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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第90話

 ジョージはその後2度ギャツビーとレイモンドとボーダー”と”コインブラ”で一緒に酒を飲んだ。


 彼らが山裾の街に戻る日はジョージも門まで見送りに行った。オーストラリア人2人を含む4人、それにジョージだ。


「良い装備が手に入ったよ」


「これでまた頑張れる」


 そう言っているレイモンドとギャツビー。


「気をつけて帰れよ」


「おう、そっちも無理すんなよ」


 短い挨拶が終わると片手を上げて門から外に出ていったレイモンドとギャツビー。彼らの背中が見えなくなるとジョージは街の中に引き返し、遠出必要な買い出しを済ませる。


 この世界に来た当初は周りにいる迷い人はみなライバルだ。それがこの世界に慣れ、南に南にと進んで行く間に力のないものは淘汰され、実力者だけが残っていく。生き残った実力者たちはお互いを認め合い、ただのライバル同士の関係ではなく同じ目的に進む仲間だという意識になる。


 ギャツビーとレイモンドとは西の街で知り合って以来の付き合いだ。あちこちの街で何度も一緒に酒を飲み、飯を食った。ジョージが初めて人を殺したあとに最初に話をしたのもこの2人だ。長い付き合いでお互いに信用しあっている。前の世界だとどう考えても接点がなかった連中とここまで関係を深めることができた。ジョージは直接二人には言っていないが彼にとって彼らは数少ない本当の友人と呼べる人たちだ。


 彼らは山裾の街に戻ればまたお互いにソロでゲートを探して動き回る。そして自分はこの砂漠の街を中心にしてソロで動き回る。お互いにゲートを探す場所は違うが、またいつかどこかで彼らと会えば普通に酒を飲んで話をするだろう。そうジョージは思っている。 



 遠出の準備が整った。宿泊している”デザートホテル”には1年分の部屋代の前払いをしている。白金貨にして15枚分だ。魔法袋の中には携帯食料や水をいれ、ロープやタオルなども入れた。もちろん薬品類も十分に準備した。


 旅立ちの前日、ジョージはボーダーに顔を出した。カウンターにはカロライナとエミリアの二人が座っていた。


「ハイ、ジョージ」


「やあ」


 彼女達の隣に座ると目の前に水割りのグラスが置かれる。礼を言って銅貨をテーブルに置いた。


「久しぶりだな」


「1ヶ月程外に出ていたのよ。昨日の午後に戻ってきたところ。今回は金策目的よ」


「ジョージは遠出はしてないの?」


 女性二人が交互に聞いてくる。


「明日から遠出してくるよ」


「そうなんだ。気をつけてね」


「どれくらいを予定しているんだ?」


 カウンターの中にいたスミスが聞いた。


「6ヶ月から8ヶ月を考えている」


 ジョージが言うと長いなという男女の声がする。


「今のところはそれくらいの期間を考えているけど、辛くなったら早めに戻ってくるかもしれない。その辺はソロだから何とでもなる」


「疲れたら無理をしないことよ」


 エミリアがジョージを見て言った。分かっていると頷くジョージ。


「明日は朝早くから出る予定?」


 カロライナが聞いた。


「いや決めてない。長丁場になるし、目が覚めてから決めるよ」


「6ヶ月以上か、店の売り上げが減るな」


「すまないね。俺がいない間は、この女性二人からふんだくってくれよ」


 スミスの冗談に笑いながら答えるジョージ。女性二人も協力するわよ、とか言っている。


 1時間ほど飲んだジョージが席を立つと女性二人も席を立った。


「ジョージ、気をつけてな」


「ありがとう」


 礼を言って店を出た3人は夜の街をホテルに向かって歩く。夜は涼しい風が吹くのでしのぎやすい。


 ホテルが見えてきたところでカロライナが誘ってきた。エミリアも頷いている。


「私たちと寝たくらいで翌日疲れて動けないとか言い出すジョージじゃないでしょ?」


「まあな。じゃあお邪魔するか」



 翌日の昼前にジョージは街を出ると西に向かって歩き始める。前回探索をしたエリアは寄り道せずにそのまま通過し、直線的に移動してできるだけ距離を稼ぐ様にした。


 アランは曇天の日が多かったと言っていたがジョージが出発した日から快晴続きで、山の枯れ木のエリアを歩いていると汗が出てくる。タオルで汗を拭き、水分を補給しながら山の斜面を東に進み、木の影が伸びて陽が暮れてくると山の中腹に上がって大木の枝で夜を過ごし、翌朝になるとまだ枯れ木のエリアを西に進む。


