六夜
久しぶりに乗るバイクは気持ちよかった。
周りの車は美術館のオブジェのように見えた。
右へ左へ。
気が付くとマリの姿は見えなくなっていた。
「まっ、いいか」
私は例の白い煙の立ち上った場所である高速出口のゼブラゾーンにバイクを止めた。
しばらくすると、マリのバイクの音が聞こえ出した。
私は先にバイクから降りて辺りを見回していた。
後ろからマリが声をかける。
「さすが、ホワイトゴースト。腕は落ちていないわね」
私はうなずくだけで、地面のほうに向けた視線はそのままだった。
衝突緩衝の水の入った容器の下で何かが光った。
近付いてみるとそこにはシルバーのロザリオが落ちていた。
雨が降ってきた。
マリと私は急いで高速を降りた。
近くにあるファミレスの地下駐車場にバイクを止める。
拾ったロザリオに興味があるとマリが言うので、食事を取りながらゆっくりとすることにした。
注文が済むとマリはロザリオを手にとり、裏返したり、指で感触を確かめたりしている。
「やっぱり似ている」
マリはロザリオをテーブルに置いていった。
「これ見たことあるの?」
マリはうなずくと自分の首に手を回した。取り外したのは似た形のロザリオ。
「どこで買ったの?」
私が尋ねるとマリは怒ったような顔でいった。
「違うわよ、これは本物のロザリオ。父が昔、教会の神父さんからもらったものよ」
目を丸くしながら聞いた。
「もしかして、カトリック?」
マリは当然という顔をして頷いた。マリの昔の姿を見た主、イエスはなんと嘆いたことだろう。




