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この世は観測されるまで存在しない  〜世界で唯一魔法が使える俺が、日本の闇を書き換えた結果〜  作者: soletes


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見えない時間

※この物語はフィクションです。

あなたが観測するまでは。


夜。


 宮島悟は、スマホの画面を見つめていた。



 事件の記事。



 ページを切り替える。



『周辺の防犯カメラには、被害者の帰宅や通行人の動きが記録されており——』



 その一文で、指が止まる。



「……あるのか」



 小さくつぶやく。



 防犯カメラ。



 つまり。



「見えてるってことだよな」



 映像がある。



 なら。



 分かるはずだ。



 誰が来て、誰が出ていったか。



 普通なら。



「……なのに」



 スクロールする。



『犯人とみられる人物の明確な出入りは確認されていません』



 その一文。



 悟は、画面を見つめたまま動かない。



「……矛盾してるだろ」



 ある。



 でも、ない。



 見えてる。



 でも、分からない。



「……どうなってる」






 編集部。



 班目唯は、複数の映像資料を並べていた。



 現場周辺の防犯カメラ。



 時間ごとの動き。



 人の流れ。



「……ここまでは分かる」



 指で追う。



 被害者の帰宅。



 その後の時間。



 通行人。


 車。



 すべて、記録されている。



 だが。



「……ここから」



 ある時間帯。



 わずかな空白。



 完全に“ない”わけではない。



 ただ。



 つながらない。



「……おかしい」






「どこがだ」



 後ろから声。



 斉藤和樹。



 班目は振り返らず答える。



「時間が、変なんです」



 画面を指差す。



「ここ」



 斉藤が覗き込む。



「この時間帯だけ、動きが不自然なんです」



 説明する。



「人の流れはあるのに」



「“関係ある動き”だけ抜けてる」



 一拍。



「まるで——」



 言葉を探す。



「……避けてるみたいに」



 斉藤は、何も言わずに見ている。



 数秒。



「……違うな」



 静かに言う。



 班目が顔を上げる。



「避けてるんじゃない」



 一拍。



「“通ってる”」



 班目の思考が止まる。



「……え?」



 理解が追いつかない。



 斉藤は、画面を指す。



「ここ、全部あるだろ」



 人の流れ。


 車。


 時間。



「じゃあなんで“だけ”抜けてる」



 一拍。



「そこを通ってるからだ」



 班目の背中に、冷たいものが走る。



「……そんなこと」



 あり得ない。



 でも。



 否定できない。






 大学。



 講義室。



 宮島悟は、前を見たまま考えていた。



 防犯カメラ。



 出入り。



 時間。



「……あるのに、ない」



 小さくつぶやく。



 頭の中で、並べる。



 点と点。



 そして。



「……そこだけ、見えてない」



 一つの結論に近づく。



「死角か」



 だが。



 普通の死角じゃない。



「……都合よすぎる」



 ピンポイントで。



 必要な場所だけ。



「……作ってるな」



 一言。



 確信に近い。






 夜。



 班目は、一人で映像を見ていた。



 何度も繰り返す。



 同じ時間帯。



 同じ流れ。



 違和感は、消えない。



「……見えてるのに」



 小さく言う。



「なんで分からないの」



 答えはない。



 だが。



 気づいてしまう。



「……見えてないだけか」






 同じ夜。



 宮島悟。



 部屋。



 窓の外を見る。



 暗い街。



「……あるな」



 小さく言う。



 確信。



「見えてないだけで」



 一歩、前に出る。




 空気が、わずかに揺れる。




 まだ触れていない。



 だが。



 次に進めば。



 “見える”




 その直前。


——この物語は、あなたに観測されたことで成立しました。

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