⬛︎第8話 復興
町の外れ。
瓦礫の山の前で、リオンが大きく伸びをした。
「いやー昨日のあれ、マジで助かったわ」
ちらりとリグを見る。
「お前の鎖な。あれ反則だろ」
リグは肩をすくめる。
「タイミングが良かっただけだろ」
「タイミングは最高だった!でも俺の影から出るなら言っといてくれよ!ちょっとビビったんだからな!」
フィナが小さく口を挟む。
「……位置取りも良かった」
リグが視線を向ける。
「位置?」
フィナはこくりと頷く。
「私とカレンを同時にカバーできる位置に立ってた」
間を置く。
「……紳士」
リオンが吹き出す。
「ははっ、言われてるぞ紳士!」
「やめろ」
リグが眉をひそめる。
カレンが腕を組み、不機嫌そうに言い放つ。
「そんなものいらん。前に出て斬ればいい」
「はいはい脳筋」
「なんだと?」
リオンとカレンの間に軽く火花が散る。
その横で。
エリシアは、少しだけ視線を落としていた。
リグがそれに気づく。
「……何を悩んでるか当てようか」
「え?」
顔を上げる。
少しだけ間があく。
リグは軽く続ける。
「昨日の戦い、だろ?」
エリシアは少し驚いたように目を瞬かせた。
「……ばれちゃってたか」
エリシアは小さく息を吐く。
「私、まだ力を引き出せてないのよ」
「ほう」
「勇者の力って、本来はもっと……強いはずなのに」
拳を握る。
「昨日だって、本当ならもっと早く倒せたかもしれない」
「でも、力が応えてくれなかった」
リグは少しだけ目を細める。
「条件でもあるのか?」
「……分からない」
小さく首を振る。
「感情なのか、覚悟なのか……きっかけが掴めてない」
リオンが口を挟む。
「まぁでも昨日も十分強かったけどな」
カレンも短く言う。
「戦力としては問題ない」
フィナは静かに続ける。
「……ただ、不安定」
エリシアは苦笑する。
「そういうこと」
リグは一瞬だけ考え、
「……まぁ、そのうち分かるだろ」
軽く言った。
「焦る必要はない」
エリシアは少し驚いたように目を瞬かせ、
それから、ふっと笑った。
「……そうね」
⸻
「で、今日はどうすんだ?」
リオンが周囲を見回す。
崩れた建物。積み上がった瓦礫。
「復興の手伝い、よね」
エリシアが答える。
「人手が足りてないみたいだし」
リオンがニヤリと笑う。
「よし、出番だな紳士」
「その呼び方やめろ」
リグはため息をついた。
⸻
数分後。
「ちょっとどいてくれ」
リグが軽く手を振る。
影が揺れる。
――ジャラッ
黒い鎖が地面を這い、瓦礫へと伸びる。
まとめて、持ち上げる。
「おぉ!?」
周囲から驚きの声が上がる。
そのまま別の場所へと運び、積み上げる。
「すげぇな……」
「こんな一気に……」
リオンが吹き出す。
「だから言ったろ?反則だって」
「効率が段違い」
フィナが静かに頷く。
カレンも腕を組みながら言う。
「……まぁ、使えるな」
リグは少しだけ口元を上げる。
「だろ?」
調子に乗る。
鎖の数が増える。
一本、二本、三本――
十本。
二十本。
三十本。
瓦礫が次々と片付いていく。
「お、おい……」
誰かが呟く。
「……なんだあれ」
「魔法……にしては」
「いや、あの規模……」
視線が集まる。
リグは、ようやく気づく。
「あ」
一瞬、動きが止まる。
だが――
「……まぁ、助かるならいいか」
空気は大きくは荒れず、流れていく。
リグは小さく息を吐く。
『……あぶねぇ』
リオンが肩を小突く。
「怖がらせてどうすんだお前っ!」
「すまん調子に乗った」
素直に答える。
カレンが鼻で笑う。
「自覚はあるらしいな」
フィナは一人、考え込んでいた。
「……」
⸻
夜。
宿の一室。
静かな空気。
リグが椅子に腰掛けていると、
扉がノックされる。
「……入っていい?」
フィナの声。
「どうぞ」
扉が開く。
フィナが静かに入ってくる。
そのまま、まっすぐにリグを見る。
「……聞きたいことがある」
短く言う。
「なんだ」
少しの間。
そして――
「今日の魔力量……」
一歩、近づく。
「四天王クラスはある」
静かな声。
「……あなた、魔王軍でどの位置にいたの?」
空気が張り詰める。
リグは一瞬だけ目を伏せ、
小さく息を吐く。
「……あぁ」
視線を上げる。
「四天王に近い位置にはいた」
嘘ではない。
だが、全てでもない。
少しだけ間を置いて、
「……ただ、今は関係ない」
淡々と続ける。
「もう関わるつもりもないし、あまりいい思い出でもない」
目を逸らす。
「深く聞かないでもらえると助かる」
沈黙。
フィナはじっと見つめる。
やがて――
「……分かった」
小さく頷く。
その時。
後ろから声がする。
「……嘘ではないわね」
エリシアだった。
いつの間にか、扉のそばに立っていた。
「少なくとも、“今は敵じゃない”」
視線を向ける。
「それで十分よ」
フィナも静かに頷く。
「……了解」
空気が、わずかに緩む。
フィナは扉へ向かい、
小さく振り返る。
「……おやすみ」
リグも小さく返した。
「……ああ、おやすみ」
静かに扉が閉まる。
リグは小さく息を吐いた。
『……助かった』
初投稿で誤字脱字つたないところあるかもしれませんが完結目指して頑張っていきます!
温かい目で見守っていただけたら幸いです!感想お待ちしております!




