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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第74話

 エイドリアンの話には説得力がある。ジョージは始まりの街の飲み屋で聞いたヒントという話を彼にする。


「ヒントか。確かに言われてみればそうだ。この広い大陸を闇雲に探すとなったら、とてもじゃないが生きている間には無理だ。大陸各地に散りばめられているヒントを見つけて、それを読み取る能力も求められるということだな」


 ジョージの話を聞き終えるとエリドリアンが言った。


「その通り。そう考えると今あんたが言ったその場所に広大な砂漠が広がっているということが意味を持ってくる。つまり砂漠とそれより先を探しても無駄だというヒントに繋がる」


 食事が終わり、2人は今はレストランでコーヒーを飲んでいる。


「それでもジョージは山を越えて南に行くのだろう?」


「もちろん。行って自分の目で見て確かめる。それに砂漠以南にはゲートはないかも知れないが、砂漠の街の周辺、この背後の山の南側にゲートがあるかも知れない」


 その通りだとエイドリアンが言った。


「俺もお前も、迷い人は皆自分で決め打ちをしたエリアを探す。俺は南にはないと決め打ちした。お前はまだ決め打ちするには若い。怪しいと思う場所には行くべきだな」


 木彫りの女神像がまだ反応していない。それがジョージが南を目指す理由の1つでもある。ただその話はここではしない。ジョージが木彫りの女神像の反応に期待しているといのも1つの決め打ちだ。これが反応しない場所にゲートはない。そう決めて動いている。


「まだ誰も見つけていない。正解なんてない。とりあえず俺は過去から迷い人が訪れたといわれている街は全て行ってみたい。今はそれだけを考えてるよ」




 数日後、準備を整えたジョージは街を出ると南の山の西側に足を向けた。事前にジュンからもらった地図でおおよそは頭に入っている。


 聞いていた通り、山に入ると最初は緩やかだった傾斜が徐々にきつくなってくる。最初に遭遇したのは豹だった。木に登ってくる黒豹ではなく、黄色味がかった茶色に黒の斑点がある。素早い動きだが素早さならジョージも負けてはいない。2度ほど片手剣を振って倒すと魔石を取り出してポケットにいれる。山の中の豹とゴリラの魔石は1個銀貨5枚と高額になる。探索をしつつしっかりと金策もするつもりだ。


 途中で木に登って太い枝の上に座ると休憩をしながら地図を見る。今のところ魔獣の生息域や果実の実があるエリアは地図と変わっていない。少しずつ確認しながら進んでいくジョージ。もちろん野営も木の上だ。


 ゴリラと豹との戦闘を数度繰り返すと、彼らの攻撃パターンが分かり討伐が楽になった。戦闘は楽になったが山の傾斜は変わらずにきつい。ルート外を登っていることもあるだろうが、それでもかなり体力を消耗する。これは地図を見ていただけでは分からない。


 やっぱりこうして実践することが大事なのだと実感する。予備知識を持ち、現場で確認する。地道にやるしかない。


 山の中ではところどころ木から伸びている枝が切られた後がある。これはそれまでのエリアでもそうだったが、迷い人が自分が歩きやすい様にと枝を切ったあとだ。つまり、そこはすでに誰かがチェックをしているということになる。それであっても迷い人は落とされているかもしれないと思い、山を探す。


 1日に20体以上の魔獣を倒して魔石を取り出しながら山の中を歩き、木の上で野営をしたジョージ。8日後に山裾の街に戻ってきた。魔石を換金すると全部で白金貨1枚ちょっとの稼ぎになった。


 それにしても南に行くほど敵が強くなり、トカゲやスライムと言った弱目の魔獣の姿を全く見なくなっていた。これも神の意思があるのか。川の街もそうだったが、山裾の街も周辺の草原にいるのは恐竜に似た魔獣で、こいつらが一番弱い魔獣ということになる。


 森に入れば彼らの代わりに虎やゴリラとなる。


 魔獣の生息域は分かるにしても武器や防具が強くなると弱めの敵がいなくなるのは何か事情、理由があるんじゃないかと勘繰ってしまう。全てを神の意思だと決めつけるのは早計だが、だからと言ってそんなもんだと割り切ってしまうのはどうかと思っているジョージ。これはゲームじゃない、自分にとってはリアルの世界だ。傷をつけられれば血は出るし、殺されることだってある。

 

