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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第68話


 旅立ちの前日、市内で食料、水を買ったジョージは部屋に戻ってそれらを魔法袋の中に移してから再びホテルを出た。


「いよいよ明日出発だよね」


 アイテム屋に入ると奥から出てきたウマルがジョージを見て声をかけてくる。


「そうなんですよ、色々とお世話になりました」


「ジョージにはいろいろと買ってもらってお得意様だったんだけどね」


 ウマルが笑いながら言う。


「でも迷い人は大変だね。ゲートとかを探してあちこち探して動き回る」


「そうですね。でもそういうものだと思ってますから当人は大変だとは思ってないんですよ」


「なるほど。それで沢山買ってもらったジョージがこの街を出るにあたって僕から餞別を用意したんだ」


 ウマルはテーブルに置いてある小さな木箱を手にとるとそれをジョージに渡した。開けてもいいと言うので開けてみると中には腕輪が入っている。


「今ジョージが装備しているのは攻撃力+25の腕輪だろう?これは攻撃力+40の腕輪だ。これを差し上げるよ。武器で攻撃した際の与ダメージが+40になる」


 攻撃力+40の腕輪。+25でも実感できる程強くなったと思っていたが+40となるとまた一段と強くなる。これは強い魔獣を倒す時にものすごく役に立つ腕輪だ。


「いいんですか?高そうだけど」


「警戒の魔道具を買って貰ったからね。これはそれよりはずっと安いので大丈夫だよ。これがあると探検が少し楽になるんじゃないかな」


「少しどころろか大いに助かります」


 ウマルの店に数日前に1つだけ入荷したそうだ。どう言うルートで彼が仕入れているのかは知らないし、おそらく聞いても教えてはくれないだろう。迷い人と住民の間には見えない壁がある。


 ただジョージは彼がどう言う伝手で手に入れたかについては興味がない。彼が興味があるのは実物だ。


「攻撃力+25の腕輪はどうする?こちらで買い取ってもいいけど」


「いや、一応このまま持っておこうと思います」


 ジョージが言うとわかったと言うウマル。


「南の山裾の街へは遠い。道中気をつけてね」


「ありがとうございます。安全第一で移動します」


 ジョージの言葉に大きく頷いているウマル。

 彼はもう一度ウマルにお礼を言って店を出た。


 ホテルに戻るとドアの下から室内にメッセージが投げ込まれていた。 


ー 一緒に食事をしないか。ジュン。


 部屋に入ったジョージはすぐに部屋を出ると1階のフロントでオーナーのジュンと夕飯の約束がある。そう言うと話が通っていた様でホテルのレストランとは別の場所に案内された。


 廊下を歩いて部屋に入るとそこは貴賓室の様な部屋で中央にテーブルと椅子が用意されている。ジョージが部屋の中で立っていると彼が入ってきたドアが開いてオーナーのジュンが入ってきた。


「待たせたかな?」


「いや。自分も少し前に来たところ」


 勧められるままにテーブルに向かい合って座る。テーブルにはナイフとフォークが置かれていた。すぐに給仕がグラスに入ったビールを2つ持ってきた。


「料理はこっちで決めさせてもらった」


「問題ないですよ。このホテルは何を食べても美味いから」


 グラスを持ち上げて乾杯をする。


「準備は整ったのかな?」


「一応。そして今日、強力なアイテムをゲットできましたよ」


「強力なアイテム?」


 ジョージはついさっきアイテム屋のウマルから攻撃力+40の腕輪を手に入れた話をする。


「これまで持っていたのは攻撃力+25の腕輪。それが+40を手にいれることができた。長い道中で役に立つ装備であることは間違いないと思ってるんだ」


「なるほど、それは確かに強力なアイテムだ。それしてもよくアイテム屋のウマルと良い関係を築けたな」


「最初にこの街に来た時に知り合いが言っていたんだよ。この街のアイテム屋には大した物が売っていないってな。でも俺は南の街のアイテム屋のハロルドから攻撃力+25の腕輪を買った。彼はアイテム屋をやりつつ当人が彫金師でもあったけどね。俺はアイテム屋には時折掘り出しものがある。そう思っている。上の台地で聞いていたけど、山裾の街のアイテム屋にはごく稀に魔法袋が売り物として出るらしいって。つまりアイテム屋にマメに顔を出すことで掘り出し物が手に入るかもしれない。そう思って通ったんだよ。そうしている内にウマルと仲良くなった」


