罪の信用
※この物語はフィクションです。
あなたが観測するまでは。
昼。
会社の前。
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大きなビル。
人の出入りが絶えない。
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宮島悟は、その前に立っていた。
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「……ここか」
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スマホの画面。
記事。会社概要。
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すでに、いくつかの情報は調べている。
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金の流れ。
関係者。
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そして——
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「……政治家」
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ある名前に目を止める。
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ニュースには出てこない。
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だが、繋がっている。
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「……やっぱりな」
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小さく息を吐く。
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夕方。
住宅街。
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悟は、ある家の前に立っていた。
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表札。
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ニュースで見た名前。
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少しだけ迷ってから、インターホンを押す。
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「……はい」
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出てきたのは、若い男。
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「何か?」
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警戒した目。
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「……ちょっと、話を聞きたくて」
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悟は、静かに言う。
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「あなたの父親の件で」
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男の表情が、変わる。
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「……帰ってくれ」
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すぐに言い返す。
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「もう終わった話だ」
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「終わってない」
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悟は、短く返す。
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「多分、違う」
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沈黙。
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男は、しばらく悟を見ていた。
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やがて、ドアを少し開ける。
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「……五分だけだ」
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部屋の中。
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写真立て。
家族写真。
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父親の顔。
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「……あいつはさ」
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男が口を開く。
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「真面目なやつだったよ」
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少し笑う。
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「でもな」
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その笑顔が、消える。
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「やったんだよ」
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悟は黙って聞く。
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「証拠も出てる」
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「映像もある」
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「全部揃ってる」
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言い切る。
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「だから終わりなんだよ」
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悟は、少しだけ目を伏せる。
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「……その証拠」
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静かに言う。
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「“本物”か?」
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男の目が鋭くなる。
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「何が言いたい」
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「もし違ったら」
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悟は続ける。
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「信じるか?」
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少しの間。
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男は、何も言わない。
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やがて、吐き捨てるように言う。
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「……無理だな」
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視線を逸らす。
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「信じたら、崩れる」
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「全部」
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悟は、その言葉を受け止める。
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「……そうか」
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立ち上がる。
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ドアに向かう。
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出る直前、振り返る。
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「それでも」
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一言だけ。
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「信じろ」
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それだけ言って、外に出る。
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男は何も言わない。
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ただ、立ち尽くしていた。
——この物語は、あなたに観測されたことで成立しました。




