表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世は観測されるまで存在しない  〜世界で唯一魔法が使える俺が、日本の闇を書き換えた結果〜  作者: soletes


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/42

正しさの基準

※この物語はフィクションです。

あなたが観測するまでは。


夕方。



 教室は、ほとんど人がいなくなっていた。



 窓の外は、少しだけ赤い。



 残っているのは数人。



 宮島悟も、その一人だった。



 席に座ったまま、動かない。




「まだ帰らねえの?」



 声。



 吉田凪。



 カバンを肩にかけたまま、軽い調子で近づいてくる。




「……ああ」




「珍しいな」



 凪は隣の席に腰を下ろす。




「いつもさっさと帰るのに」




 悟は何も言わない。




 視線は机の上。




 そこには——




 翁。




 置いた覚えはない。




 だが、そこにある。




「……」




 凪が気づく。




「それ、何?」




 一瞬。




 悟の視線が動く。




「……分からない」




 正直に言う。




「は?」



 凪が笑う。




「持ってんのお前だろ」




「……」




 答えない。




 凪は興味なさそうに視線を外す。




「まあいいけど」




 一拍。




「それよりさ」




 少しだけ真面目な声になる。




「昨日のあれ」




「……何だ」




「トラックのやつ」




 空気が少し変わる。




「マジで危なかったよな」




「……ああ」




「でもさ」




 凪が机に肘をつく。




「助かったじゃん」




 軽く言う。




「結果的に」




 その言葉。




 また、引っかかる。




「……結果」




 悟が小さく繰り返す。




「そう」



 凪は頷く。




「怪我もしてねえし、誰も死んでない」




「それでよくね?」




 一拍。




 悟は、ゆっくりと顔を上げる。




「……その結果は」




 静かに言う。




「どうやって出た」




 凪が少しだけ首を傾げる。




「は?」




「偶然か?」




 続ける。




「それとも」




 一瞬。




 言葉を選ぶ。




「……誰かが変えたのか」




 凪は、少しだけ黙る。




 そして。




「何言ってんだお前」




 笑う。




「そんなわけないだろ」




「……」




 悟は何も言わない。




 だが。




 頭の中には、はっきりある。




 “変わった瞬間”の感覚。




「……もし」




 小さく言う。




「誰かが変えたとして」




 凪は、興味なさそうに聞いている。




「それでも」




 一拍。




「正しいと思うか」




 凪は少し考える。




 そして、すぐに答える。




「思うね」




 あっさりと。




「だって助かってんじゃん」




「それ以上何がいるんだよ」




 迷いがない。




 悟は、その言葉を聞いたまま動かない。




「……過程は」




「どうでもいい」




 凪がかぶせる。




「結果が全部だろ」




 その瞬間。




 悟の中で、何かが揺れる。




「……」




 言葉が出ない。




 否定も、肯定もできない。




 ただ。




 理解してしまう。




 自分がやっていることは。




 その“結果”を作ることだと。






 夜。



 部屋。




 静寂。




 机の上。




 翁。




 じっとそこにある。




 悟は、それを見ている。




「……結果か」




 小さくつぶやく。




 人が助かる。



 世界が良くなる。




 それが正しいなら。




「……問題ない」




 一瞬。




 そう思う。




 だが。




 次の瞬間。




 違和感。




「……誰が決める」




 その問いが、残る。




 自分か。




 それとも。




 別の何かか。




 ゆっくりと手を伸ばす。




 翁に触れる。




 その瞬間。




 視界が歪む。




 また、記憶。




 今度は。




 “選んでいる”




 自分。




 誰かの運命を。




「……」




 手を離す。




 呼吸が乱れる。




「……違う」




 小さく言う。




 だが。




 否定しきれない。




 もう。




 “選んでいる側”に近づいていることを。


——この物語は、あなたに観測されたことで成立しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