 迷い人で地元民と積極的に交流をする者は多くいない。逆もしかりだ。地元民は余所者である迷い人とは最低限の接触しかしてこない。


 ジュン当人もこの地でホテルを始めるにあたっては、まずホテルを買い取る前から地元民と時間をかけて関係を築き上げてきた。しっかり時間をかけ、何度も話をして信頼を得て手に入れたホテルを改装して今のホテルに仕上げた。当然従業員も地元民を採用している。当時すでに迷い人を辞めていた彼、そしてケンゾーの2人はこの街で暮らすと決めていたこともあり、腰を据えて地元民と話を進めることができた。


 現役の迷い人は基本短期駐留者だ。良い装備、アイテムを手に入れるとすぐに次の街に移動する。地元民と人間関係を築き上げる時間がない。ジュンはそう思っていたが、目の前に座っている日本人は違った。台地の上でも薬屋の女主人と人間関係を築き上げて木彫りの女神像をもらっている。南の街でも攻撃力の腕輪以外にフクロウの指輪を手に入れ、そしてこの街でも腕輪と警戒の魔道具を手に入れている。


 ほとんどの迷い人、自分もそうだったが、現役の時は日々動いていないと落ち着かない。外に出てあちこち動き回ってゲートを探す。街に住んではいるがあくまで仮の宿だ。街の中にある地元民がやっている店に顔を出して薬を買うが、それも自分が必要となる薬品がそこで売っているから顔を出すだけで、それ以上の関係を持とうとは思わない。


 ただ、目の前に座っている若い日本人は違う。聞くと最初の台地でソロで時間をかけて戦闘技術を磨きながらあちこちの地元民とも普通に付き合っている。その結果特別なアイテムを手にいれることができている。


 ”急がば回れ”という言葉が日本にはある。まさにその言葉を地でいっている男だ。



 料理が運ばれてきた。ジョージが聞くとレストランのメニューの中で一番高い料理だという。


「これは食べたことがないな」


「値段が高いからな。オーダーも滅多に入らない。今日はホテルの奢りだよ。遠慮なく食べてくれ」


「それはありがたい。遠慮なく頂きます」


 食事をしながら山裾の街について話をするジュン。


「私とケンゾーは山裾の街の周辺、山も含めてだ。そこはかなり詳しく探索したという自負がある。その結果ゲートは見つからなかった。もちろんだからと言ってジョージにそこを探しても無駄だというつもりはない」


 信用できるのは自分だけだ。ただジョージは目の前のジュンとケンゾーについては信用している。同じ日本人というのもあるし、普段の彼らの応対を見ていればわかる。


「そうなると、砂漠の街が怪しいことになるな」


「山裾の街とその周辺については私たち2人が調べて無いと言ったからか?」


「その通り。オーナーのジュンとケンゾーが詳しく探索したと言っているから。自分の中では2人は信用するに値する人間ですよ」


 ちょっと驚いた表情になったジュン。


「信用か。久しぶりにその言葉を聞いた気がするよ」


「もちろん。それはお二人が日本人だからという事だけじゃない。この街まで来られる時点で皆実力者だ。それに自分自身も多くの迷い人や元迷い人と話をしてきている。自分なりに人を見る基準ができている。2人は信用できるよ。違っていたら自分が人を見る目がなかっただけだ」


 人の話を100%信用せずに、この広大な世界を全て自分で探してやろうなんて事はとてもじゃないが出来ない。周りの話を聞いて取捨選択する必要がある。ただしそれは信頼できる情報の中から取捨選択をするという前提条件がつく。相手が信頼に値する人物かどうか、これは自分自身で判断するしかない。


「なるほど。では信用してもらったお礼に私とケンゾーからの餞別を受け取ってくれるかな」


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