 彼が進んでいる左手には起伏のある広大な砂漠が広がっている。この砂漠を攻略して南に行くのは無理だという神の意思だ。それを無視して砂漠に繰り出して行けば死というゴールが待っている。ジョージはそう思っている。


 街を出て1ヶ月が過ぎた。ここから先がジョージにとっては未知のエリアになる。風景は変わらないが何があるかわからない。移動する速度を落として周囲を調べながら進んでいく。


 相変わらず枯れ木のエリア、山の中腹から山裾一帯にはマイプとティラノが徘徊している。それらを倒し、魔石を取り出しては西に進み、日が暮れてくると山を登って緑の葉をつけている大木の枝で夜を過ごす。


 大木の枝に座ると食事をとり、木彫りの女神像を取り出して祈るが女神像は何も反応しない。


 夜が明けると西に進みながら周囲をチェックするジョージ。枯れ木が生えていて、魔獣が徘徊しているエリアを進むこと4ヶ月。気になるものは何も見つからなかった。その場から西を見るとまだ山裾が続いているのが見えているがジョージは当初の予定通り、その場で踵を返すと砂漠の街に戻るべく再び枯れ木のエリアを歩いていく。


 もう少し先に行ったら何かあるんじゃないか。そんなことを考えると心に迷いが生じてくる。それに4ヶ月移動して自分で気が付くほどに疲れてもいた。このままさらに西に進めば事故が起こる可能性が上がる。ソロなので庇い合う仲間もいない。体調、技量、すべてを自分で管理しなければならない。きついが自分が選んだ道だ。木の上に座りながらジョージは気合を入れ直した。



 砂漠の街を出てから8ヶ月後、ジョージは西の探索を終えて街に戻ってきた。

 大量の魔石を換金するとそのままホテルに戻って死んだ様に眠る。


 翌日の夕刻、ようやく身体の疲れが取れたと感じた彼はレストランに降りていった。レストランの中に入るとジョージを見つけたコービーが手を挙げてきた。


「随分久しぶりじゃないか」


「半年以上出てたからな。ところで何を食ってるんだい?」


 コービーがメニューを指差したので同じものを注文する。


「半年以上か、長期だったんだな」


「まあな、そっちも俺が街を出る前は暫く見てなかったけど?」


「お前と逆だな。俺はお前が街を出る前は遠出をしてたんだよ」


 3ヶ月程前に遠出から街に戻ってきたと言っている。


「入れ違いか」


「この街にいる迷い人の半分は常に外に出ている。市内にいるのは残り半分だ」


「確かに」


 他の街でも似た様な状況だろうが、砂漠の街は元々迷い人が少ないから目立つ。


「最近街で何かあったかい?」


 食事が終わったタイミングでジョージが聞いた。


「確かめに行くか」


 コービーはそう言うと立ち上がった。続いてジョージも立ち上がる。

 ホテルを出ると二人は”コインブラ”の扉を開けた。誰もカウンターには座っていない。カウンターの中でロナルドが手持ち無沙汰で立っている。


「ジョージ、久しぶりだな。帰ってきたんだな」


「2日前にね」


 二人がカウンターに座ると水割りが置かれる。銅貨をカウンターに置いたジョージ。


「ここ数ヶ月、街で何かあったかを聞こうと思ってさ」


「なるほど。コービーに聞けばわかるところをわざわざ店に来てくれたって訳だ」


 ロナルドが言った。コービーが俺に感謝しろよ。と彼に言っている。


「結論から先に言うと静かなもんだったよ。ここに住んでる迷い人が出たり入ったりしているくらいだ。砂漠に出向く命知らずもいないし、山裾の街から移動してここで腰を据えてゲートを探そうという奴もいない」


「平和だったってことか」


「平和といえば平和だろう。ただ、ホワイトホテルを常宿にしているソロの迷い人がまだ街に戻って来てないという話がある。周りには3、4ヶ月遠出をすると言って街を出ていったらしいが、もう6ヶ月以上過ぎてるそうだ」


 ロナルドの話を聞いてジョージとコービーが顔を見合わせた。


 外で活動すると魔獣にやられる以外に事故に遭うことがある。足を滑らせたり体調を崩したり。チームで動いていると助け合うことができるがソロだと自分で処置しなければならない。薬で治る程度であれば問題ないが、必ずしもそれだけじゃない。


 この砂漠の街の探索エリアは基本山だ。草原もなければ森もない。山の斜面を登ったり降りたりしながらゲートを探す。足を滑らせて骨折したりして動けなくなると終わりだ。魔獣の標的になる。


「俺たちも気をつけないとな」


 暫くの沈黙の後、コービーが言った。


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