 いずれにしても目の前にいる敵を倒さないと前には進めないのは間違いない。違和感は感じつつもそれを考えすぎて集中力がなくなって魔獣に倒されることだけは避けなければならない。


 換金を済ませるとその足でアイテム屋に顔を出した。陳列棚を見ると目新しいものはない。相変わらずバイトの女性が店の奥で暇そうに座っていた。


「ジョージさん、こんにちは」


「やあ、ユーリ、こんにちは。面白そうな物は入荷してないみたいだね」


「そうなんですよ。最近入ってこないですね」


 何度も顔を出しているのでお互いに名前を覚える関係になっていた。名前を教えてもらった時にアルバイトかと聞いたらそうだと言っていた。


「また顔を出すよ」


「はい。お願いします」


 ホテルの部屋に戻り、シャワーを浴びると、ともらった地図をベッドの上に広げ、自分が山の中で描いた地図とを時間をかけて見比べる。この8日間でチェックをした山の中の様子はもらった地図とほとんど変わっていなかった。


 魔獣の配置や果実の木が生えている場所は地図とほとんど変わっていない。これは森の中でもそうだった。もっと山を探索する必要はあるが、ジョージの頭の中では、この街で長い時間をかける必要はなさそうだという結論になりつつあった。


 ホテルのレストランに行くとオーストラリア人のウイリアムが1人で座っていた。近づいて挨拶を交わして同じテーブルに座る。


「しばらく見なかったな」


「山に行っていたんだよ」


「俺もだ」


 同じ場所に出向いてもそこで誰かと会うことは滅多にない。それくらいに山は広く、何かがありそうな場所は多い。


「山登りはきついだろう」


「ああ、今までの山とは違うよ」


「歳を取ると山に登るのが辛くなる。そして引退という流れになるのさ」


 ウイリアムがそう言って皿の上の肉にフォークを突き刺した。咀嚼して飲み込むと顔を上げてジョージを見る。

 

「ジョージ、お前はまだ若いから理解できないだろうが、体力の衰えは感じ始めると一気に来るんだ。徐々に落ちていくんじゃない。本当に短期間で落ちる。一方で頭の中の感覚は老化しない。つまり頭で考えている通りに身体が動かなくなる。頭と身体の動きにズレが生じるんだ。こうなると事故が起こりやすい。こんなはずじゃない、そう思い始めたら引退が近いということだよ」


「なるほど」


 今の自分はイメージした通りに身体が動いている。特にジョージは素早さに特化した戦闘だ。身体が動くうちは問題ないだろう。ただ歳を取った時に思った様に身体が反応してくれないとなると即命に関わってくる。スポーツじゃない、生きるか死ぬかの戦闘でこのズレはいずれ致命傷になる。


「この世界にいる多くのベテランの迷い人の中で、この街にいる連中は総じて実力者だ。俺も含めてだが、冷静に自分を見る事ができる。頭と身体のズレを感じた場合、最初はそれを調整することができるが、いずれ調整が難しくなってくる。彼らの多くはその時にゲート探しから撤退するんだよ。冷静に自分を分析できない迷い人は無理をして迷い人を続け、結局魔獣にやられるか、事故に遭う」


 ウイリアムはそう言った。エイドリアンもしっかりと自分を見つめているのだろう。だからああ言う発言になったんだ。


 部屋に帰るというウイリアムと別れてジョージはホテルを出ると”アドリア”に顔を出した。明日は街の外に出るつもりはない。休む時はしっかりと休むのも大事だ。


 店には2人の迷い人が客としていた。2人ともレストランで見ない顔だ。別のホテルに滞在しているのだろう。ジョージは彼らと離れてカウンターの端に座る。


 銅貨を3枚置くと酒が出てきた。


「久しぶりだな、ジョージ」


 マスターのホルバトが言った。


「1週間ほど山にこもってたんだよ、初めて行ったけどきつかったよ」


「傾斜だろう。今までの山とは違って急だ。踏ん張る事が多くなるから疲れやすくなる。早め早めの休憩がいいぞ」


「全くその通りだよ」


「明日は休養日か」


「そう。のんびりして体力を回復させるよ」


 その後はホルバトと雑談をして、1時間程でバーを後にして部屋に戻ってきた。ソロで動いているジョージにとっては人と話すことが気分転換にもなる。これで気持ちをリセットすることができそうだ。


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