表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世は観測されるまで存在しない  〜世界で唯一魔法が使える俺が、日本の闇を書き換えた結果〜  作者: soletes


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/42

無意識の選択

※この物語はフィクションです。

あなたが観測するまでは。


夕方。



 大学の前の通りは、人の流れが少しだけ増えていた。



 講義終わり。



 帰る者、立ち止まる者、談笑する者。



 いつもと同じ時間。



 宮島悟と吉田凪も、その中にいた。




「腹減ったな」



 凪が伸びをしながら言う。



「どっか寄る?」




 悟は前を見たまま答える。



「任せる」




「じゃああの定食屋——」




 凪が歩き出す。




 その瞬間。




 遠くから、音。




 エンジン。




 妙に近い。




 妙に速い。




「……?」




 悟の視線が上がる。




 道路。




 トラック。




 明らかに、速度が異常だった。




「おい——」



 誰かの声。




 ブレーキ音。




 間に合わない。




 凪の背中。




 気づいていない。




「凪!」




 叫ぶ。




 だが。




 距離がある。




 間に合わない。




 その瞬間。




 視界が、歪む。




 音が、引き延ばされる。




 時間が、遅れる。




 無意識に。




 手が動く。




 ポケットの中。




 触れる。




 翁。




 冷たい。




 だが。




 次の瞬間。




 世界が、ズレる。




 トラックの軌道が、わずかに変わる。




 凪の足が、ほんの数センチ後ろにずれる。




 風だけが通り抜ける。




 何も、起きていない。




 はずだった。




「……え?」




 凪が振り返る。




「今……」




 トラックは、そのまま走り去る。




 周囲がざわつく。




「危なっ」



「今のやばかっただろ」




 声が戻ってくる。




 時間が元に戻る。




「……」




 悟は、その場に立ったまま動かない。




 自分の手を見る。




 何もしていない。




 はずなのに。




「……今の」




 喉が乾く。




 理解してしまう。




 選んだのは、自分じゃない。




 でも。




 結果は、変わった。






「悟?」




 凪が近づいてくる。




「お前、さっき叫んでたよな」




「……ああ」




「何だったんだよ」




 軽い調子。




 だが。




 その目は、少しだけ違う。




「……分からない」




 本音。




 凪は少し黙る。




「……でもさ」




 一拍。




「助かったよな」




 あっさりと言う。




「結果的に」




 その言葉。




 胸に残る。




「……結果」




 小さく繰り返す。




 それでいいのか。




 考える。




 だが。




 答えは出ない。






 夜。



 部屋。




 静かな空間。




 机の上。




 翁。




 そこにある。




 悟は、それを見ている。




「……俺じゃない」




 小さく言う。




 自分の意思じゃない。




 選んでいない。




 なのに。




 結果だけが変わる。




「……じゃあ誰だ」




 問い。




 答えはない。




 ただ。




 翁が、そこにある。




 何も語らず。




 ただ。




 “存在している”




 その意味だけを残して。




 ゆっくりと手を伸ばす。




 触れる。




 一瞬。




 また、別の記憶が流れる。




 違う視点。



 違う時間。




 老人。




 自分。




「……っ」




 手を離す。




 呼吸が荒くなる。




「……」




 理解が、追いつかない。




 だが。




 確実に。




 “何かが選んでいる”


——この物語は、あなたに観測されたことで成立しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