⬛︎第9話 祭壇
翌朝。
町には、少しずつ活気が戻り始めていた。
昨日まで積み上がっていた瓦礫は姿を消し、人々の表情にも、少しずつ笑顔が戻っていた。
宿を出ると、町長が深々と頭を下げた。
「皆様、本当にありがとうございました。」
エリシアが柔らかく微笑む。
「困っている人を助けるのが、私たちの役目ですから」
町長はもう一度礼を言うと、少しだけ表情を曇らせた。
「……実は、もう一つお願いがあります」
リオンが首を傾げる。
「まだ何かあるのか?」
町長は頷いた。
「町外れに、古い祭壇があります。」
「昔から祭事や収穫祭、神へ祈りを捧げる儀式に使われてきた場所です。」
「奉納品や祭具も置かれておりますが、魔族が現れてから誰も近づけなくなってしまいました。」
一拍置く。
「もし残っている物があれば……持ち帰っていただけないでしょうか。」
フィナが小さく頷く。
「……調査依頼」
カレンも口を開く。
「放置もできんな」
エリシアは町長へ向き直る。
「分かりました。」
「確認してきます」
町長は安心したように頭を下げた。
「ありがとうございます……!」
⸻
準備を終え、町を出ようとした時だった。
「勇者様!」
町の人々が次々と集まってくる。
「本当に助かりました!」
「これ、よかったら持っていってください!」
焼きたてのパン。
干し肉。
水筒。
旅に使えそうな物が次々と差し出される。
リグは一歩引いたところで薄く笑う。
「……やっぱ人気者だな。」
すると、一人の少女がリグの前へ出る。
少し恥ずかしそうに、小さなお守りを差し出した。
「……鎖のお兄ちゃんも、ありがとう」
リグは少し驚いたように少女を見る。
「俺にも?」
少女はこくりと頷いた。
「お兄ちゃんがいなかったら、お父さん死んじゃってたから」
少女の後ろで、昨日、瓦礫の中から救助した男が深く頭を下げていた。
リグは少し照れくさそうにお守りを受け取り、
「……ありがとな」
そう言って少女の頭を軽く撫でた。
少女は嬉しそうに笑う。
その少女を皮切りに、リグへも感謝の言葉が次々と向けられる。
その中、リオンはニヤニヤ笑いながら近づいてくる。
「お前“も”人気者じゃねぇか…」
カレンは腕を組む。
「悪くない」
フィナが小さく呟く。
「……ふふっ、紳士」
「だからその呼び方やめろ」
周囲から笑いが起こる。
『悪くねぇな、こういうの』
⸻
町を離れ、森の道を歩く。
リオンがパンをかじる。
「そういや祭壇って、俺ガキの頃一回だけ行ったことあるな。」
カレンが続ける。
「聖職者も祈りを捧げる場所だ」
フィナも頷く。
「……かなり古い建造物」
エリシアが補足する。
「この国より古いって言われてるわ」
リグは少しだけ目を細めた。
『そんな場所が……』
幼い頃。
父と歩いた記憶が、一瞬だけ脳裏をよぎる。
『人も魔族も、祈る心は変わらん』
優しく笑う父の横顔。
「……」
リグは小さく首を振る。
『もしかしたらあそこが…』
⸻
森を抜ける。
古びた石段。
崩れかけた石柱。
草木に覆われながらも、どこか神聖な空気が漂っていた。
「……静かだな」
リオンが辺りを見回す。
フィナが立ち止まる。
「……魔力反応。四天王クラス」
空気が張り詰める。
誰も言葉を発しないまま、石段を登っていく。
やがて。
最上段。
そこには祭壇があった。
そして――
一人の男が、祭壇の上へ腰掛けていた。
足を組み、片手には酒瓶。
周囲には散乱した奉納品。
まるで、自分の庭でくつろぐように。
男はゆっくりと顔を上げる。
勇者パーティと視線が交わる。
「……よう」
退屈そうに笑う。
「待ってりゃ来るんじゃねぇかと思ってたよ」
その瞬間。
リグの表情だけが変わった。
『あいつは…』
男はリグを見つめる。
ほんの一瞬だけ、目を細めた。
「……?」
すぐに鼻で笑う。
「気のせいか」
祭壇に風が吹き抜ける。
静寂の中。
戦いの幕が、静かに上がる。
初投稿で誤字脱字つたないところあるかもしれませんが完結目指して頑張っていきます!
温かい目で見守っていただけたら幸いです!感想お待ちしております!




