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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第51話

 攻撃力+25の腕輪を手に入れたことで草原や森の中での討伐が楽になった。数日間の鍛錬で新しい装備とその威力を完全に自分のものにしたと感じたジョージは街の中で買い出しをする。日持ちする食料や水を魔法袋に入れ、薬品も買った。


 森を抜けるのに1週間から10日と言われているが、彼は森の中で安全に野営できる大木を見つければ日が暮れる前でもそこを野営場所にするつもりでいるので2週間ほどかかる前提で準備を進める。時間をかけても安全を重視する。


 森を抜けると崖を降りてから1週間で次の街だという情報を集めていたので今回の移動は3週間程度になる。南の街にやってきた時よりも移動時間は短いが、命の危険のリスクは今回の移動の方がずっと高い。彼は準備をしながら街の周辺で身体を動かしていた。


 この日ジョージは1人で”ハナミズキ”に顔を出していた。その時店には誰もおらず、カウンターの中でユウキが手持ち無沙汰にしていた。


「4、5日後この街を出て南を目指すよ」


 ビールを一口飲んだジョージが言う。


「いよいよか」


「この森を抜けて次の街に行ったところからがゲート探しの本番だと思っているんでね。ここまでは準備期間、鍛錬の場という認識だよ」


「そしてその鍛錬に満足したということだな」


 ユウキはジョージの言葉を聞きながらその通りだと思っている。自分はこの街でギブアップしている。迷い人としては中途半端だったが、店を初めてから様々な迷い人をこの目で見てきて、人を見る目が肥えたという自負はある。


 そのユウキの目から見ても目の前に座っている若い男は異質だ。ただこいつならゲートを見つけそうだという雰囲気を持っている。こんな感覚は今まで多くの迷い人を見てきているが感じたことがない。


 大抵の迷い人は南の街に来たことで半分以上満足している。西や東の街では南に行けて一人前と言われていることもあり、これで自分も一人前だと錯覚してしまうのだ。迷い人の一人前とはゲートを見つけて言われる言葉であり、ゲートを見つけられないのであれば皆半人前だ。そんな勘違いしている迷い人は大抵がチームで活動している。1人1人の実力は大したことがない。もちろん南に来る程度には強いが所詮その程度だ。とてもじゃないがここからさらに南に行ける技量はない。自分もそうだったから分かる。自分程度の実力ではこの南の街がせいぜいだと。


「ここから南に行けば行くほど迷い人の数が減る。治安も良くなる。ただし外にいる魔獣の中に強いのが出てくる。そう聞いている」


 ユウキの言葉に頷くジョージ。


「この街でゲート探しを諦めた俺が言うのも何だが、気をつけてな。そしてゲートを見つけてくれ」


「ありがとう。頑張るよ」



 南の街を出る3日前にジョージはレイモンドとギャツビーに誘われてレストランで夕食を摂ったあとで”ハリウッド”に顔を出した。たまたま客はいなかったこともあり、3人を見るとアンが看板を消してCLOSEDにした。


「いいのか?」


「1日くらい平気よ。ギャツビーから聞いているけどさ、ジョージ、そろそろ行くんでしょ?」


 店の外の電気を消してカウンターに戻ってきたアンが言った。


「そう。3日後の朝に出発する。明日と明後日は禁酒だ」


「じゃあ今日は送別会ね」


「店の奢りじゃないんだよな」


「当然でしょ」


 アンとレイモンドのやり取りに皆が笑った。

 ひとしきり笑い終えるとレイモンドがジョージに顔を向けた。


「準備はできているのか?」


「戦闘関連は自分が納得できるまでやった。あとは出発の前日に水や食料品を少し買い込んだら終わりかな」


「あれから黒豹にあったか?」


 ギャツビーが聞いてきた。ジョージは首を左右に振る。ギャツビーもレイモンドも南の森の中で野営の訓練をしているが彼らはまだ黒豹に出会ってはいない。移動は2人でチームを組んでやることになっているので1人が寝て、1人が見張りというスタイルだ。


「それにしても夜の森は本当に真っ暗で静寂の世界だな」


「その通り。そんな中音もなく黒豹が近づいてくる」


「夜中でも魔獣はいるんでしょ?虎とか」


 レイモンドとジョージが話をしているとドリスが聞いてきた。


「いる。ただし昼間ほど多くない」

 

 レイモンドが答える。確かに夜になると虎やサイの魔獣はいるが数は昼間よりも少なく感じる。活動が鈍くなるのかもしれないが詳しい理由は分からない。ただ少ないながらも徘徊している魔獣がいるということだ。黒豹を恐れて地面で野営をすると虎やサイの魔獣に襲われる可能性が高い。


