話だ。




