⬛︎第6話 街の温度
町の通りを歩く。
整った石畳。穏やかな人の流れ。並ぶ店からは、香ばしい匂いが漂っている。
リグは周囲を見回し、小さく呟いた。
「……聞いた話のわりには、ここはそうでもないんだな」
リオンが肩をすくめる。
「ここはな。比較的マシな方だ」
フィナも小さく頷く。
「被害報告……少ない」
エリシアは少しだけ眉を寄せる。
「……それでも、ゼロじゃないわ」
リグは軽く目を細める。
『魔王城に近いところの方が被害が少ない……なるほどね……俺にバレたくなかったわけだ』
リオンが軽く笑う。
「俺の天才的な推理によると、のちのち支配する町だし、近くくらい綺麗にしとくか、って魂胆だと思うんだよな」
『残念。支配する予定はないんだな、これが。部下がどう動いてるかは知らないが』
リグは小さく頷く。
「……なるほどな」
短く返し、そのまま歩き出す。
やがて、果物の香りが漂う市場に差し掛かる。
リオンが手を伸ばす。
「お、これうまそう」
店主に軽く声をかけ、果物を受け取ると、そのうちの一つをリグに放る。
リグはそれを受け取り、かじりつこうとした――その時。
視線が合う。
少し離れた場所に、痩せた子供が立っていた。
目は、手の中の果物に向いている。
リグは果物と子供を交互に見て、
何も言わず、それを軽く放った。
子供の手元へ、すとんと収まる。
驚いた顔。
それから、小さく笑った。
「……ありがとう」
小さな声。
リグはわずかに口元を緩め、軽く頷く。
「おう」
『……原因は俺かもしれないのにな』
リオンがニヤニヤしながら肩を小突く。
「優しいじゃねぇか」
「違ぇよ。俺の金じゃないからな」
ぶっきらぼうに返す。
そのまま、歩き出す。
リオンが振り返る。
「いい飯屋紹介してやるよ」
エリシアが軽く笑う。
「またあそこ?……まぁ、美味しいからいいけど」
カレンが頷く。
「あそこは肉がうまい」
フィナも小さく続ける。
「……この街に来るたび、寄ってる」
リオンがニヤリと笑う。
「決まりだな」
店に入る。
木の扉。
中はほどよく騒がしく、活気がある。
香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
席に着き、それぞれ注文を済ませる。
運ばれてくる皿。
ステーキ。
ハンバーグ。
焼きたてのパン。
「いただきます」
リオンが早速ナイフを入れる。
リグも一口。
肉を噛む。
『……うま』
もう一口。
『……うま』
思わず手が止まり、横を見る。
カレンは、静かにナイフとフォークを動かしている。
無駄がない。
綺麗な所作。
「……やけに上品だな」
リグが呟く。
カレンは視線も上げずに答える。
「町の中だと、どこで見られてるか分からないからな」
淡々と。
「所作だけは、崩さないようにしている」
そのまま、もう一口。
変わらぬ動き。
リグはしばらくその所作を眺めて、
『……さっきまで剣振り回してたやつと同一人物か?』
小さく息を吐き、再び皿に目を落とす。
肉を一口。
ゆっくり噛み締める。
『……うまいな』
ナイフを止めたまま、少しだけ考える。
『こんな店が普通にやっていける環境……守らねぇとな』
ふと、手が止まる。
『……さて、本格的に元部下たちをどうにかしないとな』
これからの旅路を思い、ため息が漏れる。
リオンがステーキをほおばりながら口を開く。
「ほういや明日はどこいくんだっへ?」
フィナが即座に指摘する。
「……行儀が悪い」
リオンは口をもぐもぐさせたまま肩をすくめる。
エリシアが答える。
「被害のひどい隣町へ行く予定」
リオンが食べているものを水で流し込み、付け加えて言う。
「ここらで一番被害食ってる国境に近い町だっけな。気ぃ引き締めねぇと。」
リグは手を止める。
『……割と近いところでも被害出てるのか』
『……本当に、自分が嫌になるな』
食事を終え、店を出る。
夜の空気が少し冷たい。
リオンが伸びをする。
「んじゃ、明日に向けて休みますかね」
「そうね」
エリシアが頷く。
そのまま宿へ向かい、部屋を取る。
リグはリオンの隣の部屋を借りた。
静かな部屋。
一人。
ベッドに腰を下ろす。
『……話を聞く限り』
天井を見上げる。
『もう、同族に情けをかける必要はない』
目を閉じる。
言葉が途切れ、小さく息を吐く。
『父さんと母さんのためにも……』
『俺が、諍いを終わらせて……』
静かに、自分に言い聞かせる。
『人間と魔族を――繋ぐ。』
初投稿で誤字脱字つたないところあるかもしれませんが完結目指して頑張っていきます!
温かい目で見守っていただけたら幸いです!感想お待ちしております!