「ジョージ、鍛錬と違って毎夜起きている訳にはいかないぞ」


 レイモンドが言った。


「わかってる。なので出来るだけ安全な木を見つけて夜を過ごすつもりだ。その結果森を抜けるのに時間が掛かっても構わないと腹を括っている」


「その通りだ。夜の安全地帯を見つけながら移動するのが森を抜ける時に最も重要になるのは間違いないな」


 ギャツビーが言った。ここにいる3人は運だけで森を抜けようとはしていない。可能な限りリスクを避けることを考えて行動する。運は最後の最後についてくるものだと信じている。


「何日で森を抜ける予定なの?」


「一応2週間見ている。全行程だと3から4週間くらいだろう」


「荷物が多くなるわね」


 ドリスが心配そうな声を出している。ジョージは魔法袋を持っているがそれは口にできない。


「西の街から東の街、そして東の街からこの街まで移動してきた。移動中は食事は1日1回にしている。食い過ぎると動きが悪くなるし、夜は眠くなる。水は重いので最低限にしている。聞いていると南の森の中には川が流れているらしい。最後は川の水を飲むつもりだよ。あとは果実を食うつもりだ。なので荷物は限界まで減らしている」


「ソロだからそうなるわな」


 ジョージの話を聞いていたギャツビーが頷いている。


「森の先の情報はどこまで集めた?」


「南の森の中の南側に行くと川が流れている。その川が最後は滝になって南の台地の端から落ちていると聞いている。台地を降りるスロープは1つしかないが、川の滝の近くに大きな岩が川の中にあるのでその石を伝って対岸に行けるので問題ない。台地を降りると川沿いに森と草原を1週間程歩くと次の街だと聞いている」


 ジョージが一気に言った。彼の話を黙って聞いていたレイモンドとギャツビー。


「それで合ってる。俺たちが知ってるのはその新しい街、川の街というらしいが、そこでは新しい防具、武器を売ってる店がある。あとは元迷い人が経営している宿がある。そこが安全らしいぞ」


 以前聞いていた元迷い人がやっているホテルがあると聞いていたが次の街にあったんだな。カウンターの中にいる2人もその話は聞いたことがあると言っている。


「なるほど」


「あと街の規模はここより小さい。当然迷い人の数も少ない。少ないが皆腕がいい」


「そりゃそうだろう。森を抜けている連中ばかりだ。腕が立たないと無理だろうからな」


「じゃあ俺がその新しい街、川の街だっけ?そこに着いたら元迷い人がやっている宿に部屋を取るから後から来たらそこで俺を探してくれ」


 ジョージの言葉に分かったという2人。


「ちなみにそのホテルの名前は”リバーサイドホテル”だ。名前の通り川沿いにあるそうだぞ」


「ありがとう。参考になったよ」


 次の街が本当のスタートだ、ジョージは次の街、滝の下のエリアは腰を落ち着けてあちこちを探すつもりでいる。


「川の街に迷い人はどれくらいいるんだろう?」


「8千人いるかいないか。それくらいか?」


「もっと少ないんじゃないか。さらに南に行っている奴らもいるだろうしな」


 ジョージの問いにレイモンドとギャツビーがお互いの思いを言っているがいずれにしてもグッと減るのは間違いないだろう。仮に5千人がいると言っても外で野営をして探索をしている迷い人もいるからその半分以下が常時街にいる人数というイメージで良さそうだ。


「ジョージはその川の街でゲートを探して見つからなかったらもっと南に行くつもりなの?


 アンが聞いてきた。


「俺が北の台地の上で行っていた酒場のマスターはその先の砂漠に面した街まで行ったという話だ。まだよく知らない土地だけど、次の街の周辺でゲートが見つからなかったらさらに南に進むだろうな」


「ゲートを探せ、か。全く女神の代理も変わった使命を出したもんだぜ」


 ギャツビーが呟いた。その変わった使命を背負った多くの迷い人達がこの世界を走り回ってもう何十年もゲートを探している。


「ゲートを探したら長寿を授かり、特殊な能力を授かって、成功者になる。だったか。女神に振り回されている気もするが、ここまできたら諦めることはできない。意地でも見つけてやる」


 レイモンドが言っている。ジョージも同じ気持ちだった。ギブアップはいつでもできる。でもそれは今じゃない。


 3人は2時間ちょっと”ハリウッド”で話をしながら酒を飲んだ。

 レイモンドとジョージは椅子から立ち上がった。ギャツビーは座っている。


「俺は明日は休養日なんだよ。ジョージ、向こうで会おう」


「うん。待ってるよ」


「気をつけてね」「もしまたこの街に来たら顔を出してね」


 アンとドリスが言った。


「ありがとう。短い時間だけど世話になった」


 ジョージとレイモンドは店を出るとホテルに続く道を並んで歩く。


「俺たちも数ヶ月以内にはこの街を出る予定だ」


「お互いにやる事はやった。後は運が味方してくれるのを祈ろうか」


 ジョージが言うと全くだとレイモンドが言った。ホテルのロビーで2人は握手をする。


「じゃあまた後ほど」


「おう、すぐに行く」


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