006/100 妖精さん
——僕は先ほどの泉に来ていた。
いろんなことが一気に起こりすぎてまったく整理できていない。——だけどここはなんだか静かで少し落ち着く。
最初はわからなかったけど、月明かりと泉上を舞う色とりどりの光虫達の共演が幻想的な場所だ。
その景色を見ているとよくベア姉と夜中散歩した城の中庭を思い出す。ベア姉やみんなと過ごしたあの毎日を取り戻したい。それができるのはもう……僕だけだ。
——神様にもらった恩恵の力。
神様はいっていた、力の発現には代償が伴うと。ある者は視力を失い、またある者は四肢を失ったらしい。
何を失うかは、発現した力の強さで変わるためわからない。力を手に入れても、代償によっては僕がおかしくなるかもしれない——不安で押しつぶされそうだ。
……でも僕にしかできないことなんだ。やるしかない。
両膝をつき、手を合わせ、世界で一番かわいい神様のことを思い浮かべ。敬愛し、自分の中にある願いを強く念じることで能力が発現するらしい……
神様の翼に包まれていた時に、恩恵とともに神様が教えてくれたこと。意図的な装飾がついてることくらい僕でもわかる……
きっと、いざ本番になって怖気づく僕への——神様なりのやさしさだ。といい聞かせた。——お茶目な神様、また会えるかな。僕は意を決して膝をつき、そして強く念じた。
——ベア姉……ベアトリス・アインス・イヴァーリスを蘇らせる!!
体から虹色の光が溢れ出し、無数の光線となって僕の周りを飛び回る。
徐々に光線は一つの光球へと集約されていく。
そしてその光球は目の前で弾け、星が誕生したような眩い輝きを放つ。
僕は眩しくて腕で目を覆った——
「やっほー! 選ばれたのは、あったしだーやったぜー! イェイイェーイ!」
え? 一体何が起こったんだ、まさか失敗した? 目の前を大はしゃぎしている妖精が飛び回っている。まさか……これが発現した能力なの?
「……えっと、君は誰なんだい?」
「初めまして! あたしがご主人様に発現した恩恵です!」
「そ、そうなんだ。僕は恩恵を受け取ることに失敗したってことかな?」
「失敗なんてとんでもない、大成功中の大成功ですよっ! あたしの名前わぁーって、名前はないんで後でつけてください! 先にご主人様に発現した能力について説明しますね!」
今までに見ないテンションの子だな。
「ご主人様に発現した能力はー再構築ーの力です。創造や破壊、維持、三神の持つ恩恵と並ぶSS級の恩恵ですよ!」
腰に両手を当て、両足もピィーンと伸ばし自信満々に妖精さんはそういって、ルンルンで僕の周りを飛び回ってる。
しばし飛び回ると妖精さんが、ぴたっと動きを止めた。
そして僕の目をじーっと覗き込んできた。そのルーペはどこからだしたの?
「えーっと、ですが……残念ながらご主人様。ご主人様のランクでは能力の全てを引き出すことができないようです……」
両手両足を棒のようにぶら下げ、さらに紫のどんよりが妖精さんから出ている。
そのテンションの落差が余計に僕を傷つけるからやめてほしい。
「ちょっと、ご主人様! なんでこんなにランクが低いんですかー! 普通は恩恵を受ける人は大抵、大英雄級って決まってるんですよ! ちょっとー神様、聞こえますー? 何かの間違いですかー!?」
ランクというのはこの世界の能力差別の権化だ。腕力、器用、耐久、体力、俊敏、生命、魔法、精神、魅力、幸運。この十項目を魔力で数値化し平均化したものをランクという。
そして数値の大きさよってGランクからSSSランクの十段階で評価される。
ちなみに僕は最低ランク……恩恵を受けて強くなった気でいた自分が恥ずかしくなった。
「えっと、ごめん妖精さん。僕はただの伝令係で、戦ったりしたことはないんだ。でも僕は、自分のできる限りのことをやりたい。神様との約束なんだ、この世界で生きていくこと。そして、王国のみんなとの毎日を取り戻したいんだ。——それが僕の願い」
僕は真剣に伝えた。
「妖精さん、こんな僕だけど手伝ってくれるかい?」
妖精さんはとても悩んでいる素振りを見せる。
「うーん、わかりました。ご主人様がそこまでいうなら! ずっと神様の中で眠っているよりかは、数千倍ましだし。——落ちこぼれのご主人様をあたしの力でなんとかする物語も悪くなーい。……と割り切りましょう! その代わり……」
妖精さんはもじもじ、もじもじして。
「あたしにかっわいい名前、つけてくださいね!」
と笑い飛ばしてくれた。




