⬛︎第5話 正体
森を抜け、町の門をくぐる。
石畳。人の声。屋台の匂い。
「……普通の町だな」
リガーレ――リグは、小さく呟いた。
その時。
「勇者様……?」
少女の声に、周囲の何人かが反応する。
「え、どこ?」
「まさか……」
視線が一点に集まる。
次の瞬間――
「勇者様だーーー!!」
一気に人だかりができる。
「本当に勇者様だ!」
「おかげで村が――!」
歓声と感謝の声が飛び交う。
リグは、その中心に立たされる。
「……人気あるんだな」
外面は平静。
だが――
『は?????勇者?????聞いてねぇぞそんなの!?こいつら勇者パーティ!?』
リオンが肩を組んでくる。
「新しいメンバーだ!」
逃げ場がない。
「ほら、挨拶挨拶!」
背中を押される。
リグは一瞬だけ目を閉じ、
「……リグと申します。勇者様のお力になれるよう、微力ながら尽力いたします」
完璧な所作で頭を下げた。
「おぉ!頼もしい!」
「よろしく頼むぞ!」
拍手まで起こる。
『なに言ってんだ俺、勇者の力になるってなんだよ、いや討伐対象なんだが!?』
「勇者様!早く魔王を打ち取ってくれー!」
『俺だっての!!!』
必死に表情を保つ。
『顔に出すな顔に出すな顔に出すな』
「おにいちゃんも勇者様の仲間?」
子供が見上げてくる。
「……あぁ、まぁ、そんな感じだ」
『違う違う違う違う!!!』
⸻
しばらくして、騒ぎは落ち着いた。
人混みを抜け、ようやく一息つく。
『……いや待て、落ち着け、まだバレてない』
リオンがぽんと肩を叩く。
「いやー人気者は大変だな!」
「……お前らが原因だろ」
思わず返す。
そのやり取りに、エリシアが少しだけ笑う。
「……実は勇者でしたー」
軽く言ってみせる。
リグはじっと見て、
「……なんか、さっきと態度違くないか?」
ぽつりと呟く。
リオンが吹き出す。
「ははっ、まぁそうなるよな」
エリシアは少しだけ苦笑する。
「だって、さっきは敵か味方か分からなかったし」
一瞬だけ視線を落とす。
「魔族だったしね」
カレンが小さく頷く。
「……当然だな」
エリシアは続ける。
「でも、一応一緒に行動することになったし」
軽く肩をすくめる。
「ずっとあんな感じだと、疲れちゃうでしょ?」
「それな!」
リオンがすぐに乗る。
フィナは小さく息を吐く。
「……効率も悪い」
「……なるほどな」
リグは小さく頷く。
『いや軽くなりすぎじゃね?』
⸻
「そういや、ちゃんとした自己紹介まだだったな」
リオンが言う。
「フィナは大賢者様の弟子で――」
「……師匠は恐ろしい」
小さく呟き、わずかに身震いする。
「カレンは聖女」
「は?」
思わず声が漏れる。
「なんだ」
カレンが睨む。
「……いや、聖女?」
『その性格で!?さっきまでバリバリ剣振り回してましたやん!!』
リオンが親指で自分を指す。
「俺は他より若干しょぼいけど、国の闘技大会優勝経験者だぜ」
『十分お強いじゃないですかー!?』
「で――」
リオンが視線を向ける。
みんなの視線が集まったところでエリシアが軽く手を挙げる。
「私が勇者!」
リグは深く息を吐く。
「……先に言ってくれ、心臓に悪い」
げんなりとした表情で呟いた。
⸻
その時。
教会関係者らしき人物が通りかかる。
カレンが一歩前に出る。
「ごきげんよう」
一礼。
完全に別人のような所作。
「おぉ、カレン様……!」
丁寧なやり取りが交わされる。
「神のご加護があらんことを」
にっこりと微笑むカレン。
リグは固まる。
『いや誰!?!?!?』
呆然とするリグを尻目に、リオンは腹を抱えて笑っていた。
⸻
再び歩き出す。
何事もなかったかのように、会話が続く。
笑い声が混じる。
その輪の中で――
一人だけ、冷や汗を流し続ける。
『……おれ、詰んでね?』
初投稿で誤字脱字つたないところあるかもしれませんが完結目指して頑張っていきます!
温かい目で見守っていただけたら幸いです!感想お待ちしております!




