004/100 神様の恩恵
「アルト、よく生き残ってくれたね。君が死んでいたら、人が地上から居なくなってしまっていた——そうなると、もう一度あの規模まで繁栄させるにはかなりの年月を費やさなければならないところだったよ」
「僕は……生き残りたくなかった」
相手が誰なのか確認することもなく、僕は三角座りで泣いたまま返ことをした。
「私にとってはね、君が生き残ってくれた——それがとっても大事なことなんだ。心の底からお礼をいうよ、ありがとう」
僕は返こともせず、ただうずくまったままだ。
少女は気にせず喋り続けた。
「ふふ、君は本当に人らしい人だね、アルト——確かに君は弱い。あのまま、何もせず、ただ殺されるだけの生き物であれば、私も滅びの道が正解なのかもしれないと思った……でも違った!」
少女は白い面に降り立つと、少しずつ僕に近づいてきた。
「君はあの凶悪な魔族に剣を持ち、立ち向かったんだ! 私はとても誇らしく感じたよ。だから私は、人にもう一度チャンスを与えようと思うんだ」
少女は僕の頭に優しく手を乗せた。
「もし、お姉さんを蘇らせることができるとしたら、君は私の望みを一つ聞いてくれるかい?」
僕は少し可笑しくなって涙を拭きながら顔を上げ返ことをした。
「変なことをいうんだね。一度死んだ者を蘇らせる術は、——この世界には存在しないんだよ」
「ふふ、変なことをいってるのは君だよ? だって私、神様だもの」
少女は大人気なく、そしてとても自慢げにそういった。
「ええっー! 神様!?」
僕はとっさに後方へと飛び退き、流れるような動きで土下座をする。べっ、別に土下座することに慣れている……訳じゃないからね。
僕のリアクションに気分を良くしたのか神様もまんざらでもない顔……いや、すでに少しニヤけているだろうか。
「よいよいー、これまでの無礼は許そうー。顔を上げてくれないかーい」
完全にニヤニヤしていた。
「すみません神様、これまでの非礼をお詫びします! 僕、神様って初めて見ました、神様って……えっと、——お可愛いのですね。髭を生やしたご老体を勝手にイメージしてました。」
どこかの老のくしゃみが聞こえたとか聞こえないとかはさておき、僕の口調も少し浮き足だっている。
僕がそういって顔を上げると、意表を突かれた神様がイナバウワーの如く反り返った。
それで赤面した顔を隠したつもりなんだ……
想像の神様とは少し違ったけど——この健気な女の子は、きっといい神様なんだろう。私は神だ。といっていきなり現れた女の子を疑いもなく僕は神と信じた。
神様は咳払いし、形勢を整え話しを続けた。
「私は、君に恩恵を与えようと思う! アルト、君は私の恩恵を受けとってくれるかい?」
恩恵を受け取れば、ベア姉を助けることができるかもしれない。でも……そんな個人的な気持ちで神様からの恩恵を受け取ってもいいんだろうか——
「神様、僕には大切な人がいます」
「うん」
「その人は、いつも僕のことを助けてくれるんです」
「うん」
「いつか、僕がその人を助けたい。そう思ってました。——今がその時なんだと思います。僕の勝手なお願いのために神様の恩恵を使ってもいいですか?」
僕はベア姉を助けたい——だからとても怖かったけど本心を神様にぶつけた。
「——うん、そんなやさしい君だからこそ、私は恩恵を与えたいんだ」
すべてを包み込むような優しさを感じる。それが、神様なのかな——
「恩恵は、与えられた者によって発現する能力を変える——君ならきっと、お姉さんに通じる能力が発現するはずさ! それじゃあ、心の準備はいいかい?」
「はい! お願いします!」
目を閉じ片膝をつく僕の額に神様はそっと近づき口づけをした。
すると神様は虹色の光を放ち始めた。
その光は二枚の翼を形作り、僕を包み込む。
二人だけの時間が流れる。
虹色の翼は次第に小さくなり、そして消えた。
「はい、これで完了だよ! そうだ、あとはこのペンダントを君に贈ろう。私の恩恵を受け取ってくれた証ってところかな?」
「あ、ありがとうございます! えっと、あの——先ほど神様の仰っていた望みというのは何でしょうか?」
ベア姉以外の女性と手すら繋いだことのない僕は、恥かしさを紛らわすように話しを変える。
神様はくすっと笑った。
「私の願いは簡単さ、君にもっと私の大好きなこの世界を生きてほしい! ただそれだけさ!」
神様がそういうと白い世界に大きな亀裂が入る——
そして、僕は現実世界へと引き戻された。




