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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第84話

 翌日、ジョージは街の中を歩き、武器・防具屋という看板を見つけると店の中に入った。迷い人の数が少ないからか1つの店で武器と防具を売っている様だ。


 店に入ると50代に見える男性が座っている。


「お邪魔します。見てもいいですか?」


「どうぞ、好きに見てくれ」


 店の中は3つのエリアに分かれている。入って左側が防具、右側が武器、そして奥には腕輪や指輪が置かれている。


 ジョージは最初に防具のコーナーを見る。

 売られている防具は最初の洞窟で見たのよりも種類が少ない。ただ品質は今までの街の中で一番良い。


・攻撃力+40

・攻撃力+20、素早さ+20

・素早さ+40

・体力+40


 防具は4種類だ。ジョージの装備である素早さ+40 、敵に見つかり難いという効果がついている防具はない。


 次に武器を見てみる。片手剣、短剣、斧が置いてある。いずれも性能は同じだ。

・攻撃力+50

・攻撃力+40、体力+20

・攻撃力+40、素早さ+30

・素早さ+50

・体力+50


 こちらの片手剣もジョージが装備している攻撃力+40、素早さ+30、時々2倍のダメージという剣はない。


 値段を見ると防具も武器も1つ金貨10枚になっている。

 ジョージが洞窟で手に入れた武器はどうやらこの街の武器よりも優れているということになる。


 ジョージは最後にアイテムの陳列棚に移動した。

・体力+40

・攻撃力+40

・素早さ+40

・攻撃力+20、素早さ+20


 1つ金貨10枚だ。腕輪は複数装備できるから+40の腕輪を買うのが普通だ。1つの腕輪で+20と+20となっているのがあるが、これをこの街で買う人はまずいないだろう。


 いずれにしてもジョージの今の装備を上回ってはいないが、ほぼ同等クラスの装備になる。つまりこの街に来るとジョージの武器の優位性がほとんどなくなると思った方がいい。ただこの街には悪落ちした者がいない。迷い人同士で剣を抜きあうことはなさそうだ。


 展示されている商品を一通り見たジョージは椅子に座っている男性に近づいた。


「こんにちは。昨日この街にやってきたジョージと言います」


「こんにちは。私はマンセル。この店のオーナーというのかな。店主だよ」


「攻撃力+50と体力+50の違いとは何でしょうか?」


 ジョージが聞いた。彼が持っている体力の指輪は疲れ難いという効果があるが剣の場合は違う意味があるんじゃないかと言う気がする。


「攻撃力とは一撃のダメージのこと、体力とは片手剣を何回振り回せるかということ。そう言ったらわかるかな?」


 ゆっくりとした口調でマンセルが言った。


「体力+50という剣は長期戦や連続して戦闘すると効果があるということですか?」


「そういうことだね。片手剣にしても斧にしても振り回していると疲れてくる。そこが疲れ難いと考えてくれればいい」


「なるほど」


「ただ正直体力が増える武器や防具はほとんど売れない。迷い人は大抵が攻撃力が上がる装備を買うね。次に素早さが上がる装備だよ」


 ジョージは片手剣に時々2倍攻撃という付帯効果がある。今ではほぼ毎回発動するので実質的に攻撃力アップになっているが、普通は少ない攻撃回数で魔獣を倒す方がリスクが低いと考える。

 

「ここにあるのは通常品だ。これら以外に今ジョージが装備している様な掘り出し物が時々入ることがあるよ」


 掘り出し物というのが自分が今持っている時々2倍のダメージとか、敵に見つかり難い効果とかが付与されているものだろう。そしてここの店主のマンセルは鑑定スキルを持っているということだ。


「その装備はどうしたんだい?」


「引退した元迷い人から譲り受けました」


「なるほど。良い装備だよね。それクラスの装備はなかなかないだろうけど、全く無いとは限らないよ」


 含みのある発言だ。


「じゃあこまめに顔を出す様にします」


 礼を言って店を出たジョージはそのまま街の中を歩いておおよその街の様子、地図を頭に入れる。歩いていると”コインブラ”と”ボーダー”という店の看板を見つけた。昼間の時間帯なのでどちらもCLOSEDになっているが場所を覚えたので飲みに行けそうだ。


 ぐるっと街の中を歩いたジョージは南門から外に出た。この街は東、南、西と3つの門がある。ジョージが山裾の街から山越えをして街に入ってきたのは西門だ。


 南門から外に出ると椰子の木が生えている草原が目の前にあり、その先には広大な砂漠が広がっているのが見える。彼は草原を南方面に30分程歩いて砂漠に着くと手のひらで砂を掬ってみる。細かい砂が手の平から流れる様に落ちていく。


