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兵站王の戦記〜追放王子の無敗論理〜  作者: リリリリス
第1章 王国篇

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第18話:塩と鉄の浄化、そして次なる盤面

丘の上の司祭が絶望の悲鳴を上げ、二万の不死軍がただの腐肉の山へと変わった後。


エリュシオン討伐軍の兵士たちは、荒い息を吐きながらも、誰一人欠けることなく整然と陣形を維持していた。


「……前線の敵影、完全に消滅しました。我が軍の死傷者、ゼロです!」


ガイウスからの報告に、アルスは羊皮紙から目を離さずに小さく頷いた。


「当然だ。計算通りの補給と規格化された武器を与えられて、あの程度の案山子かかしに遅れをとるようなら、歯車として不良品だ」


アルスの冷酷な言葉とは裏腹に、兵士たちの間には歓喜と、自分たちを「絶対に死なせない」指揮官への絶対的な信頼が満ちていた。


だが、アルスの目はすでに戦闘の勝利など見てはいなかった。彼の視線は、足元に広がる黒く腐りきった大地に向けられていた。


「敵の頭数を減らしたところで、兵站の土台となる『農地』が死んだままではマイナス収支だ。……ロザリア、ネリアの輸送部隊は?」


「はい、殿下。すでに後方二キロの地点まで到着しておりますわ。見事な時間差ジャスト・イン・タイムです」


ロザリアが扇で指し示した街道の奥から、地響きを立てて巨大な荷馬車の群れがやってきた。

先頭の馬車の御者台で、ネリアが満面の笑みで手を振っている。


「マイ・ロード! 注文通り、大陸中の塩と鉄鉱石、それから浄化の魔石をかき集めてきたよ! 相場を釣り上げて買い占めたから、他国の連中が泣き喚いてたね!」


「ご苦労。……ガイウス、全軍に武器を『くわ』と『スコップ』に持ち替えさせろ。これより、第二フェーズに移行する」


アルスの命令に、兵士たちは一切の疑問を持たず、規格化された槍の刃を外し、補給部隊から受け取ったスコップのパーツを装着した。


軍隊が一瞬にして「巨大な土木作業集団」へと姿を変える。


「腐った土壌に塩と鉄鉱石を混ぜ込み、浄化の魔石を均等な間隔で埋設していく。俺の【掌握の刻印】が示す『指定座標』に、一ミリの狂いもなく配置しろ」


アルスが羊皮紙に素早く書き出した座標図面が、各部隊の隊長へと伝達される。


それは、魔法陣の知識などなくとも、ただ「指定された場所に、指定された物を埋める」だけで、大地を浄化する大規模な錬金術が起動する完璧なマニュアルだった。


「ひ、ひぃぃ……バケモノめ……お前らは、人間の皮を被った機械か……ッ!」


腰を抜かし、泥まみれになって逃げようとしていた邪神教団の司祭が、ガイウスに襟首を掴まれて宙吊りにされた。


「殿下、このゴミはどうしますか。尋問しますか?」


「不要だ。教団の拠点の位置なら、すでに把握している」


アルスは右手の【掌握の刻印】を見つめた。


王国全土を覆うマップ。そこには、この南部平野と同じように「周囲の物資を不自然に消滅させている」巨大な空白地帯ブラックホールが、あと三箇所存在していた。


「東部の鉱山都市、西部の水上要塞、そして……北の大森林。ここから先は、ただのゾンビ退治では済まない。地形による物流の阻害を突破するための『新たなパーツ』が必要になる」


アルスは司祭を一瞥し、冷酷に言い放った。


「そいつは燃やして肥料にでもしろ。……俺の国を荒らした害虫どもを、根こそぎ駆除しに行くぞ」


圧倒的な武力ではなく、圧倒的な「作業効率」と「兵站網」による反撃。


規格化された軍隊が、腐りゆく国家を強引に再建していく進撃が始まった。

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