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この世は観測されるまで存在しない  〜世界で唯一魔法が使える俺が、日本の闇を書き換えた結果〜  作者: soletes


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※この物語はフィクションです。

あなたが観測するまでは。


夜。



 テレビの光だけが、部屋を照らしていた。




『——本日未明、交通事故により中学生の男子生徒が死亡しました——』




 淡々とした声。




 画面には、事故現場。



 倒れた自転車。



 規制線。




『運転していたのは、交通課所属の警察官——』




 その一文で、空気が変わる。




『警察官は「自転車が急に飛び出してきた」と供述しており——』




 悟は、何も言わずに見ている。




 画面が切り替わる。




 笑っている写真。




 亡くなった中学生。




 その隣に、家族。




「……」




 リモコンには触れない。




 ただ、見ている。




『現場にブレーキ痕はなく——』




『過失の有無については現在調査中です——』




 そこで、音が切れる。




 悟が、テレビを消した。




 部屋が静かになる。




「……」




 考える。




 内容は、単純だ。




 事故。



 証言。



 証拠。




 そして。




 結論。




「……決まるな」




 小さくつぶやく。




 結果は、見えている。




 証拠は揃う。



 証言も揃う。




 “そういう形に整えられる”






 翌日。



 大学。




「見た?」




 凪が席に座りながら言う。




「昨日の事故」




 悟は、何も言わずに頷く。




「やばいよな」




 軽い口調。




「でもさ」




 一拍。




「警察って時点で、まあ分かるよな」




 悟の視線が動く。




「何がだ」




「いや」




 凪は肩をすくめる。




「どうせ証拠揃うだろ」




 あっさりと言う。




「飛び出しってことになるって」




「……」




 悟は何も言わない。




 だが。




 その通りだと思う。




 そして。




 それが“普通”だとも。






 数日後。



 ニュース。




『——警察は、過失は軽微であると判断し——』




『本件については書類送検のみにとどめる方針です——』




 予想通り。




 悟は、画面を見ている。




 変わらない。




 何も。




 証拠は揃っている。




 だから、覆らない。




「……」




 机の上。




 翁。




 静かに置かれている。




 悟は、それを見る。




 理解している。




 やれること。




 やればどうなるか。




 すべて。




「……」




 立ち上がる。




 迷いはない。




 ただ一つ。




 選ぶだけ。




「……関係ない、か」




 小さく言う。




 凪の言葉が、頭に残っている。




 “どうせ決まる”




 その通りだ。




 なら。




「……決めるか」




 静かに言う。




 それが。




 自分の役割なら。






 夜。



 街。




 悟は、一人歩いている。




 目的は決まっている。




 警察官。




 その男。




 証言。



 記録。



 すべて。




「……変える」




 それだけ。




 理由は、もう必要ない。




 正しさでもない。




 怒りでもない。




「……必要だからだ」




 その言葉だけで、十分だった。


——この物語は、あなたに観測されたことで成立しました。

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