 ジョージは砂漠に入ってみた。数歩進んだだけで砂で足がとられて歩き難いのが分かる。これは体力を消耗するのは間違いない。さらにこの砂漠の中には魔獣がいるという話だ。


 どう考えてもこの砂漠は俺たち迷い人、いや人間を拒絶するためにあるとしか思えない。リュックに入っている木彫りの女神像も全く反応しない。やはり探すべきは砂漠ではなく、街の東西の枯れ木のエリア、中腹から山裾にかけてのエリアだろう。


 街に戻ってまだ見ていないエリアを歩いたジョージ。この街は山裾の街以上に昼間に迷い人の姿を見ない。数が少ない上に昼間は外でゲートを探しているのだろう。


 ホテルに戻ったジョージはシャワーを浴び、休憩をしたところでレストランに降りて行った。比較的早い時間だが迷い人がチラホラと座っている。


 食事を終えると昼間に見つけた飲み屋に顔を出してみることにした。彼が扉を開けたのは”コインブラ”という店だ。ドアを開けて中に入ると迷い人の客が1人座っていた。


「いらっしゃい」


 カウンターの中にいる男性が声をかけてきた。ジョージは客と2つ間を開けて椅子に腰掛ける。


「水割りはいくら?」


「銅貨4枚だ」


 カウンターに金を置くと代わりに水割りが置かれた。


「いつこの街に来たんだい?」


 水割りを置いた男が言った。


「2日前。俺はジョージ、5年目のジャパニーズだ」


「久しぶりにこの街に迷い人が来たと話題になってるぞ」


 マスターがそう言って自分はポルトガル出身のロナウドだと言った。コインブラという店の名前は彼の住んでいた街の名前だそうだ。


「狭い街だからすぐに広まるのかな」


「5年目か。最初からこの街にあると睨んでいたのか?」


 黙っていたカウンターに座っている男が言った。ジョージは彼に顔を向ける。


「迷い人が多くいるエリアは探し尽くされていると決め打ちしたんだよ。なので南、南へと移動して行っただけだ」


「なるほど。早い段階で決め打ちをしたのだな」


「その通り。最初に飛ばされた台地にある3つ目の街、そこから台地の下を見た時にとてもじゃないが生きている間に全部探しきれないと感じたんだよ。その後で西の街、東の街に行ったがお仲間が多くいた。これだけいても見つからないのはここに無いからだ。そう決めて早めに南に移動することにした」


「その結果が5年目でここまでやってきたということか」


 そう言ってから自分はアルゼンチン出身のエステバン。14年目になると言った。


「ずっとソロで動いているのかい?」


 マスターのロナルドが聞いてきた。


「その通り。この世界に来てから一度もチームを組んだことはない。移動もソロだよ」


「なるほど」


 移動もソロだと言ったジョージだが聞いている2人は驚いが表情にはならない。頷いているだけだ。


「砂漠には行ったか?」


「入り口にはね。柔らかい砂で歩き難い上に遮蔽物がない。聞いている話だと砂の中から魔獣が飛び出してくる。普通に考えたらあの砂漠は人間をそこから先に行かせないためにあるとしか思えない」


 聞いてきたエステバンの方に顔を向けてジョージが言った。彼はジョージの話に大きく頷く。


「普通に考えたら今のジョージの考え方になる。ただ中にはあの砂漠の先にあるんじゃないかと砂漠に繰り出して行ったものもいる。誰も戻ってきていない。そしてゲートが見つかったというアナウンスもない」


 エステバンによると、この砂漠の街は一見探すべき場所が他の街に比べると多くない様に見える。そして過去から多くの迷い人がこの街の周辺も探索している。それでも見つからないのはゲートはここじゃなくてもっと南じゃないかと考えて砂漠に出ていく連中がいるそうだ。


「俺はジョージと同じ考えだ。あの砂漠は俺たちをこれ以上南に行かせない為だと思っている。となるとこの街の背後にある山の中のどこかだ。街の近くはそれこそ以前から探しているだろう。なので仲間の多くは3ヶ月とか4ヶ月かけて遠出をして山の中を探索しているんだよ」


「なるほど」


 この街にいる迷い人はほぼ全員が魔法袋を持っている。食料や水の心配がいらないから思い切った遠出をしているのだと教えてくれた。


 ”コインブラ”に1時間ちょっといてジョージは店を出た。

 ホテルに戻るとさっきのエステバンの話を思い出す。彼が言っている通り、街の近くの山は探索済みだろう。ただそれでも自分は近場から少しずつ探索エリアを広げていこうと決めた。

 

「あんたの出番だ、期待してるぜ」


 机の上に置いてある女神像に向かって言った。


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