■第二話 森
本日二話目です!あと一話更新します!
道の当てはあるようでない。
方角だけを頼りに森を進んでいた、その時だった。
背後に、重い息遣い。
「……ん?」
振り返った瞬間、凶悪な爪が眼前に迫る。
「ヤッバ……!」
反射的に転移。
直後――
轟音と共に、地面が抉れた。
「……生き残るために出てきた初手でこれかよ」
ゆっくりと、視線を上げる。
そこにいたのは――
巨大な熊だった。
血走った目、荒い呼吸。
いくら魔王城の周りの個体にしても、あまりにも“荒れている”。
「……森、治安悪すぎだろ」
熊が地面を蹴り、突進してくる。
「どうどう!落ち着けって!」
影から鎖が伸び、四肢を絡め取る。
だが止まらない。
「いや、止まるだろ普通」
鎖が軋む。
「……ん?」
「前より力が強い……?」
一瞬考え、浅くため息を吐く。
「……悪く思うなよ」
鎖に、わずかに魔力を流した。
――ピタリ、と。
熊の動きが止まる。
荒れ狂っていた呼吸が、ゆっくりと落ち着いていく。
「……ふぅ、落ち着いたか?」
鎖を解くと、熊はその場に伏せたまま動かない。
倒したわけではない。
ただ――静かになっただけだ。
「……幸先悪いな、ほんと」
小さく息を吐く。
「長居無用っと」
そうして、足早に森の奥へと進み出した。
⸻――数十分後。
森の奥、折れた木々と抉れた地面の跡が続いていた。
「おいおい……なんだこれ」
軽口混じりの声を上げたのは、前を歩く銀髪の男――リオンだ。
軽装のまま両手に持った剣で枝をかき分け、周囲を見回している。
「……戦闘の痕跡。しかも、かなり大規模」
後ろから、落ち着いた声。小柄で身の丈ほどある杖を持った青髪の少女――フィナが、地面に残る爪痕を指先でなぞる。
「この深さ……普通じゃない」
「は?やめてくれよ、そういうの。俺そういう“普通じゃない”やつ苦手なんだけど」
「はぁ…全部、苦手でしょ」
「……ばれた?」
リオンが肩をすくめた、そのとき。
「……いたわ」
金色の髪を肩まで伸ばした少女――エリシアが、小さく呟いた。
視線の先にいたのは、
地面に伏せる、巨大な熊だった。
熊はこちらを一瞥すると、すぐに視線を戻し、頭を地に伏せる。
「……ガルムベア……にしてはでかすぎるだろ……」
フィナは無言で熊を見つめ、一歩近づく。
「……ん」
小さく頷く。
「ガルムベア。……通常でもA-相当。でも、これは違う……すべてが逸脱してる」
「まだ生きてるな。今のうちに斬っとくか!」
ロングの赤髪をひとまとめにした女剣士―――カレンが一歩前に出る。
「待って」
短い一言で、空気が止まる。
「……エリシア?」
カレンが振り返る。
だがエリシアは、熊から視線を外さない。
「……違和感があるわ」
「変とか言ってる場合か?危ねぇだろ」
「違うわ」
エリシアは一歩、前に出る。
「さっきまで暴れてたはずでしょ?この痕跡……そう見えるわ。でも今は……」
ほんの一瞬、言葉を切る。
「敵意が……ないの」
沈黙。
「……いやいやいや、そんなわけある?このサイズだぞ?暴れたら普通に終わるって」
リオンが苦笑する。
「……否定はできない」
フィナが小さく頷き、熊の体を観察する。
「筋肉の発達……過剰。骨格も……歪んでる。……改造か、薬物。自然じゃない」
「だろ?余計危ねぇじゃん。やっぱ斬るしかねぇだろ」
カレンが踏み出す。
「放っといて被害出たらどうすんだ」
「……それでも、この状態は理屈に合わない」
フィナが静かに言う。
エリシアが頷く。
「この手の個体は、もっと攻撃的になる。それが普通……でも、これは違う」
熊は動かない。
ただ、静かに呼吸しているだけだ。
「……ありえねぇだろ、これ」
「この状態で、ここまで落ち着いてるのは……」
フィナがわずかに眉を寄せる。
「じゃあなんだよ。急に改心しましたーって?」
リオンが息を吐く。
「……それは、ない」
フィナが小さく否定する。
エリシアは、ゆっくりと首を振った。
「違う」
短く、確信を持って。
「大人しくさせた何かが――」
視線を巡らせる。
森の奥、木々の隙間、その向こう。
「……いる」
風が、木々を揺らす。
その場に、奇妙な静けさが残った。
初投稿で誤字脱字つたないところあるかもしれませんが完結目指して頑張っていきます!
温かい目で見守っていただけたら幸いです!感想お待ちしております!




