007/100 シャルトリューズ
——うーん、思いつかない。かわいい名前ってどんな感じだろう。花の名前とか食べ物の名前かな? 僕は小一時間悩んでいる。
「ご主人さまぁー。まーだーでーすーかー!?」
「えっと、ごめん。もうちょっと考えてもいいかな。他人に名前をつけることってあんまりなくて」
って人に名前をつけることなんて子供でも生まれないかぎりないか……そういえば拾った猫に名前をつけたことがあったな。
「た・に・ん、じゃないですよ! ご主人様はレディーの気持ちも解らない失礼な野郎です。もうあたしとご主人様は一心同体なんですからね! 死ぬまでずっと一緒なんですよ!?」
妖精さんはとっても怒っている。
「うっ……ご、ごめん」
僕は、その真剣な眼差しを直視できない。そうだよな、ちゃんと妖精さんとこれから向き合っていかなきゃ。
髪の毛の色は黄緑。瞳の色も黄緑。着てる服も……黄緑。それぞれ違う種の黄緑だけど……この子よく見るとだいたい黄緑だ!
よし決めた。
「妖精さん! 君の名前は、シャルトリューズ!」
——あれ、反応がない。妖精さんを見ると俯き震えている。怒ってる? やっぱり気に入ってくれなかったのかな……
「か、かわゆいぃ! 貴族みたいですわぁ! これまで、パンジーとかハッピーとかアホみたいな名前ばかり……しゃるとりゅ〜ず……かわゆす。過去最高のご主人様ですわ!!」
う、うん。よかった! 気に入ってもらえたみたいだ!
「じゃあシャルル、これからよろしくね」
「しゃるるぅ!? こ、これがニックネームというやつですね——ロングネームの者しか会得できないという人界の奥義。一生ついていきます!ご主人様ぁ!」
よ、よく解らないけど喜んでもらえてよかった。なんか……ちょっと怖いけどこれから大丈夫かな。
「それじゃ、再構築の能力について簡単にそして丁寧に、ご説明しますね! 恩恵で発現した能力は、魔法ではありません。生命力を使うので、なんと魔力0のご主人様でもばっちり使えるのです!」
いちいち傷つくなぁ、悪気はないんだろうけど。
「恩恵の力はランクが上昇することによってどんどん解放されていきます。Gランクのご主人様が使えるのは同族蘇生という力だけなんですけど、死んだ人を蘇生することができます!」
Gランクの僕でも蘇生が使えるのはすごいな。
「この世界には蘇生の魔法や薬は存在してないのに、さすが神様の恩恵の力だね」
シャルルは、えっへんと誇らしげに続ける。
「さらにご主人様が成長すれば、Fランクで他族蘇生、Eランクで物質構築が解放されます! かわいいエルフを蘇生したり、伝説の剣や庭園つきの大豪邸だって構築して思うがままに人生を満喫できますよ!」
「う、うん」
ここぞの売りみたいに説明してくれてるけど、あんまり興味ないな……
「この能力の特徴は、自分と近しい構造をしているほど構築しやすく、遠いほど難易度が高くなる特性を持つんですが、ご主人様はがんばってもEランク止まり。っぽい顔をしてるので、この先は割愛しますね!」
割愛……習得できないかもしれないけど気になる。あとがんばってもEランク止まり。っぽい顔ってどういう顔だよ。
整理すると同族蘇生っていうのは人の蘇生、他族蘇生は人以外の種族の蘇生、物質構築は家とか武器を構築できるのか……戦えない僕にランクアップできるかは未だわからないけど、頑張る価値はある。
でも……さすが神様の恩恵だ。
ありがとう神様。
「シャルルもありがとう。それで、蘇生はどうすれば使えるの?」
待ってましたとばかりにシャルル。
「とっても簡単です! まず、蘇生したい者の名前と容姿を思い浮かべます! そして、あたしを肩にちょこっと乗せて、再構築!! ってかっこよくいい放てばオッケーですよ!」
かっこよくする必要はなさそうだな。
「ご主人様、早速誰かを蘇生してみましょうよ!」
——誰を最初に蘇生すべきなんだろう。
「うーん、やっぱり最初は国王様かな?」
「ちょっと待ったー! こんな深い森の中でじいさん蘇生してどうするんですかー!!!」
「そっか、じゃあ城の食堂で働いてた給仕のニーナちゃんかな」
「こらー! 食事は大事だけど、今じゃなーい! ご主人様は戦えないんだから剣士とか魔法使いとかあるでしょ!」
「ははっ、そうだね」
「あと、ある程度、面識のある人にしてくださいね! 復活してから事情説明して自己紹介してとか! め・ん・ど・く・さ・い・ん・でー!!!」




